13)クロトの強さの秘密(後編)
「いいぞ」
「ですよね! そんな人様の事情を興味本位で、、、って、いいのですか?」
「ああ、別に隠すような話じゃないからな、、、あ、でも逆にアメリアたちが嫌がるかもしれん」
「そんなことあり得ません!」
おお、アメリア。食い気味に来たな。
「私も興味があるな。嫌がると言われても、大抵のことでは気にしないが、嫌がる理由があるとしたら、罪を犯して逃げているとかか? それでも犯罪の内容によるな」
シーラも乗ってくる。
「亜人の話でもか?」
あまり差別的でない表現では亜人、もしくはミックスなど、差別全開で言えば雑種、劣等種、まがい物などとも呼ばれる種だ。
ミックスの文字通り、魔族と人、獣人と人、あるいは魔族と獣人のカップルから生まれた子供を指す。
この世界では割合近年まで各種族が争い合っていた歴史があり、他種族への忌避感が強い民が多い。
必然的に亜人はほとんどの村や街で当然のように排除の対象として、激しいバッシングを受ける。
住民から除け者にされるくらいならまだマシ。家を燃やされ、住処を追われるものも少なくない。
「亜人、、、、ですか?」
「ああ、俺は亜人だ。がっかりしたか?」
2人の反応を窺う。
「いえ、私は特に。年配の方には拒否感が強い方もいらっしゃいますが、ここしばらくの平和もあり、若い子たちにはそれほど差別意識がないと思いますよ」とはアメリア。
「そうだな。それに私は以前遠征などで傭兵をしている亜人達とも何度か顔を合わせたことがあるからな。同じく特になんとも思わん」
シーラも平然と言う。
「それなら良かった。特に王国だと獣人はともかく魔族の血が入っていると、途端に無理という人間もいるらしいから。いずれ出身を聞かれて、王城に亜人が居るのがまずかったら出ていこうとも思ったくらいだ」
「クロトさんは魔族との亜人なのですか?」
「正確には魔族の血も入っている、だな。魔族のじいちゃんと人間のばあちゃんの子が俺の父親で、人間のじいちゃんと獣人のばあちゃんの子が俺の母親だ。血でいえば人間2、魔族1、獣人1だな。だからか、見た目はほぼ人なんだよな」
「では、クロトさんもいわれのない差別を。。。」
途端にアメリアが悲しげな表情になる。いい娘だな、こいつ。
「いや? 俺は差別を受けたことないな。亜人の村の出身だから。周りは皆亜人か、種族違いのカップルだからな」
「亜人の村? 先も言ったが、私は傭兵の亜人と話したことがあるが、そんな話は聞いたことがないな」
シーラが当時の記憶を思い起こすように眉根を寄せる。
「亜人が全員、亜人の村にいるわけじゃあないからな、ごく一部だがどの種族の領地にも、亜人に理解を示す村なんかもある。でも、家を失って流れ着いた亜人とその両親が寄り集まってできた集落はいくつもあるぞ。あとは基本的には亜人の村のことは話さない。下手に話して、悪意のある奴が集落に来ても困るからな。地図には存在しない村ってわけだ。だから2人もここだけの話として聞いてほしい」
「もちろんです! 絶対言いません! ね、シーラ」
「ええ、当然です。しかし亜人であることがクロトの強さの秘密なのか。亜人の傭兵は特殊な能力を持っている者もいたが、人と比べてもそこまで極端に差があるようなことはなかったが。。。正直、君以外の今まで会った亜人と私が対戦すれば、ほぼ私が勝つぞ」
シーラの経験のおかげで、細かい説明しなくて助かるな。
「それが旅に出なきゃいけなかった理由なんだ」
「どういうことですか?」
「人も魔人も獣人も、いいところもあれば悪いところもある。例えば魔族のヴァンパイアなら、高い身体能力を持つ反面、太陽光に弱いとかな」
「はい」
「亜人の場合は、いい特性、悪い特性、どっちが出るか分からないんだ。さっきの例でいえば悪いほうが出ると、太陽光に弱くて体力は人並み、みたいな」
「もしかすると、先人が他種族との婚姻を良しとしなかったのは、そういうケースがあるからかもしれないな」
そうか、シーラに言われてみて初めて気がついた。
「で、俺だが。両親やじいちゃん達曰く、各種族の良い目ばかりが出たと」
「なるほど、まさに先ほどの例えでいえば、太陽光も平気で身体能力も高く、獣人のブースト能力も使えるようなものか。もしかすると亜人によっては、人族しか使えない法術も使えたりするのか?」
おお、シーラの理解が早い。実際ブースト能力使えるしね。
「使える奴はいたな。俺は法術はちゃんと習ったことがないから、今は使えないけど。ばあちゃんが素養はあるとは言っていたが」
「その身体能力で、法術も使いこなせるようになったら、末恐ろしいな」
「それで、クロトさんが強いことがなぜ、旅立つ理由に?」
シーラとのやりとりの間、何か考え事をしているようだったアメリアが急かす。もしかして、眠い? この話、巻いたほうがいいですか?
「俺は亜人の村しか知らない。一応いろいろな地方から亜人の村に集まってきた人がいるから、それぞれの国の話や書物を読んだことはある。でも、この力を何も知らないまま使うのはまずい、と特に魔族のじいちゃんが心配したんだ」
もしも俺が、何も知らずに誰かに騙されてどこかの勢力に加担したら、それだけでも大きな戦力増強になる。
その力を知ったら、各勢力の奪い合いになるかもしれない。もしかすると亜人の村にも火の粉が降りかかる可能性もある。
それに、自分の孫が各国の思惑に翻弄されるかもしれない。そう、じいちゃんは危惧した。
「それで、各国を回って見聞を広めてこいって送り出されたんだ。そんで、まずは魔族のじいちゃんのいた魔族領に行ってみようかと、西へ」
「その道中で、私たちが襲われたところに遭遇した、と」
「はあ~、、、人、魔族、獣人のいいとこ取りとは、、、アラクネにも勝てるはずだ。納得した。今になって、つくづく君と敵対関係になるような出会いじゃなくてよかったと思うよ。アメリア様、我々の運の良さは想像を超えていたようです」
額に手を当てながら、深くため息をつくシーラ。
「では、我が国を出たら魔族領へ? そのあとは獣人諸島連合や、ほかの王国へも?」
シーラが水を向けたが、それには答えず、俺をまっすぐに見つめるアメリア。
「そうなるな。なんとなくの目標だったから、別にこのまま東の、、マルメだっけか、そっちに向かってもいい。特に決めてないよ。でも、今回の騒動の渦中にあったキロル鉱山も見てみたいから、やっぱり最初は西かな」
じっと俺を見つめるアメリア。何? もしかして夕食の食べかすとかついてる?
ふいに、アメリアは何か心に決めたと言うような強い目で「決めました」と言った。
「ずっと、クロトさんの恩にどうやって報おうかと思っていたのですが、各地に向かうのであれば、『通行証』のようなものはいかがでしょうか。ほかの連合王国や、貿易でやりとりがある獣人諸島連合はもちろんですが、小康状態を保っている魔族領にも入りやすくなるはずです。もちろん、旅費も」
そんなお礼を考えてくれていたのか。ありがたいな。
「それは助かるよ。贅沢を言うなら旅費はどの国でも換金しやすい宝石の類だと助かる。あ、もちろん正当な報酬額でいいぞ。相場がわからんが、1月分の宿代くらいにはなるか?」
と言う俺に「一国を救った報酬が、宿代1ヶ月分程度のわけないじゃないですか。。。」
と、2人は苦笑するのだった。
やっと主人公の自己紹介。




