1)旅人は王の依頼を断る
初めての投稿となります。宜しくお願い致します。
拙い文章で誤植等もあるとは思いますが、寛大にご覧いただけると幸甚です。
11話くらいまでは短め。プロローグ的な物としてお楽しみください。
誤字報告ありがとうございます
助かります(*´∀`*)
ロッセン王国の王都、バルデ。
王宮、謁見の間の王の御前にはこれといった特徴のない旅人が飄々と立っていた。
居並ぶ近衛騎士のするどい視線も意に介さず、王に跪くでもなく、王を見つめている。
そんな相手に少々ムスッとした表情で王は口を開く。
「エドラック=クロト、お主に我がロッセン王国公認の【勇者】の称号を与える!魔王を討ち果たせば、褒賞は望みのままである!さぁ、魔王討伐に旅立つのだ!まずは装備を整え、西の砦へ向かうが良い!」
芝居がかった物言いの王を、妙なものでも見るように眺めた旅人は、一言
「断る」
と、あっさり拒否。
旅人の言葉を聞いた、謁見の間は静寂に包み込まれた。誰も彼もぽかんとしている。
呆気に取られていた王が再び問わんと口を開く。
「ん、んっふん。聞き間違いかの。王であるこのワシの命をことわ…」
「断る。と言ったが聞こえなかったか?」
「なぜじゃ? 魔王を倒せばそちは英雄。その実力もある。先も申した通り、褒賞は望みのまま。子々孫々まで富と名声を手にできようぞ」
「それで?」
「おい! 王の御前であるぞ!なんだその態度は!」
俺の反応を見て王の横に並んでいた騎士の中から、ガタイの良い黒い鎧の男が詰め寄ってきた。
ええと、確か王国直属近衛兵騎士団の、、、
「コロンコロン、、、だっけ?」
「ガロンガロンだ!貴様、舐めているのか」
顔を真っ赤にしたコロンコロン、じゃなかったガロンガロンは俺の胸ぐらを掴む。
「なんの真似だ?」
「ふん、たまたま姫の危機を救っただけのヤツがちやほやされて勘違いしたか?貴様程度の戦士は掃いて捨てるほどいるのだ。今回は特別に、王の寛大なお心で勇者認定してやると言っているのだ、大人しく頭を垂れて喜び勇んで魔王討伐に向かえ。そして我々のためにせめて雑魚2~3匹は巻き添えにしてくれよ」
抵抗しない俺に、ガロンガロンは醜悪な笑い顔でのたまいながら、徐々に掴んだ左手の力を込めていく。
が、その笑い顔が次第に歪み、苦痛の表情に変わる。
俺が掴んでいる左手首を握り返し、力を込め始めたからだ。
「貴様、、、」
「はなさないと折るぞ? いいのか?」
「調子にのるなっ! があぁっ!?」
ガロンガロンが力を込めたと同時に、ヤツの左手首を握りつぶした。
おかしな方向にプラン、とする左手。うわぁ、痛そう。
「貴様ぁ、殺す!」
ガロンガロンの右こぶしをあっさりとかわすクロトに、激昂し剣に手を掛けたガロンガロンだったが、刹那、クロトの蹴りが腹をめがけて突き刺さる!
「がっ?うぼぁっ?!」
この場にいる騎士の中でも巨体であるはずのガロンガロンの身体が、いとも簡単に宙を舞う。
そのまま凄まじい音と共に、王宮の大理石にめり込むガロンガロン。
殺すと言っていいのは殺される覚悟があるものだけだぞ、コロンコロン君。
「すまん。剣を抜きそうだったから、思わず蹴った。まぁでもあれだぞ、いきなり剣に手をかけたコロンコロン君が悪いからな」
一瞬何が起きたか分からなかった近衛騎士達も、わずかな時間をおいてガシャンという音と共に床に叩きつけられたガロンガロンを見て、一斉に殺気立つ。
しかし王が手を伸ばすと、その場から動くことはなく剣を抜くこともない。
「エドラック=クロトよ、今のは我が近衛兵にも落ち度はあったので不問に致すが、これから答える内容によっては不敬罪となる。今は自制しているこれらの近衛兵が黙っていないことを踏まえて聞け。なぜ、断る?」
「理由を話したら帰っていいか?」
「内容による」
あーヤダヤダ、この圧倒的な武力を背景にした感じの空気。
「先に言っとくが、気に入らない答えでも兵士達はそのままにしておいたほうがいいと思うぞ?お互い無駄な怪我はしたくないだろ」
「御託は良い。話せ」
「そんじゃ話すけど、絶対に兵士動かすなよ?」
正直な俺は、正直に王に伝える。
「だってあんたが、侵略者だろ?」