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ハズれギフトの追放冒険者、ワケありハーレムと荷物を運んで国を取る!  作者: 寝る犬
第一章:大迷宮の探索 -第五層ガーディアン-
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第13話「魔女の指抜き」

 太陽の光も届かない第五層の最奥さいおうに、一面ジギタリスの花が咲いていた。

 陰鬱な紫の花を蹴散らし、左右に細く束ねられた亜麻色あまいろの髪をたなびかせ、アミノは自分の身長の二倍はあろうパイルバンカーをぐるりと振り回す。

 その視線の先では六本足の巨大な獣が、赤いたてがみを逆立て、咆哮していた。


「よっ!」


 突然、獣の足元に、乱雑に切りそろえられた金髪の少女が姿を表す。異能ギフトにより姿を消していたロウリーは、鋼鉄の槍を次々と獣に突き立て、すぐに離脱した。

 さらなる咆哮。迷宮内の空気が震える。

 ロウリーを追いかけようとした獣の進路に、アミノが体を滑り込ませ、パイルバンカーを突き出した。

 その馬上槍ランスのような武器に込められた遺品アーティファクトの魔力を感じ取り、獣は急制動をかける。

 ロウリーの突き刺した槍の傷口から、血が吹き出した。

 追撃のパイルバンカー。

 弧を描いて襲いかかる鋼鉄の塊を、獣は飛び退すさってかわし、距離を取る。

 パイルバンカーは床を付き刺し、岩とジギタリスを宙に舞わせた。


「兄ちゃん次っ!」


「おう! 頼む」


「任せとけって!」


 ロウリーに促され、リュックの中から鋼鉄の槍をまた十本ほど取り出す。受け取るが早いか、ロウリーの姿は煙のように姿を消した。

 その姿を見送った俺は、リュックからクロスボウを取り出し、及ばずながらも獣へ向けて連続で射る。

 獣のたてがみに何本か突き刺さったが、獣はぶるんと身震いし、なんでもなかったかのように矢を振り落とした。

 俺の攻撃が効かないことは織り込み済みだ。それでも、矢をつがえ直す間を惜しんで、次のクロスボウをリュックから取り出して射る。

 うるさそうに首を振った獣の視線が俺に向いた。

 恐怖だった。見据えられただけで全身に震えが走る。一番離れた場所にいる俺でもこうなんだ、お互いの武器が届く範囲で対峙しているアミノや、相手の懐に飛び込んでゆくロウリーはどんな思いなのだろうか。思わず叫びだしたくなるのを精一杯の自制心でこらえ、俺は次のクロスボウを取り出してまた矢を射た。


「そらよっと!」


 また獣の足元から声が上がり、鋼鉄の槍が突き刺さる。

 咆哮とともに獣の足が振り上げられ、身をかわしたはずのロウリーの背中を鋭い爪がかすめた。


「うあっ!」


「「ロウリー!」」


 背中から血しぶきを舞わせ、ロウリーが床で跳ねる。

 アミノはパイルバンカーで獣に突きかかり、俺は何も考えずにただ、ロウリーのもとへと走った。

 パイルバンカーを飛び上がってかわし、獣はロウリーにとどめを刺そうと襲いかかる。

 ほんの僅かな差でロウリーの上に覆いかぶさった俺は、リュックへと手を突っ込み、指先に触れたものを片っ端から引き出した。

 鋼鉄の槍、ショートソード、鉱石類、鉄柵、棍棒、板金鎧フルプレート、馬車の車輪、毛布、くい、木槌、タワーシールド、湯気を上げるミートパイ、治癒薬ポーション、ロープ、蹄鉄ていてつ、地図。

 雑多な品物が、俺とロウリーの周囲に勢いよく飛び出し、壁を作る。ロウリーを潰そうとした獣の前足を、床との間につっかえ棒のように挟まったものたちが、大きくきしみながらも受け止めた。


「【運び屋】さん! ロウリーを!」


 言われるまでもない。ぐったりとしたロウリーを抱えて、転げるように逃げ出す。

 前足に突き刺さった槍や剣に、獣は棹立ちになって咆哮した。

 その背中へ、アミノのパイルバンカーが突き刺さる。硬い毛並みに弾かれそうになる武器を両手で抑え込み、アミノはさらなるギフトを発動させた。


射出インジェクション!!」


 髪と同じ、亜麻色あまいろの瞳が青白く発光し、パイルバンカーの表面に稲妻いなずまが走る。

 次の瞬間、パイルバンカーの機構部分から重低音が響き、先端が一メートル以上も打ち出された。


 ガシャン、ドスンと言う異様な音に、ロウリーを抱えた俺は振り返る。

 淡いカンテラの光の中、パイルバンカーは獣の心臓を貫き、闇の中でアミノの瞳だけが輝いていた。

 棹立ちのまま、獣の巨体がぐらりと揺らぐ。貫かれた心臓から、どす黒い血が間欠泉のように吹き上がり、パイルバンカーの機構部分からは圧力の上がった蒸気が一気に排出された。

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