お嬢様が冒険者なのは仕方がない8
だってクラウスは作戦の為なら鬼にもなるやつなんだから。
チームを組んでいて助からないと分かれば見捨てる位には。
まぁ、私がバレないようにこっそり回復させていたから何とか後から合流したけど。
クラウスは戦闘において残酷な判断が出来るのだ。
だから今回も私は自身の考えている事を悟られないようにとぼけて見せる。
「嘘……とは?」
勿論肉を切る手は緩めない。
だって、早く肉食べたいもの。
朝の分も。
「嘘とは少々語弊があるかな?貴女から立ち上る魔力が桁外れで、とても強そうだと言う意味だ。逆に魔力が強いと弊害も生まれるから、それで体が弱い事もある」
そうだね。
確かに王族方は魔力が強い。
故に弊害が起きているとも聞くし。
「貴女からは光の魔力を感じる。もしや回復魔法が使えるのでは?」
こいつ。
魔力の種類も分かるのかよ。
重い沈黙が私達の間の空間を流れた。
ヤバイ。
これって肯定しているよね。
何も気にしていない風を装い手元にある最後の肉を頬張りながらクラウスを再度見れば、ヤバイ笑顔で此方を見ていた。
「これからお話する事は口外無用でお願いしたい」
ニコリとクラウスは言うけど、絶対逆らえないやつだよね。
「勿論ですわ」
取り敢えず同意して手近にあったパンを頬張る。
うん。
美味しい。
そんな私の様子にクラウスも手元の肉を食べる。
アイツも話ながら食事を進めていたらしい。
「今回の召集を貴女はどうお父上から聞いているのですか?」
?
私がクラウスの質問に答えるのではなく質問して来るのかよ。
そう思いつつ当たり障りなく答える。
「未婚の王族男性との集団見合いと聞いておりますわ」
「条件は聞いていますか?」
「はい。王族の血脈でない良家の令嬢と……」
まぁ、この際人質でも何でも良いけどさぁ。
「何故王族の血脈でない家からだと思う?」
なんで?
そりゃあ、色々な趣旨はあるだろうけど。
私はコテリと頭を傾げて
「分かりませんわ」
と言ってみた。
自分でやっていて大分あざといと思うけどね。
そんな私をクラウスはスルーする。
やっぱり宮廷で慣らした方には可愛ぶりっ子は効かないらしい。
「高い魔力を維持する為に、王家は近親婚を繰り返して来た。そして、それをする事で産まれた弊害」
何か思うところがあるようにクラウスは重い目を閉じた。
「近親婚による新高徳機能の著しい遜色、器と魔力が暴走して仮死状態になる『眠りの病』の発症これは何故か成人した女性に多い」
そして、一口肉を口に放り込むとクラウスは私の方を見た。
「身体機能の方はある程度魔力や魔術で補えるから表沙汰にはなっていない」
何となくヤバめの話にクラウスの気配を観察する。
特に何かして来る気配はない。
「しかし、眠りの病の方は改善策がなく回復魔法を駆使して現状維持をしているだけ」
そう言うと肉を食べ終わったクラウスはパンをとり近くにあったバターを塗る。
あっ、それ美味しそう。
私もクラウスに習うようにパンにバターを塗った。
パクりと食べれば濃厚なバターの味と芳醇なパンの薫りがマッチングする。
「美味しい」
バター滅茶苦茶良いの使っているよね。
バターだけでも食べちゃいたい位だよ。
モグモグとパンを食べながらスープを飲み込む。
やっ。
何このスープ。
具材が入っていないのに野菜の出汁が濃厚だし、それに絶妙の塩加減。
やっぱり王族は良いコックを雇っているな。
そう思いムシャムシャとパンとスープを交互に食べる。
肉も美味しかったけど、これはそれ以上だ。
もうパンとスープだけでも生きて行けそう。
目の前のパンとスープが無くなるまで一心不乱に食べていた私は、食べ終わり前を向いた瞬間目を見開いて此方を見ているクラウスと思いっきり目があってしまった。
しまった……。
スープがあまりにも美味しかったから皿から直接すすっていたよ。
タラリと冷や汗を流しニコリと笑って見せるが、クラウスは誤魔化せなかった。
何で私は食べ物に釣られちゃったんだろう?
思わず理性を無くした自身が憎い。
「フィリア嬢……君は……」
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