お嬢様が冒険者なのは仕方がない7
クラウスのエスコートで食堂まで行けば、既に侍女達が食器等を持ち待っていた。
「どうぞ此方へ」
そう言って席へ誘導される。
「フィリア嬢の侍女殿には別室に食事を用意している」
クラウスがそう言うとユリアナの元へ数人の侍女が歩み寄る。
これって、何か聞かれたくない事でもあるのかしら?
そう思い私はユリアナへアイコンタクトを送る。
『兎に角言う通りに』
ユリアナなしぶしぶと部屋を後にして行った。
席に着くとクラウスは侍女に命じて全ての食事を運ばせる。
「まずは食事をどうぞ。今朝は早かったからあまり食べていないんだ」
クラウスはそう言うとワイングラスを取る。
ってか、私に至ってはご飯すら食べていないんだけどさぁ。
「では、私達の出会いに」
クラウスは似非紳士スマイルで私に向かってグラスを掲げる。
あまりにものキザな台詞に私は一瞬ポカンとしてしまった。
『あのクラウスがキザな事を言っている』
ボケッとしていたらクラウスの眉間にしわが寄って来た。
しまった!!
私は慌ててグラスを持つと
「乾杯」
と軽くグラスを上げた。
コクリと一口ワインを飲むと無性に腹が減る。
取り敢えず、お嬢様らしくサラダから手をつける事にした。
サクサクとレタスにベーコンとカリカリニンニクのサラダを食べる。
何故昼間っからニンニク?と思う。
だって口が臭くなるよね。
淑女としてどうよ?と思うんだ。
二口三口と食べれば、そろそろ本題の鶏肉の照り焼き食べても良いよね。
思わず目がキラリんとなる。
鶏肉は柔らかくジューシーでカリカリに焼いた皮が更に美味しい。
流石王族。
良いコックを雇っているな!と感心してしまった。
パクパクと食べているとクラウスが話し掛けて来た。
そして気付く。
私達二人以外誰もいない事に。
食べるのに夢中で気付かなかったよ。
「フィリア嬢は病弱であまり社交をしていないと聞いていたが……」
穏やかに話し掛けていたクラウスの瞳が一瞬で細められた。
昼食をバクバク食べてしまったのが多分いけなかったのだ。
「嘘だろう?何故なら……」
そうだよな。
クラウスが紳士とか有り得ない。
だってこいつは……。
私はクラウスの次の言葉を固唾を飲んでひたすら待った。
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