お嬢様が冒険者なのは仕方がない5
外を見る。
完璧なガードで隙がない。
それに、クラウスが護衛と違う意味で疲れるわ~。
だって思わず何時もの口調が出そうになるし。
チラリと馬車の窓からクラウスを見れば何故か微笑まれてしまった。
「お嬢様。もしかしてクラウス様狙いですか?」
私付きの侍女が感心したように言って来る。
「別に」
ツンとそう言うと。
「まぁ、王太子様や第二王子様の方がお年は近いですが、クラウス様も許容範囲ですからね。それに、今回のお見合いはクラウス様の為にとの噂もありますし」
侍女の不穏な説明に思わず目を見張る。
「クラウスが何?」
「まぁお嬢様。クラウス様を呼び捨てにされては不敬と言うものですよ」
そう諫められてしまった。
「クラウス様は現国王陛下の弟君。つまり王弟殿下でありますから」
はぁ~?聞いてないよ。
つまり、私の見合い相手の一人って事?
でも、待てよ。
今の国王の弟?
何歳だよ。
「因みに……クラウスさ……ま……って何歳なの?」
どう見ても20代だよね。
「御歳31歳ですわ」
「えっ!!(見た目)若い」
思わず驚いてしまった。
いや……だってさ……せいぜい25歳位だと思っていたからさ。
「まぁ、王太子殿下が21歳ですからね。お嬢様がクラウス様が良いのであれば、もう私は王太子殿下推しは止めますわ」
王太子推しだったのかよ。
まぁ、年齢近いけどさ。
「でも、30過ぎてんのに何故まだ結婚しないの?」
「コホン。お嬢様。言葉使いが優雅ではないですよ」
「あぁ。ごめん……じゃなくって。ごめんあそばせ。オホホホホ……」
わざとらしく笑えばユリアナは顰めっ面になる。
「ごめん。ユリアナ」
素直に謝ればユリアナは「仕方ありませんわね」と言って許してくれた。
「クラウス様は、噂では領地の運営を侍従に任せて放蕩しているらしいのです。領地に戻る前は騎士団の隊長をされたりと、武芸の方に重きを置いておられたようです。まぁ、お顔がそれなりに整っておりますので、縁談話も多かったと聞いておりますが 、何かと難癖つけて断っていたらしいですわ」
「ふぅ~ん」
「まぁ、それはお嬢様の腕次第ですけど。私の記憶の限り、クラウス様がお姫様抱っこされたご令嬢はいませんから脈ありかと」
「えっ?脈?ないない」
思わず手を振ってしまった。
だってあのクラウスだよ。
冒険者として何度か組んだけど、どんな美女だろうと靡かなかったんだから。
それよりもだ。
私は現在進行形でお腹が空いていた。
「ねぇ、ユリアナ。何か食べたいからちょっとだけ脱出して良い?」
空腹は女の敵よ!とユリアナに直接談判する。
「駄目に決まっています。一食位抜きなさい」
ニコリと微笑むユリアナの額に何故か怒りマークが見えてしまった。
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