12. 運命の出会い×4
シドとの運命的な出会いの直後のことである。
数日後、学園の行事で王国騎士団が来ることになった。
門から学園へと続く通路を列をなして行進していく。
彼らの歩みは空気を震わすほど迫力がある。
騎士団の男たちの先頭を行く男がいた。
ひと際背の高い大柄な男は騎士団長であると一目でわかる。
騎士団長が近くまで来る。
逞しさを感じる精悍な顔立ち。
すれ違う一瞬、彼と目が合った。
まるで魔法がかかっているように、時間がゆっくりと流れた。
降り注ぐ花吹雪。彼の周りはキラキラと輝いていて眩しい。
この出会い、恋に落ちぬ女性がいるだろうか。
まるで絵本の中の騎士様が迎えにきたかのような錯覚を覚えた。
――違和感。
ドラマティックな思考を一旦停止。
だって、これではまるで繰り返しだ。
この感覚はまるでシドとの出会いと同じ。
そう思ったと同時に、目の前に表札が現れた。
あの人生を変える選択肢。
(1.目をそらす)
(2.団長なのに若いな)
(3.拍手する)
「えっ……」
非現実的な表札が浮かんでいる。おそらく自分にしか見えていないのだ。
あっけにとられぼんやりしていると、それは消えた。
選択せずとも消えることもあるのかと驚いた。
もしかしたら、この時選ぶタイミングを逃してしまったのかもしれない。
ずいぶんと先に行ってしまった騎士団長の背中を見つめながらそう思った。
ほどなくして、王子のシド、騎士団長と同様になぜか印象的な出会いが連続して訪れた。
詳細は割愛するが、簡単に説明すると好青年と出会いがあったのだ。運命的な出会い×4人
王太子・王国騎士団長・天才魔術師・カリスマ大神官。
こんなの、出来すぎた恋愛小説ではないか。
一体自分に何がおきているのだろう。彼らと喋ると選択肢の表札が浮かび上がる。
これはもう、怪奇現象といっても過言ではない。
しかも、選択肢の正誤も簡易すぎた。
例えばこんな風に――
「そこまで一緒に行きましょう」
(1.喜んで受ける)
(2.そんな気ではない)
(3.別の人を勧める)
良好な関係を望むならば(1.喜んで受ける)以外の選択肢はないのがお分かりいただけるだろうか。
そして正解を選ぶと、彼らとの関係が深まるのがはっきりわかる。
なぜ? 誰がこんなことを? なんのために? どうして私が?
来る日も来る日も、5人の青年とやたら接触する機会に恵まれ、あと一押しで恋人関係に踏み込めるまでになった。
誰か一人に決めなければいけない。
さすがに全員を手玉に取り恋を謳歌するのはまずいだろう。
いいや――それ以前に私は……。
セシリーは最初から疑問であった。
「これは誰が望んだことなのだろう」、と。