目が覚めてからのこと。
あけましておめでとうございます。
読むのと自分で書くのでは中々難しいものがありますねえ。
「ねえ、これからどうしたい?」
「え?」
驚くのも仕方がない。地震に巻き込まれて死んだと思っていたらなぜか目が覚め、いきなり見知らぬ子供にこれからどうしたいのかと聞かれたのだ。
「ぼっちゃまあああ!急にそんなこと言われても訳がわからないに決まってるじゃないですか!毎回毎回ちゃんと説明するようにと言っておりますのに!」
銀次が呆然としていると、ヒゲを蓄えた恰幅の良い男が目の前に現れ、子供に説教を始めた。
「あーもーうるさいなータールヤは。わかったから他の人を呼んできてよね。ずっと準備してきた計画がようやく始められるかもしれないんだから。」
「それは重々承知しております。だからこそ説明はちゃんとするんですよ?いいですね?では行ってまいります。」
「あーはいはい。いってらー。」
他の人?計画?さっきのおじさんはタールヤっていう名前?というかタールヤっていう人いきなり目の前にあらわれたよな?
目が覚めてからの流れに銀次はずっと置いてけぼりである。このままではだめだと思い、とりあえず目の前の子供に色々と聞くことにした。
「あの、すいません。ここってどこですか?あと俺あ、いや、自分は死んだんじゃないんですか?もしかして生きてるんですか?」
「ん?死んでるよ。それよりもわざわざこんな子供にも敬語だなんて銀次くんは律儀だねえ。あははー。」
もしかしたら、という希望をいきなり砕かれた上に自分の名前をなぜか知っている。そして、謎の部分で笑われた。疑問と戸惑いが解消するどころか増えてしまう。
「死んでるって…じゃ、じゃあなんでこうやってあなたと喋れるんですか!意味がわからない!というか君は誰だよ!」
「あ、若干敬語抜けたー。まあそりゃ焦るよねえ。目が覚めたらいきなりこうだもんね。うんうん。とりあえず、銀次くんは死んだよ。原因は君の住んでる地方を襲った地震だね。結構な被害が出てるみたい。ここまではいい?」
「え、あ、はい。大丈夫、です。さっきは怒鳴ってすいませんでした。」
このままはぐらかされて終わるのかと思っていたらちゃんと説明をしてくれるようだ。そして感情に任せて怒鳴ってしまったことを謝った。悪いと思えばすぐに謝れと秋沢家ではきちんとしつけられている。こんな状況でも身についたものはすんなりと出るものである。
「んー別にいいよ。やっぱり律儀だ。あはは。それで銀次くんが死んだのにどうして意識があるかというとー…」
「はい。」
銀次の中で最大の謎がやっと明らかになる。子供は何故か溜めを作る。期待と不安が混ざり合って心臓鼓動が早くなる。
「死んで別の存在に生まれ変わるはずのの銀次くんの魂を僕が保護して、今はまだ半分生きている状態のままにしているんです。えっへん。」
「は?」
魂を保護する?半分生きている状態?これは一体なんの冗談なのだろう。というかそもそも目の前の子供は誰なんだ。それすらも謎だ。そしてずっと胸を張ってドヤ顔のまま銀次の方を見ている。
「あの」
「ん?やっぱり僕ってすごいよね。うんうんわかるよ。大丈夫。僕はすごいってことだよね。ふふふー。」
「いや、そうじゃなくて、魂とかよくわからないです。冗談ですよね。あとそろそろあなたの名前聞きたいんですけど。」
よくわからないが、ものすごくうざい。だがそれよりも疑問の方が強い。そしてだんだん敬語で喋るのがめんどくさくなりつつある。
「えー無視かー残念。あ、僕の名前はフィリパークだよ。よろしくー。とりあえず魂とかは嘘じゃないんだよ。じゃあそこから話をしようか。」
「あ、自分は秋沢銀次です。魂とかまだちょっと意味がわからないですけど、フィリパークさんの話を聞いて自分なりに考えてみます。」
「おっけー。じゃあ説明するね。おほん、元々生物には魂っていうものがあるんだ。もちろん人間に限らずミミズだってオケラだってアメンボだってね。そして生物が死を迎えると、魂は別の生物に生まれ変わる。あ、ちなみに銀次くんの前世は江戸時代に農家で飼われてた牛だよ。」
「とりあえず魂のことはわかりました。あとミミズだってのくだりは突っ込まなくていいですよね。というか自分って前世牛だったんですか…」
「やなせたかし先生リスペクトだよー。とりあえず魂のサイクルについてはわかってくれたかな?詳しい話はタールヤがみんなを連れて来たらしよう。二度手間になるのめんどくさいしねー。」
「あの、みんなって誰ですか?」
銀次がフィリパークに聞いた瞬間、後ろから聞き覚えのある声が銀次の名前を呼んだ。
「銀次!よかった、目が覚めたらあんただけいないから心配したのよ!」
銀次が振り返ると、そこには地震で死んだはずの飯田を含めて部活にいたメンバー全員がタールヤと一緒にいた。
「飯田か!それにみんなも、先生も!大丈夫でしたか!」
目が覚めてから始めて見知った顔に会い、緊張していた体が少しほぐれたようだ。銀次はすぐにみんなの元に駆け寄り再開できたことを喜んだ。
いつのまにかタールヤはフィリパークのそばについており、フィリパークはその様子をにこにこと眺めていたが、ついに口を開いた。
「さて、和やかなムードに割り込んで悪いんだけどみんなが揃ったから本題に入ることにするね。」
銀次はみんなと会えた喜びを噛み締めながら、フィリパークがさっきまでの冗談めいた態度をがらりと変えたことに気づき、姿勢を正し耳を傾けることにした。
導入部分が長いというか書きづらい。
今年もよろしくお願いします。