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戦火の孤島  作者: 真那 木屶
七星の魔人
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No.21 廉貞

 領主の館に来て数分、リルとイラスはこれ以上ないほどに会話に花を咲かせていた。

 その様子は端から見ると親戚の子供にでれでれのおじさんだ。


「なるほど、ただ俺たちの素性を知りたかっただけなのですね」

「ああ。リルの言う通り、引き抜こうかとも考えたがな。お前達ほどの戦力は、私では管理しきれそうにない」


 イラスはリル達を呼んだ理由を包み隠さずに話した。

 政治的な意図があったのなら、そうはいかなかったのだろうが。



「ところで、七星の件だが……」


 イラスが真面目な顔になり、七星について切り出す。

 リルは小さく頷き話の続きを促した。


「『武曲』と『破軍』を捕らえたとのことだったが、他の七星はこのことに対しどう動くと思う?」

「大人しくはしていないでしょう。七星は協力関係にないことはご存じでしょうが、それぞれが魔界の最終防衛線です。ひとり欠けるのも多大な損失となり得る。いくら協力していないとは言え、他の七星は二人を取り戻そうとすると思います」


 その質問は想定内だったため、リルは特に問題なく答えた。

 イラスも同意見なのか、そうだなと言って頷いた。

 そして六人に探るような視線を向け、静かに問う。


「もし他の七星が、このカトルに攻め込んできた場合だが……お前達を戦力として期待しても良いか?」


 イラスとしては、断られた時は他の冒険者を雇うつもりでいる。

 なので、ここでリル達に断られても少し残念だというくらいで拘るつもりはない。

 ただ、戦力は多い方が良いという考えもあり、出来れば引き受けて欲しいとも思っていた。

 そんなイラスの問いに、リルは何の躊躇いもなく頷いた。他の五人も同様に頷く。


「勿論です。住処を荒らされるのは癪に障りますので」


 リルの言葉に、これで少しは安心出来ると息を吐くイラス。

 そんな幼馴染みの姿を見て、カルミオンは若干不満そうに眉を寄せた。

 先ずは自分を頼って欲しいものだと思ったのだ。

 そのときふと、カルミオンは視線を感じて顔を上げた。その瞬間、ナトゥスと目が合う。

 ナトゥスがカルミオンを観察するように見ていたのだ。それを誤魔化す気はないのか、気にせずに見つめ続ける。


「おい、俺に何か言いたいことでもあるのか?」


 ずっと見られるのは居心地が悪いため、カルミオンはナトゥスに声をかけた。

 会話を楽しんでいたリルとイラスも、二人の方に視線を向けて成り行きを見守り始める。


「別に。強そうな奴だと思っただけだ」


 いつものように無表情で、淡々と答えるナトゥス。

 それを見たアレアとクレイアが、少し嫌そうに顔を顰めた。


 ナトゥスは少しばかり戦闘狂の気がある。強い相手にはそれなりの興味を示すのだ。

 ジュナがその良い例だろう。最初の頃、戦闘の技術が何も無かったときは特に興味を示していなかった。だが、ジュナが力をつけると、周囲が驚くほどにジュナに構うようになった。

 本人は無意識で無自覚なのだろうが、周りから見ればそう見える。


 そして、今回は「勇者」であるカルミオンに興味を示した。

 ナトゥスの性格をよく知っているアレアとクレイアは、またかと思い嫌そうな顔をしたのだ。

 ナトゥスが暴れた後の尻拭いは、大体二人に回ってくるからである。


「へえ? お前も結構強そうだが……そんなお前から見ても俺は強そうなのか?」

「強そう、というか、強いんだろ? 仮に俺と戦ったとしても負けるわけがないって顔だ」


 二人の間に火花が散る。

 リルとメルク、イラスは、面白そうだといった顔で二人の様子を眺めている。

 ジュナは我関せずというように出された紅茶を飲んで寛ぎ、アレアとクレイアは面倒なことを起こすなとナトゥスを睨み付けている。


「いいねぇ。なかなかに骨のありそうな奴だな。名前は?」

「ナトゥスだ」

「宜しくなナトゥス。俺はカルミオンだ。で、どうだ。少し俺と手合わせしてみないか?」


 カルミオンの申し出にナトゥスが頷こうとしたその時。

 アレアの拳がナトゥスの右肩にめり込んだ。

 比喩ではなく、本当にそれくらいの勢いで拳が飛んできたのだ。


「いっ!」

「本当に馬鹿なの? ここはそんなことする場じゃ無いんだよ。いい加減目の前のエサに釣られるのやめてくれる?」

「……ゴメンナサイ」


 アレアの棘のある物言いに、ナトゥスは気まずそうにしながらも取り敢えずといったように謝った。

 その様子を見ていたカルミオンとイラスは、声を上げて大笑いする。


「ふははははは! これはいい、実に面白いな、お前達は。ますます気に入ったぞ」

「ナトゥス、そこの兄ちゃんの言う通りだ。手合わせはまたの機会にしよう」


 実力的には、アレアよりもナトゥスの方が上だ。

 これでもナトゥスはリルとメルクに次ぎ、三番目に腕が立つ。

 だがアレアには頭が上がらず、どうしても下手に出てしまうのだ。

 これはクレイアも同様で、アレアにはどうしたって敵わない。


「さて、ちょっと脱線してしまったが、今日の所はこれでお開きだ。忙しいだろうに、呼び出してしまって済まなかったな。また機会があればこうして話でもしよう」

「ええ、そうですね。実は最初、ここへ来るのは気が進まなかったのですが……有意義な時間を過ごせました」

「ふははは、正直に言ってくれるな」


 多少のハプニングを挟みつつ、リル達六人と領主イラスの会談は終わった。

 もう外は暗く、既に七時を回っているだろう。かなり長居していたようだ。


 イラスとカルミオン、他の使用人達に見送られながら、六人は宿への帰路についた。



 ◇◆◇◆◇



「見付けた」


 遙か上空からカトルの街を見下ろす人影。

 その口元に不気味な笑みを浮かべ、その人影は目標へと接近していく。


「七星の魔人の力を、見せてやる」


 人影——七星の魔人『廉貞(アリオト)』、ロイノアの呟いた言葉は、風に掻き消されて誰かに届くこともなく消えていった。

【作品裏話】

—時を止めるクレイア—


クレイアの能力は、時間を止める能力にしようと考えていました。ですが、そうするとクレイアが最強になってしまうのでボツとなりました。動きを止められたらどんなに強くても意味がないですからね。色々と制限を設けてみたりもしたのですが、ややこしくなるのでやめました。能力決めも難しいんです……。

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