4.逃げた結果
「カイトさんやカイトさんや…」
「なんだいリコさん…」
「カイトさんのお母様…最後舌打ちしてませんでしたかね…?」
「…してましたね…リコさん…」
「確かにながーーく、惚気けられるけど少しは聞いてあげないと可愛そうだったかなぁ…」
「……そうかもねぇ……」
『ハァ………』
盛大なため息が二人から漏れた……
「で……家から出るために『稽古して来る』って言ったけど…本当にするのね…稽古…」
2人はカイトのいつも稽古をする場所である町の端の方に向かっていた
「もちろん!!だって勇者様の話聞いてたら稽古したくなるだろ!だろ?!」
「その割に朝寝坊を華麗にキメた人が隣を歩いてる気がするけどね…」
「………………」
流れるようにカイトを凹ませるリコと凹んでいる本人
「冗談!冗談だから!ね?凹まないの!」
「……ウン…」
やっぱり年上感がないカイトだった…
「ほ…ほら!ついたよ!稽古するんでしょ?」
「…とりあえず水……」
そう言ってカイトは円形に拡がっている稽古場の入り口にある井戸に向かった
「よいしょっと…」
カラカラと音を立てながら滑車が回り、水の入った桶が登ってくる。桶を井戸の縁に置き、その水を井戸の周りに置かれたコップをヒョイっと取ってすくった
「あー…リコもいる…?」
「うん!もらう!」
「りょーかい」
そう言って今すくった水をリコヘ渡し、さっきコップを取った場所の横にある別のコップで水をすくい一息に飲み干した
「…ハァ………よし!やるぞ!」
木刀を手に取り稽古場の奥に向かうカイト
「…………水の一気飲みで復活って…相変わらず単純だなぁ……」
そう言ってリコは近くにあるベンチに腰を下ろしたのだった
「カイトーそろそろ帰らないのー?」
そう言いながらカイトに近づき汲んでおいた水を渡した
「おーありがとー!今日はこのくらいにして帰るかー」
「うん、そろそろ帰らないと…まぁまた怒られるよねぇ…日が暮れてるというか…なんというか…」
沈みかけている日がとても紅くなっていた夕時
「やっべ!急ごう!」
カイトは水をまた一気に飲み干し、慌ただしく片付けを始めた
「出る前機嫌悪くさせちゃったから尚の事急がない…と……って!気づいてたなら教えてよ!」
「いやー…少し前まで寝てた!」
「見張りって!何だっったのさ!」
「どうどう、許して!ね!」
手を合わせて上目遣いに甘えてくるリコ
「ここぞとばかりに年下全開かコンニャロー!可愛いから許すけどなァア!」
結局リコに甘々なカイトが折れて解決したそうな…
…無論帰宅後怒られたのは言うまでもあるまい………
そろそろ帰ってこいカイト父…