朽ちる
朽ちる
しわがれたりんごを森の奥で見つけた
つややかだった赤い皮は小じわが寄って
どす黒く色をなくしていた
あちらこちらに虫食いのあとがあった
朽ちるとは悲しいことだと思った
もし私が美しく光る九月のりんごを知らなかったら
この変わり果てた姿を見た私は哀れむだろうか?
森にぽつんと捨てられ
誰からも感嘆の声を上げられることもなく
誰をも喜ばせるすべをなくした
古く汚い廃物に変わってしまっただけのりんごを
人の命もこうして同じように朽ちていくのだろう
つややかな人生が少しずつすり減らされ
魂だけがむき出しになるとき
消えていく肉体
傷んでいく肉体
惜しまれているのは
消え入りそうな一片の思い出
捨てられずに葬られる
それだけの違いが人とりんごを隔てている