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魔法を使っていたり、使える資質がある人は人口の0.01パーセント前後という最新の調査結果がある。単純計算すれば、一万人に一人ぐらいだけど、全国に均等に分布してるってわけじゃないから、魔法使いに会いやすい地域と、会えない地域の差はかなり顕著になる。
いや、地域的にもそうなんだけど、魔法使いの多い年代とそうじゃない年代というものもあるわけで、これが中々に厄介だった。
なぜなら――。
この学校には残念ながら俺だけしか魔法使いがいないからだ。
中学では同級生と後輩に計八人の魔法使いがいたのもあって、今はそこはかとなく疎外感を感じている。
今年卒業した姉貴達の年代には結構いたらしし、噂程度の話では、俺以外にも二人入ってくるはずではあった。けど、かたっぽは落ちて私立、もうかたっぽは倍率見て受ける高校を変えたんだとか。
まったく、情けない連中だ。
頬杖ついて、ごく普通の帰りのホームルームを聞き流す。
てか、毎日良くなにか喋りたいものだよなと思う。あの中年教師。絶対、女子高生を少しでも長く自分の支配領域である教室に置いておきたいとか、そんな理由だな。昨今、教師の不祥事も多いんだし。誰かアイツにパンツでも見せ付けて、無理やりだったとか証言して、失職させねぇかな。
ほう、と、軽く溜息を吐いて窓の向こうを見る。
ハロウィンは、近い。
ジャックオーランタンレプリカは出来たけど、あれはあくまで基本。料理で言うなら、一般的なレシピ通ってやつだ。可能なら、アレンジもして――。
『わぁ、すごい』
『こういうのいいよね』
『可愛い』
とか、真由紀さんの口から引き出したい。そしてあわよくば……。
い、いや、今は学校だ。下手な妄想をして、荒ぶられて、ある意味立ち上がられることで立ち上がれなくなったら困る。そう、ここで余計な時間を浪費する余裕はない、そういう気構えなのだ。
でも――。
……魔法使いだけのお祭りが盛大なのって、同じような友人で集まりたいって言う、そういうオフ会みたいな感覚なんだろうな。地域的に多い少ないが分かれるのも、やっぱり普通の人と付き合ったり結婚し難い――魔法の事について説明し難いから――ので、同類同士で集まったのが原因だったみたいだし。
だから、自作した小物を持っていったり、交換したり、なんて、普通のお祭りやイベントではやらないようなことも頻繁に行われているし、屋台も普通の祭りとは同じものを絶対に売らない。
「きりーつ」
どこかリズムのある間延びした声が響いたので、周囲につられるようにして立ち上がり。
「れいー」
頭を下げる。
これで今日のお勤めも終了だ。さっさと家に――。
「マッコトォ、帰んのか?」
同じクラスの司郎が、鞄を背負いかけた俺に絡んで来た。いつも通り、司郎のくっつき虫の雅史も、ヤツの右側に陣取ってこっちを見ている。
まったく、男同士でべたべたしあがって。卒業までにコイツ等が道を踏み外さないか、若干不安だ。
……まあ、ひとごとだし、実害がなければ何でもいいけど。
そんな二人を見て対抗意識でも燃やしたのか――いや、おれにそっちの気はないが――、窓際の席から隆史が、授業中だけかけてる眼鏡を外して、俺の左肩に腕を乗せた。
「そりゃ帰るさ、ガッコに泊まる気はないからな」
アメリカンな大げさなリアクションで肩を竦め、皮肉っぽい笑みを口の端に載せて司郎に答える。
「ヒドイ、ワタシとは遊びだったって言うのネ」
身をくねらせ、随分と野太いオネエ言葉で俺を引き止める司郎。
「そっちこそ、グラウンドで青春しちゃってるついでに、彼女つくったりなんてしたらゆるさないわヨ」
ビシッとサッカー部の司郎を指差し、膝を内股気味にして目を潤ませてやる俺。
「イヤン、浮気なんてするわけないじゃない」
両手を頬に当てて、薄く目を瞑った司郎がちょっと恥ずかしそうに頬を染め――。
「だはははっ」
「アホだよ、お前等」
即興の寸劇を特等席で観戦していた雅史と隆史が、つっこみとも閉幕の合図ともいえる合いの手を入れると、周りのその他大勢のクラスメイトも其々の目的地へと向かって散り始めた。
一頻り盛り上がった後……お互いの顔を見合わせ、俺たちは同時に大きく溜息をつく。
「「「「はぁ」」」」
グラウンドへ行くのも駐輪場へいくのも同じ下駄箱を経由するから、司郎と雅史を引き込んだ四人パーティーで、肩を落として歩き出す。
教室を出て、ホールを抜け、一階の下駄箱までの階段を……。
「普通科にしたら、女の方が多かったってのにな」
階段の上の方に視線を向けつつも、女子生徒の鞄ガードで邪険にされた司郎が、二通りの未練を込めた声で言った。
「なんで進学科に女が少ねぇんだろ」
俺の横の隆史が、尋ねるというよりは、嘆くような口調で司郎の真似して天を仰ぐ。
「そりゃ、やっぱ、ウチの高校って言ったら、理数系ってイメージあるからだろ」
露骨な視線でこれ以上点数を下げる気がない俺は、適当に前を見ながら答えた。
「理系って、女少ないのが普通なのか?」
真顔で司郎が訊いてきたけど、俺は統計取ってるわけじゃないんだし、根拠があるわけない。世間一般のイメージだ。
ただ、少なくとも俺等のクラスには女は少なく、かつ、親しくしたくなりたい美人はほぼ皆無だった。逆の意味ですげえ女は何人かいるのにな。
「知らねぇけど、ジッサイそうじゃん」
現実に打ちのめされた後……お互いの顔を見合わせ、俺たちは同時に大きく溜息をつく。
「「「「はぁ」」」」
近くの――階段から降りてきたって感じじゃないから、三年の御姉様だな――二人組みの女子生徒が、俺達を見て、クスクス笑って横をすり抜け階段を上がっていく。上から駆け下りてきた同学年の連中も、なんか微笑ましい視線を送ってきあがるし。
どうも、この三人に巻き込まれると、俺まで三枚目の芸人キャラだと思われてしまってしょうがないな。俺だけは、文武両道で硬派な超素敵日本男児だってのに。
一度、下駄箱でばらけ、靴を持って再び集合。
ドカッとコンクリートの地面に革靴四つがぶつかる音が大きく響き――。
「「じゃーな、部活でイチャついてくるゼ! このヤロウ!」」
帰宅部の俺と隆史を指差して、無駄に元気良く宣言した司郎と雅史。
「はん、こっちは街で女子高のネーチャン捕まえてやらぁ」
ファックサインで応えて大股で歩き出す俺と隆史。
俺は歩きだが、隆史は自転車だ。まあ、それで一緒に帰るって言うのも変なんだが、なんとなくの流れで、入学以来、正門の下のドラッグストア前のT字路までは隆史と帰っている。まあ、一年の時は姉貴と美香――姉貴と同い年の幼馴染――もいたし。美香と隆史は、家が近かったので顔見知りではあった。隆史は魔法が使えないので、俺は中学に入るまで美香に一般人の幼馴染がいるとは知らなかったけど。
そういえば、今更だけど、アイツって、変なとこ秘密主義だよな。
もっとも、隆史はどちらかといえば大人しいって言うか、ひとりだとぼへーっとしててなに考えてるか分からないところもあるので、あの武闘派姉貴分二人についてこれなかっただけかもしれないが。
「美香先輩、最近どんな感じだ?」
心の中を読まれたようなタイミングで隆史に訊かれたので、ちょっと動揺した。
「どんな感じ?」
「いや……」
隆史は、どっか要領を得ない返事をしながら、視線を泳がせている。
「家はそっちのが近いだろ?」
「大学行ってからは、全然さぁ」
隆史は肩を竦めている。
二通りの意味でどうしようかな、と、思ったけど、そもそも美香も魔法使いだし、一般人がストライクゾーンに入っているとは思えなかったので、俺は軽い調子で答えた。
「夏に姉貴と一緒に会った時は、変わってなかったぞ」
「……そっか」
美香はぽやぽやしてるけど、鈍いって手合いじゃない。なにか有るなら、それなりのアプローチもあるはずだ。
だから、そういうことなんだと思う。
隆史のハートの傷が浅いことを祈りつつ、俺はT字路を左に折れ、隆史と別れた。
普通の高校生活を終えて、見た目だけは普通のニュータウンの一軒家に帰ってくると、丁度、姉貴が台所で何か作っていた。おやつじゃないのは見れば分かる。立ち上る煙が、小さいハート型に分裂しながら換気扇に消えてるし。
ハロウィンの予行練習なんだろうけど……錬金術なんて、また似合わないことやってるな、と、半端な好奇心を抱いて姉貴の手元を覗き込む。
ステンレス鍋では水が沸騰していて、その中に三角フラスコが入っている。フラスコの三分の一ぐらい入っているのは野菜ジュースっぽい変なニンジン色の液体。どうやら蒸留中らしい。フラスコの出口のゴム栓から伸びるチューブは、ボウルの氷水をくぐって、小さなビーカーに集まっている。
ビーカーの中身はほぼ透明の液体だった。水滴の波紋を見る限り、粘性も低そう。
俺の視線に気付きながらも無視していた姉貴だったけど、液体がビーカーの目印の線まで溜まるとおもむろに俺の方に向き直って言った。
「ねえ、ちょっと、アンタ、これ飲んでみて」
出来立ての謎薬を躊躇無く、いつも通りの顔で俺に差し出す姉貴。
引き攣った顔で腕を引っ込めるが、姉貴はビーカーに氷を二~三個入れ、アイスコーヒー用のマドラーでひと混ぜして俺にビーカーを強制的に握らせた。
氷を入れた理由は、薄めるつもりなのか冷やしたままの方が良いからなのは、ちょっと分からない。氷がすぐ解けていないところを見ると、後者の理由っぽいけど……。
「なに?」
「惚れ薬」
訊けば、あっさりと中身を明かされた。姉貴のことだから、無意味に引っ張ると思っていたんだけど、焦らすより明かして困らせたほうが楽しいと判断したのだろう。
ビーカーをしげしげと見る。栄養ドリンクは冷えてた方が利きそうな印象があるから、惚れ薬も冷やしたんだと思う。まあ、温いよりは良いけど。
ん――。
でも、惚れ薬、かぁ。
まあ、ダメじゃないけど、なんていうか、あっさり飲んでヤる気があるみたいに思われたくも無いという厄介な代物だ。しかも、姉貴相手に。
「ううむ」
「嫌がんなよ、愚弟」
尻に姉貴の膝が入った所で、俺は生返事を返した。
「へいへい」
そもそも、昨日のジャックオーランタン・レプリカの一件もあるし、姉貴に対して借りを溜めると大変なことになるもの分かっている。
一応、お約束としてしょうがない、みたいな素振りで受け取り、一口で飲み干した。
ふぅむ、不味くはないけどちょっと薄味。ほのかな甘みと、乳酸菌系飲料の爽やかな酸味があって、普通の炭酸を十倍に薄めたぐらいのレベルで発泡してる。水よりももっとサラサラしてて、喉越しはすっきり。
喉の奥をひんやりした薄荷油みたいな液体が流れる感覚があって、胃に落ちていく。一瞬後に、喉から胃にかけてが微かに熱を帯びて――。
なんか、今、胸がキュンとした。
それを自覚した次の瞬間、目の前の姉貴から目が離せなくなった。気の強そうな目も、キュット引き締まった頬も、ちょっと不精したような伸び過ぎた前髪も、鼻も、口も、何もかも全部が……胸を締め付ける。
「あ、マジだ。姉貴が可愛い」
いつもよりそういう台詞を言う気恥ずかしさも薄れている……というか、俺が姉貴を可愛いと思っていることを素直に伝えたいような気持ちがある。
……ん? あれ? なんか――。
「どのレベル?」
つれない態度っていうわけじゃないけど、照れもなく研究者の顔で言った姉貴にちょっと失望。
俺としては、可愛いって言ったら、そんなことないよー、とか否定しつつこそりニヤニヤしたり、じゃあどこが? とか、照れ隠しに拗ねたような顔で聞き返されたいのに。
「おーい、聞いてるか?」
目の前で手をひらひらと振られて、ハッとする。
姉貴に惹かれさせられていても、理性や知性はそのまま残っていたから思考に支障はなかった。そもそも惚れ薬を飲んだっていう記憶がある以上、原因がはっきりとした恋心ごときに翻弄されるわけにはいかない。
俺には既に心に決めた人がいるのだから!
舌先で微妙に口の中に残っている惚れ薬を吟味してみる。
そうだな、これは――。
「甘酸っぱい青春の初恋風味」
うん、行動力に欠けつつ、憧れが中心の恋心は、間違いなく中学生の初めての恋愛っぽい雰囲気だ。いや、まあ、実際問題として、中学の頃に出会いが無かった俺が断言するのも変な話だけど、一般論としては間違っちゃいない表現だと思う。
「ふーむ、まだ調整が必要ね」
姉貴は俺の説明に口をへの字にして、不満そうに呟いた。
……いったい、どこまでのレベルを狙っているんだろう?
見境無しに発情するようなのは自粛してくれよ、……飲んだ相手が危篤になる。それでなくても、姉貴が得意なのはRPG的に言えば攻撃魔法系なんだから。
「あ、くそぅ。材料がもう無いや……。黄色のハートに大きなハートと、鋼鉄の心に浮いた錆びに、腹黒色のコケモモ――。アンタ、美香の家に行くけど付いてくる?」
明らかに大荷物になりそうなのに気付いて、俺を誘ってくる姉貴。
体良く使おうとしているのがバレバレなのに、そんな笑顔に――今日は釣られてしまう。
「もちろん」
俺は笑顔で即答した。
大好きな姉貴のお願いを断るなんて、出来る、わけが、ない……?
「てか、マジで惚れ薬なんだけど?」
さっきから湧き上がる感情に、物凄い違和感を覚えて姉貴を問い詰める。半端に元の思考が残っているから余計に性質が悪い。躊躇無く飲んだのは、もっとお遊び系の――小学校の頃に姉貴に飲まされたぐらいの……? いや、でも、あれ?
あの時も、最終的にキスまで行ったんだっけ?
むう、何故か記憶が曖昧だ。
って、多分、百パー姉貴のせいか。
海馬を揺さぶるような強い衝撃でも与えたんだろう、普段は悪ぶっていても、最後に意気地が無い姉貴だから。
そういうとこ、やっぱり姉弟か。
「前もって言ったじゃん」
謝罪されるとは思っていなかったけど、立派な胸を張って姉貴が威張っているのもどうかと思う。
「誰に使う気? 一般人相手にはお勧めできないけど……」
「だーいじょうぶ、こっち側の人間だから」
それは、どういう意味での大丈夫なんだろう? 怖いから――あと、愛する姉貴を疑いたくなんてないから、これ以上追求できないが、被害が拡大しないことを祈るばかりだ。最悪、俺まで事態収拾にかりだされる。
……くそう、なんか頭が混乱する。
根っこの部分お気持ちはそこまで変わってないんだけど、瞬間の判断がひっぱられるっていうか、一瞬胸キュンしてから冷静になってへこむ――後姿美人の顔を確認してしまったような――感じ。
「ちなみに、これってどのぐらいの時間効いてるの?」
そこはかとなく不安になりながら訊ねる。
永遠に効く魔法は無い。それに限りなく近付ける方法はあるけど、台所で掛けられるようなモノじゃない。
ん~、と、唇に人差し指を当てた姉貴は、ちらっとレシピらしき紙片に目を落としてから、ごく普通の調子であっけらかんと言い放った。
「お遊びなんだし、二~三時間かな」
「ふーん」
少なくとも、姉貴と俺のお遊びの感覚に大きな誤差があるのに気付けただけ、ましと今回は考えよう。随分と高い勉強料だけど。
「ちなみにその買い物で、真由紀さんと会える確率ってある?」
ごく、いつも通りの質問をしたつもりなんだけど、姉貴から返って来たのはジト目だった。
あれ?
「……惚れ薬、失敗してるんじゃないでしょーね」
若干怒ってるような口調の姉貴。
なんで訊いただけでそんな、という気持ちと、惚れ薬によるパニクって焦ってる気持ちがせめぎ合う。
が、勝ったのは平常時の俺だった。
「大丈夫。今は姉貴“も”好きだから」
「……ふーん!」
俺の言い方が気に障ったのか、かなり不機嫌そうに姉貴は鼻を鳴らした。
てか、実の弟に惚れられて嬉しいか?
……まぁ、嫌われるよりは、ずっと良い、か。
「成功したら俺にも分けてよ」
フォローのつもりじゃないけど、背中を向けてエプロンをはすいている姉貴に黙られたくなくて、声をかける。
「真由紀の同意を取り付けられたらね」
やっぱり返事もツーンとした態度だった。
難しい女王様だな、まったく。
てか、どうやって惚れ薬の使用許可を取るんだよ……。惚れ薬、使って良い? って、訊いてる時点で狙ってるのがバレてしまうだろうに。
しかも、自分は相手の同意を得ずに使うつもりだろうに。
大学から帰ってそのままなのかもしれないけど、姉貴はすぐに外出できるみたいで、食事用のテーブルの上にあった鞄を肩に掛け、軽くスマホを眺めている。
俺は……。そうだな、誰に合うかも分からないのに学ランのままってのも味気ない気がしたので、着替えに部屋に一度戻ろうとしたら――。姉貴に襟首を引っつかまれて、玄関へと回れ右させられてしまった。
「すぐ行くの?」
鞄だけ足元に置いて、素直に背中を押される俺。
「制服着れるのなんて、あと少しなんだから、着替えなんてしなくて良いわよ。行くの、美香の店“だけ”だかんね?」
謎の理論で俺の右肩に顎を乗せるようにした姉貴が、頬をくっつけて釘を刺してきた。
やばい、心臓が早鐘を打っている。惚れ薬が、横向いてキスしちゃいなよ、とか、俺の脳内で誘惑してきあがるし。
強く歯を食いしばり、姉貴の意図を――くっついた時の惚れ薬の効果を観察するという以外に――考えることで、ピンクの気持ちを誤魔化そうとする。
うん、そう、この姉貴は、きっと、俺は買い物が終わっても真由紀さんと出会えるのを夢見て、商店街を徘徊するとでも思っているんだろう。そのために、場合によっては補導されてしまう制服で連れ出すつもりに違いない。そんな鬼のような所業を行う相手に、ドキドキしてどうする、俺。
……まあ、買い物後に真由紀さんを探したいと思っていたことを、否定しきるのは難しいが。
しかし、受験はまだ先とはいえ、一年の時点で補導されても面白くないしな。
謎の惚れ薬のバカみたいな効果もあるんだし――、それに、美香のとこに真由紀さんがいる可能性も否定されたわけじゃないんだから、今日は大人しく姉貴に付き合うしかない、かぁ。