共通点。
「うわぁ、降ってきたぁ!」
たっぷり遊び終わった夕方。
彼女が大声をあげた。
「声が大きい」
「え!だって!ほら、雨、雨!!」
「見ればわかるよ」
うるさい彼女を落ち着かせながら、自分のリュックを漁る。
「なにしてるの?」
「傘を探してる。折りたたみ傘」
「おぉー!あった?」
「残念、ないよ。」
今日に限って、忘れ物をする自分を呪う。
「強くなってきたし、とりあえず家によりなよ!」
「遠慮するよ。悪いからね」
「いいから来て!強制ね!」
「えぇ」
強くなる雨の中を、俺の手を引いて彼女が走る。
「ふぅ!着いたよ〜!」
「……うん。」
「さぁ、入って入って!」
有無を言わさず俺を家の中に入れる。
思ったより濡れていたし、雨もかなり強かったので、俺は図々しくも、
彼女の家にお邪魔した。
「…お邪魔します」
「あはは!家には誰もいないはずだから!ゆっくりしてね〜!
私の部屋は2回の奥だから!行けばわかるし待ってて!」
「わかった。」
大きい家の広い階段を上がり、指定された部屋に入る。
彼女の部屋は、広かった。
テレビ、パソコン、ソファー。
俺の部屋とは違い、生活感があった。
「はい、✕✕くん、タオル!」
「ありがとう」
借りたタオルで、簡単に濡れたところを拭く。
「ありがとう。洗って返すよ」
「えぇ!いいのに!」
「いや、後で洗って返す」
「わかった!」
彼女が笑顔で頷いた時。
トントントン、と足音が聞こえた。
「誰かいるの?」
「え?いないはずだよ?」
「じゃあ足音は誰?」
「わからない。」
階段を上がってくる足音は、部屋の前でちょうど止まった。
彼女と部屋の隅へ行く。
「親は?家にいないの?」
「いないいない!」
「じゃあ……」
俺は立ち上がって、扉をゆっくり開けた。
「たっだいまぁぁぁぁ!!!」
「うっ……」
「会いたかったよぉぉぉぉ!」
「お兄ちゃん!?お姉ちゃん!?」
扉を開けた瞬間、誰かに抱きしめられて、俺は窒息寸前だった。
「ありゃ?誰?君は」
「彼女の知り合いです」
「お姉ちゃん、私の友達の✕✕くん!」
「ほぅ!可愛い名前だね!よろしくね〜」
「はい…」
小さく頭を下げる。
彼女のお姉さんの横で、お兄さんがニコニコしてた。
「私は、姉の舞愛!よろしくね!」
「えっと、はい?」
「で、俺は2人の兄の澪音。よろしくな!」
「……はい」
爽やかな笑顔のお兄さんと握手をした。
3人兄妹はとても顔が良く似ていた。
ただ、同級生の彼女と違うのは、兄姉達には手首に傷が無いこと。
「あ、✕✕またリスカしたの?」
「うんうん!」
「だめだぞー。まぁ、止めないけどな〜」
ニコニコしながら3人がそんな話をし始めた時、俺はふと外を見た。
「あ、雨やんだ」
「ん?本当だ!」
俺の一言で、3人が会話をストップする。
「雨やんでよかったねー!」
「外で遊んできたら?」
「えぇー!やだよぉー」
そして、3人兄妹の共通点をもう一つ。
騒がしいというのを見つけた。