初めての?
「それよりね!見てほしいものがあるんだ!!」
「へぇ。みなくてもいいかな。」
「いや、見てよ!」
華麗なツッコミを俺にすると、彼女は俺の目の前にピンク色のノートを出した。
「ノート?これがなに?」
「私ね、死ぬまでにやることを書いてるの!」
「へぇ、まるで余命僅かな人みたいだね。」
「あはは!そうかもね!でもちょっと違う!
余命僅かな人は、
“死ぬまでにやること”
だけど、私のは
“これをやってから死ぬ”
だから!」
「決定的に違うね。」
「うんうん!」
頷きながら、ノートの一番後ろのページを開く。
そこには女子特有の丸い字で、びっしり文字が書き込んであった。
「すごいでしょ!書きすぎて、私すぐには死ねないっ!」
「すごく馬鹿だね。」
彼女に許可をもらって、ノートに目を通す。
『友達を作る』
『友達と遊ぶ』
『友達とお泊まりする』
『友達と海に行く』…………
彼女のノートは『友達と』かなり多かった。
「まずは友達作りを頑張ってね。」
「あははは!絶対言うと思った!大丈夫だよ!」
「へぇ、君にも友達がいたんだね」
「なにいってるの?✕✕くんが友達だよ?」
「え?」
ここからの会話はあまりにもおかしかった。
友達と言い張る彼女と、
そうじゃないと言い張る俺。
結局、やっぱり俺が負けて、
俺は彼女の友達になった。
「じゃあ早速!明日遊ぼうね!土曜だし!」
「は?やだよ。」
「なにか予定あるの?部活入ってないよね?」
「入ってないよ?だからなに?」
「部活ないなら暇でしょ?」
「あー、僕、明日彼女とデートで」
「いるの?」
「いると思うの?」
「思わない。じゃあ決定ね!
明日遊ぼ!詳細は夜!メールするね!」
「はいはい。」
この時ほど、部活に入っていれば、と思った日はないだろう。
「それじゃあ!明日ねー!私はこれから家に帰るから!」
「へぇ、サボりね。」
「そう!君も来る?」
「遠慮するよ。」
「だろうね!」
彼女はまた、あははは、と笑った。
「じゃあね。ばいばい!」
「うん」
この日、俺は彼女と初めて友達になった。
ちなみに、その日の夜、しっかり彼女からメールが送られてきた。
『こんばんはー!
しっかりメールしたよ!
明日は、10:30に駅集合ね!
遅れちゃダメだよ?(笑)
行く場所はシークレットで!
それじゃあおやすみ!
また明日!』
俺は
『わかった。おやすみ』
とだけ返した。
『冷たいメールだね』
という彼女のメールは無視した。