カオ
「へぇ、✕✕くん。どうして?」
ちょこんと小首を傾げる。
その仕草と表情が、すごく憎たらしい。
「目の前で死なれたら気分が悪いからね。」
前と同じ返事をする。
彼女は、やっぱり笑った。
笑顔もここまでくると気持ちが悪い。
「そうなの?」
「少なくとも僕は。」
「私ね、誰かに迷惑をかけるのは嫌いなの。だから、今回は君に免じて辞めてあげる。」
「それはどうもありがとう。」
「いいえ、どいたしまして。」
ちらりと周りを見てみる。
呆気にとられたみんなの顔。
そりゃあ、驚く。
周りの視線から逃げるように、俺は教室を出た。
向かう先は屋上。
今日は曇りだけど、雨は降ってないし大丈夫だろう。
雨が降る予報も、多分なかった。
「✕✕くーんっ!」
「ちっ」
「あはは!ちっ、だってぇー!」
「なんなの?何しに来たの?
今のは舌打ちって言うんだよ?知らないの?」
「知らないなぁ〜!えっとね!遊びに来たの!!」
「来なくていいよさよなら。」
「えぇーひどーい!」
トントントンと、階段を上ってくる。
足音が俺のすぐ後ろに来た時、屋上の扉を開けた。
「曇ってるね〜」
「天気予報は曇りだからね。」
「君はほんとにつまらないね」
彼女が白けた目で俺を見る。
俺がつまらないのを今知ったなら、かなり頭がおかしい。
「そんなことより!君はさっき、私の命を救ったんだよ!」
「なんのことだかわからないな。」
「またとぼけてぇ〜」
「ぼけてないよ。君じゃないからね」
「酷い!」
「とか言っておきながら君は笑顔だよね」
「あはは!ありがとー!」
「……別に褒めてないし」
「おぉ!照れてるの!?可愛いよ!」
「うざい。」
「酷い!」
ずっと笑顔だ。
きっと、死ぬまで笑顔なんだろう。