表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/17

教室。醜い。

教室の扉の一歩前。

中からは、メイドカフェの準備を行う声が聞こえる。

俺は立ち止まった。


「ちょっと、手を離してくれるかな?」

「えぇ?なんで?」

「おかしいからだ。」

「なにが?」

「色々面倒だからね。」


面倒なことは避けて生きていきたい俺なので、

なるべく優しめに、強く手を振り払う。


「あーあ。傷つくわ!まぁ、いいか。」

「そうだね。じゃあ、僕は入るから」

「あぁ、私も!」


ガラガラと、扉を開ける。

予想通り僕には目が集まらなかった。

けど、その後入ってきた女子に目が集まった。


「……あれって」

「初めて教室でみたんだけど……」

「私も私も!」


彼女をコソコソと噂する声。

やっぱり目立つんだ。

対する彼女は、無言無表情だった。

無言で、窓際の人がいない場所へ行く。

誰か女子が彼女に話しかけた。


「ねぇ、ちょっと」

「なに?」

「✕✕ちゃん、メイドやってくれる?」

「どうして?」

「いや、えっと」


突然彼女に話しかけた女子が、彼女の無言の圧力に怯む。

俺はそれを黙って見てた。

俺の隣には、彼女とまではいかないけど、それなりに綺麗な女子が立っていた。


「私がメイドをやる必要は無いでしょう?」

「でも……」

「無駄な事はしたくないわ」

「だけど、✕✕ちゃんは1番かわいいから。」

「褒めてくれてありがとう。でもやらないわ」

「頼むよ、✕✕。」


遂にはクラスの人気者そうな男子が声を出した時。

俺の隣で女子が叫んだ。

驚いた誰かが、当日使うガラスのコップを落とした。

俺も、驚いた。


「うるさいわよ!頼んでるんだからやってくれてもいいでしょ!

グダグダ言って男の気を引いてんじゃないわよ!!」


嫉妬、らしい。

一番醜い、人間の側面。


「…誰?あなた。」


チラリと名札を見て、


「あぁ、─ちゃんね。」

「うるさい!」

「あら、失礼。」


そう言って、得意のクスクス笑いをする。

これも、その女子の怒りに触れたらしかった。


「何笑ってるのよ!あんたなんて、クラスにも来ないし、

死ねばいいのよ!!」


終わったな、と思った。


きっと、この女子は、彼女に自殺癖、自傷癖があるのを知っている。

知った上で言ってるから、もう、終わってる。

その言葉を聞いた瞬間、彼女の目が変わった。


「死ねばいいのよ、ねぇ。」

「……なによ」

「ねぇ、私ね、自殺マニアなのよ」


そう言いながら、コップを割った子の元へ歩いていく。

割れたコップの、ガラスの破片を掴んで、それで、


自分の腕を切った。


「ヒッ……!」


ツーッと、真っ赤な血が流れる。

それだけでは終わらない。

腕から血を流しながら、窓からベランダへ出た。

柵に手をかける。


「ちょっ、なにして……!」

「あら、どうしたの?死んでほしいんでしょう?

それともなぁに?私が本当にやるとは思わなかった?もしそうならあなたは相当おめでたい頭だね。」

「なっ……」


こうなったら、もう、とめられない。

3階のここから落ちたら、最悪死ぬ。


「君、やめておきなよ。」


そう考えて、思わず声を出した。

驚いた顔で、みんなが俺を見る。

そんな顔で見ないでくれ。

一番自分が驚いているのだから。


ただ1人、彼女だけはニコリと笑っていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ