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即興シリーズ

世界は終わらず、また年が明けるようで

作者:
掲載日:2016/12/24






「いやぁ、さむくなりましたねぇ。もう来年が目と鼻の先ですねぇ」


真っ白な道、小さな足跡がサクサクと音をたててる。前を歩く君、首に巻いたマフラーの端が手招きするようになびいてる。


君はいつも前を歩くね。何でかな。考えて、足跡で気づく。僕が遅いだけ、君が前を歩いてるんじゃなくて、僕が後ろを歩いているだけ。そんなこと、どうでもいいかな。




もうすぐ年が変わりますね。なのに君と僕の関係は、いつまでも変わりませんね。もういくつ年を数えたかな?



「今年、やり残したことはありますかぁ?」


君は振り返らずに、独り言のように呟いた。僕に向けた言葉だって分かるのが、小さな自慢。


「やり残しのない人生なんてないよ」

「まったく、変わらないですねそういうところは」



顔は見えないけれど、きっと呆れた顔してるんだろうね。仕方がない、こんな考え方しかできないのだから。それが僕である証明。



「なんかないの~? 来年こそは~!みたいな目標」

「あるよ」


いつも目標にして、いつまでも届かないけれど。きっと、頑張る理由が足りないせいだ。なんて理由をつけて、いつまでも手を伸ばしていないだけ。


「じゃ、来年はそれが目標?」

「うん。目標にして、また年を越すんだろうけど」

「... それはいつ叶うのかねぇ。ほんっと、面倒な生き方してるよね」

「すみませんね、面倒で」






「もしもさ。明日世界が終わるならどうする?」


君の小さな足跡を見つめていたら、そんな突拍子のない質問が飛んできた。


「... そんなの、なってみなきゃ分からないよ」

「だからもしもって言ってるじゃんか! 死んじゃう前にこれだけは!! みたいなのないの!?」

「.........あるよ」




もしも明日世界が終わるなら。何をしても、すべて消えてなくなるなら。後悔も、哀しみも、全部真っ白にしてくれるのなら。





「好きな人に気持ちを伝える。... 結果はどうあれ思い残すことなく僕はそれで死ねるかな」

「ふーん」

「君は?」

「え。 なんだろ... あ! 最後くらいは後ろを歩いてみたいかな」

「僕の?」

「うん!」



そんな簡単なことを最後に望むなんて。君らしい、勢い任せの考えだ。



それくらいなら。今でもいいじゃないか。



いつも眺めてた小さな足跡。それを追い越すように、少し歩幅を大きくする。


「ほらね」


君の横を通りすぎて、少し前を歩く。...君の前を歩くのは初めてだね。君がいないと少し寂しい気がした。でも、後ろから聞きなれた音がして、安心する。



「簡単なことだよ」

「ま、前見てて! ふ、振り返っちゃダメだから!」


振り向こうとした顔を途中で止める。... 焦っているようだけど。君にしては、珍しい。







白い雪が道を染める。今日だけ、小さな足跡は見当たらない。きっと、後ろを見ればあるんだろうけど。


「ありがとう」

「な、なにが!」

「君がいつも見てる景色がどんなだったのか。知ることが出来たから」

「そ、そう? ま、まぁそれなら良かったね」

「うん」





怒るのかな。怒られても、いいや。君に感謝してるから、それを伝えたいから。...本当に伝えたいことは、まだ言えそうにはないけど。




「ありがとう。来年も、よろしくね」




僕は笑って、そう伝えた。


















「... 見るなって、言ったのに」

「えっと、ごめん...」



振り向いた君は、真っ赤な顔してて。ちょっと泣きそうな顔で、僕を見ていて。

...... きっとそれは、雪のせいなんだよね? 冬の寒さのせいだよね?












抱き締めたいと。一歩、君に歩みだしたのは。









.......... もうすぐ、年が明けるせい。






そういうことに、しませんか? 年忘れなんて言葉のせいにして。




小さな君に、壊れないようにと優しく触れた。
















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