テンセイ 2
ドアの先には金髪碧眼の少女。
壊れた眼鏡とこのよくわからない状況は、もう戻れないんだと僕になんとなくだけど感じさせた。
それがいったいなんの予感なのかはわからないが。
金髪碧眼。南の前に立っているのはまだ13、14だろうか、見知らぬ少女だった。
だが、彼を先生と呼ぶ。
「ごめん、いま目が覚めたばかりで状況がよくわからないんだ、眼鏡も壊れちゃってて。ここは何処なんだい?病院?それに君は誰なんだい、僕の生徒に外国の子はいなかったと思うけど、中学生くらいだよね、歳はいくつ?」
南は矢継ぎ早に質問を投げかけた。
言い終わる前に少女は彼の口を指でつむいだ。
「質問はひとつずつ。私が今から説明するから、最後に疑問に思ったことを聞いて。それに、レディに歳のことを聞くのは紳士じゃないわ」
「ああ、ごめん。気をつけるよ、、、、、」
「うん、よろしいっ。それじゃあとりあえず学園長先生に会ってもらうからついて来て」
幼い少女に手を取られ、情けなくただついて行く。
「あの、あのさ」
「何?質問は最後って言ったでしょ」
「ああ、いや、そうなんだけど、まだ名前聞いてなくて。君のこと何て呼べばいいのかなって」
少女は立ち止まる。
うっかりしてたわと向き直る。
その仕草で彼女の長く綺麗な髪が風に乱反射する。
「ブリット。私のことはブリットって呼んでっ」
「ブリット?」
「そうっ、ブリット。本当は舌を噛んじゃうくらいに長いんだけど、こっちの方が可愛いからみんなにはブリットって呼ばせてる」
「ブリットか、本当だ、可愛い名前だね。君らしいよ」
「ありがとっ」
ブリットは嬉しいにまた、南の手を引いた。
彼の手は、さっきよりも少しだけ強く握られていた。
二つ目のドアを開けるときは用心しろ。
これは僕の祖父の言葉だ。
今の今まで、意味はわからなかった。