第四話:この1週間
今回は久志凪の視点から書いています。
一週間の間、僕はずっと図書館に篭もり、この世界のことについて調べていた。
まずは一般書架で分ったことから話す。
一つ目の本には流通している通貨は硬貨と紙幣であることが書かれていた。それはこの世界全土で使われていて、単位は日本円と同じであるということ。転生者が来てから作られたと書いてあった。また紙幣については作成時に特殊な魔道具を使っているので、偽札は絶対にできないことが分かった。
二つ目は1年が365日、1ヶ月が30か31日でひと月だけ28日があり、1週間は7日だということ。それぞれの月の呼び方は1月から順に正月、瞬月、春月、初月、雨月、夏月、葉月、中月、秋月、夕月、枯月、冬月となっていること。それと曜日は日、月、火、水、木、金、土に当てはめると、光、闇、火、水、風、雷、土となること。28日なのは瞬月で4年に一度29日になり、その年は余年と呼ばれ、366日になる。やはりこれを作ったのは日本から転生してきた人であるという。その転生者が神になった時の名をとってヴェルリウス暦と呼ばれるということが分かった。
三つ目はこの世界の地形についてだ。この天体の大きさは地球と全く変わらないことが書かれており、気候も変わらない。今僕達がいる王国は地球だと日本と同じ位置を領地としている。場所によって住む種族は大きく3つに分かれていて、地球北部を魔族が住む魔族領、南部を精霊が住む精霊領、中部を人族、獣族などが住む多族領となっている。
四つ目は魔法のこと。今この世界で最も主流な魔法は理論魔法と言われる科学を利用した魔法。その他にも今まで古代魔術、近代魔法、現代魔法というのがあるそうだがそれぞれ欠点がある。
古代魔術は自然の安定した状態を変えるため、正確な魔力制御が必要になる。
近代魔法は魔力制御をあまり必要としない代わりに威力が低い。
現代魔法は魔力制御も必要なく、威力も高いが使えるのは転生者・転移者の一部のみ。
そこである転生者が一つの技術を開発した。それが理論魔法だ。例えば火を出すとき、魔力を酸素・水素に変換しそれに熱エネルギーを加えるという風にする。この時魔力制御が必要そうだが、気体に含まれる元素は簡単に変換でき、火属性に適正があれば熱エネルギーを生み出すのも簡単なので近代魔法が使える人なら誰でも使える。
以上の四つが一般書架で分ったことだ。次は禁書書架。
禁書書架に置かれていたのは異世界に関すること。
一つ目はこの世界が0の世界と呼ばれる世界であり、僕達がいたのは1の世界と呼ばれること。そしてもう一つ2の世界と呼ばれる世界がある。それぞれに特徴があり、0の世界は三つの世界の元となった世界で、魔法が発達した。1の世界は魔法の代わりに科学が発達した。2の世界は魔法・科学ともに発達した。
二つ目は三つの世界のできた順番に関する学者の考えでまず名の通り0の世界が最初に出来た。次に魔法を捨て、違う技術を発達させた1の世界。その二つを合わせた2の世界が出来た。どうやって二つの世界を合わせたのかはこの本では書かれていなかった。
三つ目は先ほどとは違う学者がさっきの本のことについて補足していた。その内容は世界の流れは線であり、幾つもの分岐から出来て、その束が世界。分岐が大きく異なるものだった場合、別に新しく束が作られそれが新たな世界となる。世界を揺るがす大きな分岐というのは技術のことだったのだろうと書かれている。加えてなぜ転生者が来て新しい技術がやってきたのに四つ目の世界ができていないのかについては、世界は三つの世界それぞれが裏で影響し合いその均衡を保っているからだ、というふうに書かれていた。
僕が1週間の間に調べられたのはこれくらいだった。そして僕が本を読んでいる間、護たちは訓練をしていて、すでに騎士団の大半には勝てるくらいに強くなっているそうだ。
スキルは使えば使うだけ能力が上がっていくそうだが、僕はこの1週間一切使うことがなかったのでちっとも変わっていない。
そしてとうとう明日、僕はこの城を出て旅をする。
――さぁ、この世界に団子を広めよう!