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ハロー、ニューワールド!帰っていいですか?



ー《星天》の力を持つ星野蒼一の7つの秘密の力


①天魔神撃刀...一振りで存在そのものを斬り滅ぼす破壊の刀。その一振りは空間すら超越し対象を滅ぼす斬撃を放つ。


②星海八眼竜を封印せし右腕...《星喰い》の異名を持つ八眼の竜。星の海を渡り星を喰い巨大な体と強大な力を持つ邪眼の竜。特別な印を刻み右腕に封印している。その腕を山に振るえば山を消し飛ばし海に振るえば干上がらせ、力を解放すれば星すら砕く一撃を放つ。


③時計仕掛けの魔眼...視覚に捉えた対象の時間を操作する事が出来る魔眼。対象の生命を逆行若しくは順行により奪う事が可能。


④支配者の領域...自身の力の及ぶ領域内で人の出入りや範囲対象の状態を知覚する事が出来る。同能力者同士ではぶつかった範囲は相殺され知覚は不可能となる。


⑤星天紋...星の力を秘めた額の紋章。《星誕》と《星壊》を司り星を滅ぼす事も星を誕生させる事も可能。


⑥剛強吼闘衣...黒くてカッコイイだけじゃなく。強くて頑丈な闘衣。


⑦ーーー




嬉々として7つ目を書こうとシャーペンをノックし芯を出す。机に向かうその顔はニヤつきが止まらない様子で書いた力を想像しては身悶える。


「俺様、最強だぜ!フハハ、ハッハッハー」


ペンを右手に高々と掲げる。その右手には雑に巻き付けられた包帯が指先から肘まで覆っていた。左眼には苦心して装飾を施した黒塗りの眼帯をし真っ白に脱色した髪は腰まで伸びている。夏だとはいえ足先までのロングコートを羽織り異常な汗を垂れ流しながら蒼二は満足そうに笑った。




「にぃに、怖い。何笑っているの?」

「ピュアな兄を捕まえて怖いとは失敬な妹よ。まあいい何様だ」


「ご飯。ママが呼んでる」


「おお! そうか大義である我が妹よ」


書いていたノートを机の引き出しにしまいコートをバサッと翻らせ5歳年下の妹である星野美空の側に立つ。手を伸ばすが美空は顔を横に振った。

「おトイレ、先に行っててにぃに」


「そうか! 先に行って待っているぞ‼︎ フハハ、ハッハッハー」


あらゆる意味で兄を見送り兄が書いていたノートを取り出す。未だ空欄の7つ目。そこに彼女の願いを拙い文字で書き足す。そしてノートを仕舞い居間に向かった。




それから5年が過ぎた。兄蒼一は17歳。妹美空は12歳となった。兄の蒼一は相変わらずの格好で長い脱色した白髪を紐で縛り台所に立ち鍋の中のビーフシチューをかき混ぜる。いい香りが台所から香り美空は机に突っ伏する。




「にぃに、お腹空いた」


「あぁ、もうすぐ出来るからな。ちょっと待ってくれ」


「あい」


小皿にシチューを取り味見をし皿を取り出す。ビーフシチューを掬い皿に盛って美空の分と自身の分をテーブルの上に置く。サラダとご飯をお椀に盛りテーブルの椅子に座る。


「それじゃあ、いただきます」


「いただきまー」


シチューを口の中に入れ味わう。我ながら良い味付けである。しっかりと煮込まれ柔らかい牛肉、野菜の甘みが口の中に広がる。美空も美味しそうに口に放りこんではモグモグと忙しない。


「そうだにぃに、ノートがいるんだけどある?」


「む、ノートか。無いな、どうしたんだ?」



「授業でもう一冊いるの。むぅ、買いに行かなきゃ」


「そうか、じゃあ後で一緒にコンビニに行くか」


「うん、にぃにありがとう」


満面の笑みを浮かべるマイシスター。我が妹ながら可愛く育ったものである。


食事を終えると食器を水に浸けて出掛ける準備をする。あまり遅く出掛けても美空にも宿題や眠る時間も遅くなってしまう。美空も自室で準備をしてくると言ったので自分も財布と鞄を持ち部屋から出る。


「にぃにと出掛けるといろいろ巻き込まれるんだけどこのノート持っているとまきこまれないんだよね不思議と」


巻き込まれ体質の兄は厨二病を患ってから碌な目にあってない。弱いのに不良と喧嘩し怪我をしたり野良犬に追いかけられたり通報されたり根は優しいいい兄だが痛くも無い腕を急に抑え呻いたり目を押さえては蹲ったりとての掛かる兄である。5年前に書いていた兄のノートを捲り兄の妄想と私の希望が詰まった7つの力を見る。美空は首を傾げた。ノートの文字が淡い赤色に発光したように見えた気がした。


「錯覚?かな」


気のせいという事にして可愛らしい鞄にノートを詰めこみクマのがま口財布を手に部屋を後にする。


6月の初夏ではあるが20時ともなれば辺りは真っ暗である。街灯はポツポツとある物の心細い。兄妹手を繋ぎ夜の静寂の中を歩いて行く。途中公園があるものの中を突っ切れば目の前にコンビニが店を構えているが夜遅くの公園は無人で植樹された木々がいい感じに恐怖心を煽る。突っ切ろうとした妹の手を引き公園周りをぐるっと回る事を選択した兄を臆病者とは思わない。道中兄が立ち止まると包帯でぐるぐる巻きした右腕を掴み呻き声をあげ膝をつく。ブルブルと身体を震わせていた。


「うぅ、痛い痛い痛い! まじで痛い‼︎ あぁぁぁ」


腕を押さえ兄がのたうち回る。


「にぃに、まじ勘弁。そういうのは私の居ない時にして」


「うぅ、妹が辛辣だよー。兄が苦しんでいるのに」


突然襲った右腕の痛みは嘘の様に引いた。




ーオノレイマイマシイ




「ん? 妹よ何か聞こえなかったか?」


「何も聞こえてない。にぃにの気のせい」


「そ、そうか」


美空がスタスタと先を歩いて行く。もしかして俺は不要だったのかと絶望に打ちひしがれていると妹は立ち止まり手招きするのだった。




「不甲斐ない兄ですまない美空」


「大丈夫。馴れてるから」


そんな事をしている内にコンビニに辿り着いた。自動ドアが開き来店を報せる電子音が鳴り響く。店内に入るとBGMにのせてオススメ商品を伝えるMC役の芸人の声。そして時計の秒針が進む音が蒼一の耳に確かに届く。まるで頭に響く感じな音に顔を顰める。文房具の置いてある棚からノートとシャーペンの芯に消しゴムを買い物カゴに入れ美空は必要な物はこれで終わりとばかりにレジへ行った。また兄が何かしでかさないかと会計途中に兄を見遣ると店内でまたもや蹲ってしまった。店員さんも釣られ目を向けまたかとばかりに呆れ顔である。会計を済ませ兄の顔を呆れ混じりに見つめ美空はハッとする。顔色が悪い。生気を失いそうな顔は青白く身体をブルブル震わせていた。




「にぃに?」


「美空。ごめん。寒い」

蒼一の額に手をやると思わず手を引っ込めるほど冷たかった。道中気温も蒸し暑かった。熱中症だろうかと美空は買った物を兄に預け飲料水の棚から2リットルの水を手にレジに行き手早く会計を済ませる。兄はバツが悪そうに立っていた。




「うぅ、すまん。急に体調が良くなったよ」


「にぃに、まじ勘弁」


「ごめんごめん。今度美空の好きな物買うからそれで許して」


手を合わせてごめんのポーズを取る蒼一に腰に手をやった美空が半眼で見つめた。




「喫茶ナカムーのパフェで手を打つです」


美空の声に蒼一の表情は晴れる。


「兄に任せるがいい」


そう言って手を差し伸ばし美空はその手を取った。


ーさあ、帰ろう


そう言って自動ドアを越えた。


ジャリと砂を踏みしめる。目の前の光景に目を奪われた。まず太陽の日差し暖かい。空は高く雲の合間を鯨の様な巨大な生き物が潮を吹きながら泳いでいた。その側を飛んいた小さい翼竜の群れが飛んでいる。下に目を向ければ山と見紛うばかりの8本足の巨大な亀が大地を揺らしながらゆっくりゆっくり進んでいる。




「「ハッ」」


一瞬呼吸を忘れてしまった様だ。ゴシゴシと目を擦り再び目の前の光景をみる。変わらなかった。確かに確かにコンビニを出た筈だ。


「にぃにのシチュー食べて寝ちゃったみたい。ノート買うのは明日にして寝よ」


横になって寝ようとした美空が見上げて硬直した。鳩が豆鉄砲を喰らった時ってこんな感じになるのかなと思う。




「にぃに?」


「どうした我が妹...よ」


聞き覚えのない声が自分から出た。ちょっと声が高くなっているな。気にしない事にする。




「にぃに、抱っこ」


「ハッハッハ、いつまで経っても甘えん坊さんめ」


あきらかに変わった声音が自分から出てくる。豊かになった胸筋が割と邪魔をして美空を抱き上げにくい。美空は見入っていた。明らかに大きくなったそれを。恐る恐るといった感じでそれを包むように美空の手が触れた。ふよふよと感触を確かめるように力を込める。




「止めろよくすぐったいじゃないか」


あくまでも笑顔を無理矢理貼り付けて妹に笑ってみせる。だが妹はワナワナと唇を震わせ事実を口にしようとしていた。駄目だそこから先は言ってはいけない!認めたくない現実に押し潰されてしまう。




「にぃにがねぇねになっちゃた」


不思議生物が泳ぐ晴天の空の下少女となった蒼一の悲鳴が木霊した。


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