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飛んでいた間の出来事

ミリアは出ないはずでしたが、ちょっぴり出ます。


私が淹れた紅茶を飲みながらミリア様は本棚に置かれていた本を手にとり読もうとしたようだが、本を開いてがっくりされていた。会話が出来ても文字は無理だったようだ。


「フルール、子供が文字を習う時に使うような教科書とかない?」

「ありますよ」


もしかしたら、と考え用意していてよかった。民間の学校でも使われるような教本を急いで取り寄せておいたのだ。

先程ミリア様に会いに来られたら陛下にこっそり「あの部屋」に来るように言われたの思い出す。


先に言っておくが、決して密会などではない!


あの部屋とはこの城にある神殿の神官長の部屋だ。


神殿の関係者で唯一ミリア様の「過去」を知る者で腐りかけている神殿の数少ないまともな人、陛下に剣術を教えた御仁だ。(なんでそんな人が神官?と疑問はあえて無視する)


今この城にミリア様が居るのを知っているの我々しかいない。こっそりしてもバレてしまうのが王城という場所だ。だから、堂々として入っても尚且つ王族が集まっても不審ではないとなるとこうなった。


「ミリア様、陛下に呼ばれているので行ってきます。……絶対に部屋を出ないで下さいね?」

「うん、いってらっしゃい。出ても迷子になると思うし、勉強してるよ」


素直で良い方だ……これがあの双子だと全く聞いてくれなかったのに、教育係を降りようか本気で悩んだことを思い出してしまった……っと、急がなくては。


   *   *


「失礼いたします」

「どうぞ」


すでに全員が揃っていた。今宰相は王の不在を補っているため此処にはいない。


「ミリアは何してた?」

「勉強なさっています。本を読もうとして文字がわからなかったようで、用意しておいた教本とにらめっこされてましたよ」

「そうか、ミリアがこの世界で生きていくことに前向きで良かった」


此処にいる全員、同じ気持ちだろう。もし拒絶されてしまったらどうすべきか、ミリアが気を失っていた間に何度も話し合った。しかしそれは杞憂となりミリアは受け入れたのだ。


「本当に、突然ラディ達が帰って来て『ミリア様はっ?!』って言われたときは慌てたよ」

「うっ、すみませんでした!」

「まさか、風精王が連れて来てくれるなんて思いもしなかったわ。神官長、水精王はなんと?」 

「生誕祭を成功させること、だそうです」


三日前のことだ。ミリアの傍に居るはずの護衛が揃ってノックもなしに飛び込んできたのだ。

居るはずのない三人を見てクロイツはまばたきを数度する。三人の中で常に冷静なクレスも普段から想像もできないほど慌てている。クロイツは更にラルディンの発言に首を傾げる。


「クロイツ!ミリア様はっ?!」

「は?ミリア?何でミリアの名前で出てくるんだ?

というか、何で揃って居るんだ?」


クロイツの返事に血の気が引いていくのを感じたラルディンは既に倒れそうな程顔色の悪いフィーティアの肩を揺さぶる。


「っ!フィー、お前一体どこに送ったんだよ!!」

「わかんない!どうしようっ?!」


全く理解できていないクロイツは黙ったままのクレスに説明してもらう事にした。大事な妹に何か起こったのかと心配しながら……残念ながらそれは現実となる。


「ミ…様を…方に……んです」

「ん?なんて?」


小声で聞き取れなかったので聞き返す。クレスはよく聞こえるように、逆ギレしたように再度同じ言葉を繰り返す。


「ミリア様を此方に送ったんです!突然、魔物が現れフィーティアが『空間門』を開いて、此方にミリア様をこっちに……」


送ったんだ、最後の方は口調も崩れその声は震えていた。


「嘘、だろ?」


クロイツは呆然としてしまっていた。そこに3人が戻ったと聞いたジーナが現れる。


「なに?この状態は」


ハッと我に返ったクロイツはまず三人を正気に戻すため、遠慮なくぶん殴った。そして近衛であり大事な妹の護衛である同僚を殴るという行動に驚いているジーナに叫んだ。


「父様とイース兄様、あと神官長を呼んで!」

「えっ?なん「早くっ!」わかったわ」


そして、訳も分からず呼び出されクロイツと呼んでいる間に(殴られたてできた傷の)治療を受けた三人の話を聞いた王達は愕然となる。


「申し訳御座いません!」


地球……というか日本の土下座をして謝り続けるフィーティアの肩に王はそっと手を置く。ビクッと体を揺らして顔を上げる。


「フィーティア、お前は正しい事をしたのだ。魔物の存在が気になるが、まずはミリアを発見し保護しなくては」

「はっ!この身にかえましても」

「神官長!……神官長?」


反応がない。国は広く、ミリアの存在は隠されている。敵か味方か分からない周りに頼ることはできないし自分達だけでは無理だ。ならば精霊の力を借りるべきだが精霊達に命令できるのは精霊王のみ、その精霊王と対話を許される神官長はぼんやりと虚空を見つめ立っていた。


『久し振り、か?王よ。愛しき姫は我が兄が保護したそうだ』


神官長が妖艶に微笑む。溢れるのは王の威厳で、普段の神官長では無いことは一目瞭然だ。王とて精霊王とは対等ではないため、全員が素早く膝をつき心臓に手を当て頭を垂れる。


「水精王、お久しゅう御座います」

『13年振りかな?最後に話したのは『あの夜』以来だな』

「はい、その節は」

『構わないさ、あの子に為だ』

「あの……僭越ながら兄とはどの方で御座いますか?」


六人の精霊王は、創世記に書かれている順番で生まれているので、五番目に書かれる水精王には兄と姉が二人ずついるので、兄と言われてもどちらなのか。


『大きくなったな、イース。……風だよ。何時もは気紛れでこちらなど余り気に止めておらん兄だが、今回は動いた』


それだけ言って消えた水精王……総ての水を司るの精霊王は神殿から城にやってくる。実体で来る事は殆ど無く大概誰かの身体を借り言葉を伝えてくる。実体で現れるのは祭典や王の代替わりのときぐらいだ。


「ラルディン、迎えに」

「はっ」


王に命じられドタバタとラルディンは部屋を退出していった。


「神官長?大丈夫?」


ふらついた神官長を双子が咄嗟に支えた。精霊王は絶大な魔力を有する存在のため、短時間といえど身体と精神への負担は計り知れないものがある。


「ありがとうございます。この位は平気ですよ」


笑う神官長をソファに座らせて、末の娘の帰還の一報を受けた王妃も駆けつけ待っていると、ラルディンが気を失っているミリアを抱いて戻ってきた。フルールが薄着(夏の制服)のミリアに毛布を用意していると、ミリアの身体が淡く発光し始める。徐々に強くなって一際明るく光るとそこには藍色の髪をした少女が寝ていた。


「陛下、これは」

「本来の姿なのだろうな。私のかけた魔法がこんなにもあっさりと」

「いつ目を覚ますかしら?」

「さぁ、でもミリアは言葉を話せるかわからないよ?住んでた世界が違うんだから」


ミリアが知らない、こちらでの出来事だ。


   *   *


「どうしては言葉が通じたんだと思う?」


全員が不思議に思ったことだ。風の魔法には意志疎通の類いが存在したが、フルールが掛けた形跡は無かったのにごく普通に会話が出来ていた。


「それが、返してもらったそうです」

「返して?……え?誰に?」


クロイツの視線が護衛達に向くが、一斉に首を振り否定する。言いにくそうにフルールはミリアが教えてくれた答えを伝えた。


「小さい頃の自分に、だそうです」


しん……と会話が止み静寂が部屋を包む。


「では、思い出したのか?」


ミリアに思い出して欲しくない、思い出すべきでは無いあの『過去』について、ミリアの心の傷とも言える『あの夜』のことを?そう王の目は言っている。


「いいえ、ただ……気づかれてはおられます。我々が何か隠している、と」

「思い出す可能性がありますね。少しずつもしくは一気に」 


封じた筈の記憶の封が壊れかけている。それは……


「何故あの子ばかりがっ!どうして!」


神官長の推測に王妃は過去に自分の娘に起こった変化を思い出し声を絞り出す。


「私達にできたのは、記憶や魔力の封印と地球に送ることだけだった」


そう言い、重いため息を吐き出して王は立ち上がる。


「ミリアにはこれまでを忘れ生きて欲しい。私に出来ることはしようと思う」


「「「「はっ」」」」


一人の父親としての思いを口にした王に全員を頷いた。王は全てに平等にあるべきと説くべきだが、今回ばかりはミリアの過去を知る者は同じ思いだからだ。そして、王としてだけでなく個人としても信頼を寄せる者達に命令を下す。


「先ずは地球へと魔物を放った者を探しだせ」


それをひっそりと気配も無く聞いている者に誰も気付くことはなかった。

今テストが近いんです。・・・勉強もせず書いてます。アハハ

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