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夢だと思いたい

人形のように綺麗な藍色の髪と目をした小さな女の子が私を見上げていた。


「父さん、母さん……ねぇなんで?」


いや、私はあなたのお母さん、ましてやお父さんではないんだけど……

そう言おうとして気がつく。人形のように無表情な女の子が見ているのは『私』じゃないことに。


「何を見てるの?」


教えてもらおうとしゃがんで問い掛けるが女の子は答えない。ただただ悲しそうに此方を見続けるだけだ。


「私はあなた・・・『あの夜』の事を思い出して」


皆を殺した奴らを探してよ……哀しみと憎悪を宿した瞳をこちらに向けてくるのに、私は怖じ気付いたりせず少女を力一杯抱き締めた。


「……そうかごめんね、忘れてて。絶対に『彼奴ら』を捜し出して、『あの夜』の復讐をするから」


女の子の言葉に私はそう返事をしていた。そこではたと我に返る。……ちょっと待って、私は『何』を忘れてるんだ?あの夜って?復讐って?私の記憶にはそんなものはこれっぽっちも存在していない。

思いだそうと必死に考えていると、夢から覚めていくのがわかった。

唯一、解ったのは私が無意識に返した言葉に嬉しそうに笑ったあの子は私自身ということだけだ。


   *   *


今日だけで何度も言っている気がする。最初は草原、次は大きなお城が見える壁と壁の間の広場みたいな所。お次は……諦めが先行して深い溜め息をついてしまった。


「はぁ、ここどこ?」


目が醒めるとまず視界に映ったのは、ミラール(手のひらサイズ)によく似た、色とりどりの精霊が舞っている絵(いや刺繍?)の画かれてある天蓋だった。「一体どこのお姫様のベッドだよ」と呟くと、


「貴女様の、でございます」

「のわっ!」


寝惚けていたのもあったけど、薄暗くててっきり自分以外誰も居ないと思ったのに誰かいたらしい。


「気分は如何ですか?丸2日も意識がございませんでしたが」


覗きこんだ人物を見て固まった。あ~うん、確かに居るってミラール聞いてたけどね。声を大にして言いたい!エルフがいますよ!目の前に!

寝ている状態のままなのは失礼かと起き上がる。手をついて起き上がるとサラサラとしたモノを掴んだ。そして、何かと引っ張ると何故か頭に痛みが走る。


「しかも頭が重……い?」


理由は、私の髪だった。絹かと思うようなサラサラ具合の髪を鋤いてみると手を延ばしたくらいでは足りないほどに伸びていた。


「長過ぎるっ!!」


一旦腕を下ろして背中に腕を回して確認すると、肩までしかなかった筈の髪が腰の辺りまで伸びている。光に透かすと色は黒から夢の女の子と同じ藍色になってしまっていた。綺麗だけどね、どうなってんの!?


「あの、大丈夫でございますか?」

「っ、すみません。ちょっと驚いてました」


人がいることすっかり忘れて奇行を連発していた。


「あなたは?」

「フルールと申します。国王陛下よりミリア様の侍女なるよう命じられ此処におります」

「エルフですよね?」

「はい」


やっぱりか。本でよくある耳が尖ってるって特徴そのまんまだ。「へ~」と観察していると、



ぐ~きゅるる~



遠慮も糞もなくお腹が空腹を主張しだした。結構な音量だったが、フルールさんは何も聴こえなかったかのように、にこやかに笑ってくれた。


「隣の部屋に食事を用意してありますが、食べられますか?」

「あはは、ありがとうございます」


……顔が赤くなってると思う。丸2日意識がなかったとフルールさんは言っていた。つまり、2日間何も食べていないし飲んでいない。そりゃお腹も鳴るよね。ベッドから移動しようとしたけれど、「こちらまで運びますので少々お待ちを」と言われて、結局座っているしかなかった。


「美味しいっ!」


運ばれてきたのは何も食べていない胃の事を考えて作られた料理だった。簡単そうな野菜スープとパンとサラダだけだけどスープには何種類もの野菜入っていて、特に大きめのジャガイモは味が染み込んでいて本当に美味しい。


「ごちそうさま」

「もう大丈夫ですね」


フルールさんがほっとしたように言う。言葉が最初より堅苦しさが無くなっている。


「フルールさん、そのままでお願いします。私堅苦しいのは苦手です。あと大丈夫って?」

「わかりました。大丈夫というのは、2日も寝ていたので、陛下や王妃様をはじめ皆さんミリア様がいつ目覚めるのか心配していたので、つい」


そう言えばさっきから「ミリア様」って呼ばれているけど、それって私の名前なのかな?聞くタイミングは今しかない。


「ミリアというのは私の名前ですか?」

「はい!ミリア様はこの国の王女ですよ」

「オウジョ?」


ん?日本じゃ聞かない単語が聞こえたぞ?ブリキのように聞き返すとこの短時間で一番の笑みと共に言い切ってくれた。


「何度でも申し上げますとも、貴女様はミリア・ファーアト・メルキュール、このメルキュール王国王位継承権第四位の正真正銘の王女様でございますよ」


口に含んでいたスープを思いっきり吹いてしまった。スミマセン!

短めになってしまいました

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