表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一球の軌跡  作者: 蔦田 慧輝
8/13

クリスマスイブ


8.クリスマスイブ


北からの冷たい風が身を固まらせる。神奈川には冬が訪れていた。

「さみー」

雄斗は腕を抱え込んでわめいた。

今はオフシーズン真っ只中。まともにボールを触ることが出来ず、ひたすらランばかりの毎日だ。その日々で溜まった鬱憤を晴らすために、時間がある時には雄斗と二人でよく『さくら公園』に来てキャッチボールをした。今日は午前中練習で早く帰ってこれたのでここに来た。

秋の県大会、俺ら清南は初戦に私学の強豪とあたり僅差で負けた。その試合で途中登板した雄斗は4イニングを完璧に抑え込み、自信を付けたようだった。エースを獲る。その意志は日に日に増していた。

「ナイスボール!」

グローブにキレのいい球がおさまる。

「調子いいじゃん!」

そう言うと雄斗はニヤッとした。

キャッチボールで十分に欲求が満たされたところで俺達はベンチに座る。俺の片手にはホットコーヒー。雄斗はホットレモンティー。雄斗はコーヒーが苦手だった。一口すすってから言葉を発する。

「そろそろラントレがキツくなってくるなぁ…」

「あぁ、強化練習期間もあるしなぁ」

雄斗が顔をしかめる。強化練習期間はクリスマスイブから始まり、27日に終わる。朝の6時から夜の8時まで練習し続ける。当然、ランがキツい。

「折角のクリスマスなのになー…」

雄斗が冗談っぽく言う。けどレモンティーを口にすると急に表情が変わった。

「青弥は奈那美とどこか行くのか?」

不意をつかれた。すぐに何か言わなきゃ。そう思っているのに言葉にするのに時間がかかる。

「なんで?別に俺ら付き合ってるわけじゃないのに」

笑って言う。ぎこちなかったかもしれない。

「あれ?付き合ってないんだ。最近仲良さそうだけど」

口調は軽いが表情が堅い、雄斗。やっぱり周りから見たらそう見えるんだ。あの夏大から変わったのはわかってる。急に抱きついてきた奈那美を心地良く思った。可愛いと思った。けど…好きだけど、彼女として好きになれるのかと思う。よくわからない。自分の気持ちが。

「お前はどーなんだよ?」

思うより先に言葉が口をついて出た。

「お前は昔から奈那美のことが好きなんじゃねーのかよ」

自分の気持ちはよくわからないくせに他人の気持ちはよくわかる。いや、本当はわかってないのか?雄斗は眉を額に寄せる。遠くで鳥の鳴き声が聞こえる。沈黙をごまかすように雄斗はレモンティーをすすり空を見上げた。

「告れよ、奈那美に。クリスマスの時にデートでも誘ってさ」

先程の答えを聞けていないのと雄斗のあっさりした口調に混乱する。俺が慎重に言葉を選んでいるうちに雄斗は小さく呟いた。

「俺は…それでいい」

そして空になったペットボトルをゴミ箱に向けて投げた。

帰り道、ケータイを見ると奈那美からメールが来ていた。

『クリスマスイブの夜ってヒマ?』

思わず足を止めまじまじとケータイを見つめる。こんな簡単に偶然て起こるもんか?ケータイと一緒に手をポケットに突っ込んだ。

駅の近くのショッピングセンターはクリスマスの時期になると綺麗なイルミネーションが見れる。特に目立つのは数メートルの高さもある、大きなクリスマスツリー。その根元で奈那美は待っていた。いかにも冬らしい格好。普段のジャージ姿と比較すると余計に可愛く見えた。俺を見つけると顔を少しほころばせた。俺は奈那美と隣に行き、クリスマスツリーを見上げる。らしくない格好をして、らしくない口調で奈那美が話し始める。俺はクリスマスツリーを眺めながら何と無く聞いていた。女の子とこの状況にいるのが落ち着かない。ジャージ姿の奈那美だったらそんなこと気にしないのに。突然、奈那美が顔をこっちに向けた。俺も奈那美を見る。中学の時はそれほど変わらなかった身長が今は大分、俺の方が大きいことに気づく。俺を見上げながら奈那美は言った。

「私は青弥のことが好きなんだよ」

『好き』。その言葉は俺に向けられたものなのか。そこらへんに転がってそうな二文字が今は俺の目の前に落ちてる。吐いた息が白くなって消える。

「あのさ…」

口を開くと奈那美は顔をこわばらせた。なんだかその表情を見たら急に力が抜けた。

「なんで俺なのかな?他にもいい奴はたくさんいるだろ」

思うより先に口に出る。奈那美が口を開きかけてるのもお構いなしに喋り続ける。止まらない。

「俺も奈那美のこと好きだけどよくわかんねーよ。なんで俺なんだよ。だってお前の一番近くには俺なんかよりもっとお前のこと好きな奴いるだろ」

口調がキツくなる。こんな言い方するつもりなんてなかったのに。この日に会うことが決まった時から、ずっと悩んでたことがあっさり言葉になって、白く形になって出てくる。奈那美は目を見開いて、口をポカンと開けてる。

「わりい」

俺は奈那美を置き去りにして駅の改札に向かって歩き出した。後ろを振り向かないように前を見据える。クリスマスでざわめく人達の中に俺は呑み込まれていった。


はい、毎回のようにお久しぶりです笑


春来ましたねー


ここんところは部活と勉強と睡眠と執筆の両立がなかなか厳しくて…ていう言い訳はここら辺にして笑


ついに奈那美が気持ちを伝えたぜーい!


でも青弥は気持ちがまとまらず…?


青弥の考えてることはよくわからないです、筆者も笑


流れるままに書いてる感じなので自分も先が読めません笑


でも次話の構想は何と無く決まりました


雄斗と奈那美メインでいきます!


雄斗頑張れ笑


ではではー


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ