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一球の軌跡  作者: 蔦田 慧輝
7/13

ダンス

7.ダンス


夏が終わりを迎えた。蝉の声もあまり聞けなくなった。不思議なもので、夏はあれだけ存在感を出していたのに、蝉の声が聞こえなくなったのに気づいたのは今更になってからだ。そんな余裕が無かったからかもしれないが。

あの夏大が終わってから、清南高校野球部は大きく動き出した。キャプテンは早々に堺さんに決まった。野球が特別上手いわけではないが、周りをよく見れる人だ。全員一致の決定だ。それからは強烈な陽射しの下、練習、練習、練習。ぶっ倒れるやつも何人もいたけど、あの夏の悔しさを思い出したら手を抜くわけにはいかなかった。夏休みの終わりには、春のセンバツにつながる秋の地区予選があった。青弥は一番ショートとして、俺は二番手ピッチャーとしてチームに勝利を導いた。全勝で予選を突破した。

そして、今に至るわけだがこれで落ち着けないのがこの学校だ。

日本一の体育祭。あくまでも自称だが、そのくらいの気合いを入れてやっている。誇張ではなく、去年の体育祭が終わったその日から次の年の体育祭の準備が始まるらしい。縦割りで9クラスごとに9つの色を割り振って、競い合う。俺らは9組だから藍。その体育祭でメインを占めるのは競技ではなく、仮装。皆で一つのストーリーに沿ってダンスを踊る。そのダンスの衣装を作るとこから始め、踊る時に持つ小道具。場面を表現するために作られる大道具。などなどを作っていかなければならない。去年、青弥と体育祭見に行った時には唖然としたなぁ。清南の体育祭がやりたくて、ここを受ける人も少なくない。その体育祭を一週間後に控え、三年生の目が血走ってるのが今の時期。

で、今俺が何をしてるいるかと言うと…

「じゃあ、再開するよ」

三年生の女の先輩の声。音楽がかけられる。空き教室で仮装のダンスの練習中。隣には雪乃がいる。俺と雪乃は仮装が下手で補習中ってわけだ。こういうことは正直苦手だし、やりたくないんだけど、ホントは。ただ三年生の先輩が可愛いってことだけかな、来る理由としては。

「そこの時に、もっと腕伸ばして!」

その可愛い先輩に注意される。夏が終わったとはいえ暑い。汗ばむ。隣の雪乃を見るとテンパっていた。不器用だなぁ…。ダンスも恋愛も。なんだかんだで俺達二人は似た者同士なのかもしれない。追いかけても届かないモノにただ、むやみやたらに向かう。不器用。なんか雪乃と話してみたい気になった。

練習が終わった頃には教室に夕日が差してきていた。

「疲れたー…」

雪乃が床に仰向けに倒れて寝る。教室には二人きり。無防備だなぁ…。

「服、透けてるよ」

隣に座る。その声を聞いて雪乃がガバっと体を起こす。

「ちょっ…」

顔が真っ赤になる。ちょっと可愛いじゃん。

「嘘だよ」

「もう!」

雪乃は口を尖らせる。風で窓が鳴る音だけが教室に響く。もうちょっと動揺させてみるか。名前を呼んでみる。こっちに顔を向けたのを感じた。俺は顔を正面に向けたまま言った。

「青弥のこと、どう思ってんの?」

沈黙。

「好きなんだろ?」

そう言って雪乃の顔を見る。顔がさっきよりも真っ赤になってる。夕日に染まっているのもあるけど。無理矢理目線を合わせる。しばらく戸惑っている目を見つめる。雪乃は観念したように目線をずらし、かすかに首を縦に振った。やっぱりな…。俺はその答えを聞けて満足。だったのに雪乃は口を開いた。

「でも青弥には奈那美がいるし…」

思わず俺は固まった。今度は俺が攻められる番らしい。

「青弥は奈那美といる時、ホントに楽しそうだし。何よりお互い好きじゃないとあんなこと出来ないよ…」

あえて黙っていた。何を雪乃が口にするか注意深く耳をそば立てた。

「抱き合うなんて好き同士じゃないと出来ないよね?」

ズン。その言葉が俺の胸に重くのしかかる。

なんだ。雪乃も見ていたのかあの時。夏大が終わって泣きまくってる青弥に奈那美が抱きつくのを。しばらく抱きついたままだったのを。俺はそれを見た瞬間、負けた悔しさなんてどこかにいっちゃって重い何かを感じてしまっていた。あの後、二人は何事もなかったかのように俺らと接してたけど、二人の間で間違いなく何かが変わったのはわかっていた。雪乃は雪乃で鈍感なわりに感じてたんだな。

俺は雪乃の質問に答えられなかった。答えたくなかった。もう耳を塞ぎたかった。それでも雪乃は喋り続けた。

「青弥には好きな人がいるのに、その青弥を追い続けるなんて私には出来ない。そんなに強くないし私。幸せな二人の関係も友達っていう関係も壊したくないし…。私、臆病だから。」

そう喋る雪乃は目に涙を浮かべ、拳を握って、俯いていた。俺は雪乃が話すどの言葉も心に重く応えた。息苦しくなる。呼吸がしづらい。顔がゆがむ。雪乃はホッと息をついた。

「何言ってるんだろね私。雄斗には全然関係ないことだったね。ごめんね。」

そう言って力なく笑った。関係なくねーんだよ。俺は立ち上がって、雪乃の前に座り直して、雪乃の頭をポンと叩いた。

「やっぱ似てるよ、俺達。」


はい、お久しぶりです!


遅くなって申し訳ないです…


最近、部活も勉強も睡眠もあって忙しくて…


なんとか授業中に書きました!



今回はうーん。難しいね。雄斗がグイグイ行ってると思いきや、雪乃もなかなか考えて…みたいな笑


自分でもどーゆー方向に進むか迷走してます


困ったキャラです雄斗は



とにかく読んでくれてる方ありがとうございます!


次回は青弥の回!奈那美と二人で…


お楽しみに!

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