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一球の軌跡  作者: 蔦田 慧輝
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ネクストバッターサークル


5.ネクストバッターサークル


夏が来た。太陽が容赦無く照りつけ、蝉の声が響き渡る。夏の匂い。体全体でそれを感じていた。明日から俺達の、神奈川の夏が始まる。今日は明日からの試合に備えて練習が早く終わった。

「いよいよ明日だね…」

隣の雪乃がボソッと言う。

「あっという間だったな…。入学してからここまで」

思い返すと色んなことがあった。

「ホントにね」

顔をこっちにむける。真っ直ぐに俺の目を見る。ちょっとドキッとする。その時、後ろから笑い声が聞こえた。雄斗と奈那美だ。もともと俺ら三人で帰ってたのに雪乃を見つけて、いらない気を遣って俺と雪乃を二人きりにさせられた。何やってんだか、あいつらは。

「なんだかんだ私も頑張れたし…」

顔を雪乃に戻す。

雪乃は俺によく部活の相談をしてきた。

『私が足引っ張っちゃって…』

『下手だから私…』

そんな言葉をいくつも聞いた。俺はそんな雪乃にずっとこう言い続けた。

『夏の大会で雪乃の応援聞けるの楽しみにしてるから!頑張れ!』

「ホントによく頑張ったよ」

「青弥もね」

笑いながら雪乃が言う。

「俺はベンチに入れる限り色んな人の気持ちを背負って頑張らなきゃな」

今日の佐渡さんの言葉を思い出す。

『俺達には勝たなきゃいけないっていう責任がある。それをプレッシャーに感じるか力に変えるかが勝負の分かれ目だからな』

ベンチに入れなかった3年生もいる。身近にあれだけ頑張っていても選ばれなかった雄斗だっている。雄斗がめちゃくちゃ悔しがっていたのは知ってる。

「絶対に勝つ!」

雪乃はにこって笑って頷いた。

「うん!スタンドから応援してるから頑張って!」

「おう!」

俺は雪乃に負けないくらいの笑顔で返した。

俺達、清南は春ベスト8という結果から第2シードとして出場した。初戦、二回戦と公立相手に完勝し、ベスト8を懸けた中堅私学との対戦。取って、取られての点の取り合いとなった。俺はベンチで必死に声を出し続けた。結果は7対6で競り勝った。

ベンチから飛び出してグラウンドで整列して校歌を歌う。喉が潰れて声が出ないが、なんとも言えない爽快な気分を味わった。

試合後のミーティングで河野先生の言葉。

「とりあえず、春の成績と並んだな。けど本当に厳しいのはこっからだ。準々決勝の対戦相手は春にも敗れた南洋大青葉だ。本当に強いのは俺達だってことを見せつけるぞ!」

「はい!」

雪辱に燃える先輩達の目はギラギラ光っていた。

準々決勝当日を迎えた。神奈川高校野球の聖地、保土ヶ谷球場にはほぼ満員の人が入っていた。テレビ中継のカメラもある。清南は土曜ということもあって全校応援だ。これだけ注目されてる中で試合するのは初めてだ。少なからず緊張しているのは自分でもわかった。

「緊張してんのか?」

佐渡さんが笑って背中を叩く。

「少し…」

そう答えると

「せっかくこれだけの観客の中、出来るんだ。楽しまないと損だぜ?」

そう言ってる佐渡さんはめちゃくちゃかっこよかった。

「集合!」

その声を聞いて整列しに走る。拍手が球場中に鳴り響いた。

「おねがいしやす!」

試合が始まった。

初回、青葉打線に掴まった。立ち上がりを攻められ、エンドラン、スクイズを駆使して3点取られた。一方、清南打線はプロ注目の相手ピッチャーに軽々捻られていた。ただ初回以降はこちらも無失点に抑え、3対0で試合は進んでいった。

声が枯れ始めた7回、河野先生に言われた。

『代打の準備をしとけ』と。心臓が静かに鳴り始めた。固まった体をほぐすようにバットを振りながら戦況を見つめる。

9回表、なんとかピンチを抑え3対0で最後の攻撃を迎えた。佐渡さんを中心に円陣を組む。佐渡さんが静かに話し始めた。

「ここまでよく抑えた。あとは点取るだけだ。これまでヒットは3本。でも打てないわけじゃない。俺達はこんなとこで終わるチームじゃねぇ。意地見せろ!逆転すんぞ!」

「しゃあぁ‼︎」

攻撃は打順良く3番の佐渡さんからだ。ベンチから身を乗り出して声を出す。初球、いきなり快音が球場に響いた。ボールはライトの頭を超えフェンスに直撃した。佐渡さんが二塁を蹴る。三塁に向かって頭から突っ込んだ。

「セーフ!」

「らぁぁ‼︎」

佐渡さんがベンチに向かって拳を突き上げた。手を叩く。いける。ベンチが一気に活気付いた。続く4番の金田さんはカーブを狙い打った。ボールがセンターに転がる。佐渡さんが悠々と帰ってくる。一点返した。佐渡さんがハイタッチしてくる。心臓がどんどん高鳴っていく。送りバントで1アウトランナー2塁。チャンスを広げた。

「空井!」

河野先生に呼ばれた。

「8番の田村のとこ、いくぞ」

体が強張っていくのがわかった。その時、打球音がした。ショートゴロ、ランナー進めず。2アウト。あと一つで試合終了。俺はネクストバッターサークルに入る。色々な音が耳に入る。その音に合わせて心臓が跳ねる。このまま終わるわけにはいかない、という気持ちと裏腹に、回ってこないで欲しい、と思ってる自分もいた。7番の夏目さんが粘っている。ツースリーになった。相手ピッチャーが投げる瞬間、思わず目をつぶった。

「ボールフォア!」

歓声が聞こえた。俺に回ってきた。


まず始めに、遅くなって申し訳ありません!


学校のテストがあって大変だったんです…

結果は聞かないでください…


さて夏大が始まりました。


思いのほか自分の中でヒートアップしてしまって書き切りませんでした…


次回も青弥の回にするのでよろしくお願いします!


では!

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