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届け物は優勝杯  作者: 新井 富雄
第12章 堕天使の翼
52/73

―46―

「そろそろ、命令が出るんじゃないのかな?どう思う?サエは……」

 ダブルウィングスターファイターのコックピットで、ウミがサエに訊ねる。

「あたしたちに作戦の決定権はないから……あたしたちは、Zカスタムの現状と、あの3人のメンタル面の調査結果は、伝えたんだから……もう、気にするところはないよ」

「サエは、イチロウさんのこと、どう思う?」

「どうって?」

「サエの好きなタイプの男の人だよね」

「まぁね」

「罠にかけるのは、気が進まないんじゃない?」

「まぁね」

「一緒にゲームしたいって言っていたのは、サエの本音だよね」

「うん、まぁね」

「でも……命令とあれば、しがない会社勤めの身としては、やるしかないか」

「まぁ、命令無視でクビになってもさ……その時は、他の会社で雇って貰えばいいんだけど、GD21の開発は、ずっとやっていきたいから……今回も、うまくやるつもりだよ」

 サエは、寂しげな表情を浮かべながら、相棒のウミの顔をしっかりと見据える。

「あたしも、サエとは、ずっと一緒に働きたいって思ってる」

「知ってるよ」

『ウミ、サエ……聞こえてるか?』

「聞こえてるよ……」

 メインメカニック担当のレイキ・スティングボードの声が、ウミたちが操縦するダブルウィングスターファイターのコックピットに届き、ウミが、その問いに即答する。

『とりあえず、3周目は、このままだ』

「とりあえずか……ここは、ガチで運だめしってことね……了解!!」

『そして、4周目と5周目でのプログラムパターンを、今から、送る……これが、今回、ウイングチームが、太陽系レースをコントロールするための最終プランとなる。

 いつものように、完全遂行することを望む……以上だ』

「了解!!つまり、いつも通りってことね」

『そうだ……君たちが、うまくやってくれれば、ソーサラーの連中が何を言おうが、関係ない』

「不正ではなく、ゲームシナリオコントロールですもんね」

『君たちの活躍がなければ、この太陽系レースをゲーム化することはできなかった……太陽系レースを、より面白く、よりスリリングにするためのプランだと解釈してほしい』

「命令には従いますが、イチロウさんをいじめることが、レースを面白くすることに繋がるとは思えないんですけどね」

 スティングボードから連絡された、命令指示書にざっと目を通したサエが、半分がっかりした口調で、誰にいうともなく、ため息交じりに呟く。

『場は、平たくしなければ……が、ウイングチームの方針だからな』

「レースと麻雀を一緒にするのは、どうかと思いますけどね」

 サエは、不満げな顔のまま、それでも特に抗議口調ではなく、やっぱり、さびしそうに呟く。

「場を平たく……というのが、この結論ですか?」

 ウミも、命令指示書に眼を通して、驚きの口調でスティングボードに問いかける。

「作戦目的は、わかりましたよ」

『では、君たちも、このレース、しっかりと楽しんでくれ』

「無茶な作戦で、あたしたちのモチベーションが下がることは計算されてないんですか?」

『一応、それも、織り込み済みのはずだ……この作戦は、【ルージュ・ダウン・オペレーション】と名付けられた。検討を祈る』

 そこで、スティングボードからの通信は、あっさりと途切れた。

「織り込み済みだってさ……」

「ソーサラーに迷惑を掛けないっていうところが、この作戦のポイントかぁ」

「【ルージュ・ダウン】だって……思いっきり、ハルナさん狙いってことよね」

「露骨過ぎて、文句を言う気力もないよ」

「場を平たく……が、必ずしも、ゲームを楽しむ要素になるとは限らないのにね」

「あたしは、場を平たくするより、無双系で、強者が弱者をなぎ倒す爽快感のほうが好きなんだけど」

「まぁ、やるっきゃないでしょ」


 一方、そのウイングチームの不正を暴こうと息巻いた形となったソーサラーチームの、チームパドックでは、ここまでのウイングチームの動きに、それらしい気配がないことを、いぶかしんではいた。

実際には、1周目に出題された問題自体が、ウイングチームにより作為的に作られたものであったわけであるが、ソーサラーチームは、全くと言っていいほど、そのことには気付いていない。

「とりあえず、コックピットに不正の動きがないことを監視するため、フライングソーサ―ホウキボシを、ダブルウィングスターファイターに貼りつけるように指示を出しています……

 ちょうど今、コックピットとパドックの間で、何らかのやりとりがあったようだと、連絡は入ってきています」

「やりとりの内容は、わからないか?」

「さすがに、あの高速で飛行するクルーザー間で、そこまでは……」

「だろうな……」

 パドックのパイロットとの通信が唯一許されているコントロールルームから出てきたメインメカニックのリューイ・スミノエから報告を受け取った、パドックスタッフたちは、実際には、不正を暴く準備など全くないこと……というか、できないことを熟知してはいたのだ……

それほど、ウイングチームが、毎回企てる作戦は、不正の足のつきにくいもので、状況証拠はたっぷりありながら、物的証拠は、まったく存在しない…

例え、相当なプログラマー集団を持ってしても、絶対に暴くことなど不可能なほど、毎回毎回、巧妙かつ大胆な作戦であったからだ。

「それよりも、今回は、問題のレベル…難易度が、かなり難しく設定されています。シュンとクラマには、問題の解答に専念するよう、指示を出したいのですが……」

「わかった、そう指示を出してやってくれ」

「ありがとうございます」

 リューイ・スミノエは、頭を下げると、コントロールルームに戻って行った。

「シュン……クラマ、とりあえず、ダブルウイングスターファイターの監視は、今のところ行う必要はない……ポジション取りは、お前たちに任せる…問題解答に専念してくれ」

『わかりました』

 メインパイロット…シュン・フジミダイから明るい返事が返ってくる。

「スパイ行為みたいな真似は、お前たちも気が進まなかっただろう……これまで通り、ウイングチームへの威嚇は続けるが、それは、こちらサイドでなんとかする」

『ありがたいっすよ……あんまり、お子様の監視してても、ビジュアル的に、イマイチ感情がはじけないもんで……これで、ゆっくりとハルナちゃんの表情を拝むことができるってもんだ……』

 クラマ・マチムラの軽い、ややはじけたような台詞がスミノエに伝わる。

「お前も、あのカドクラの娘が好きだったりするのか?」

『もちろんっすよ……スミノエさんも、彼女のブログを読んでみるといいっす』

「今度、ゆっくり読んでみるよ」

『クラマで……コメント残しているのが、オレっすから……あと、シキマって奴のコメントは、オールスキップでノープロブレムっす……奴は、サブマリン・チームのナビゲータのシキって奴なんで、敵っすから』

「わかった……クラマとシキマのコメントを読んでおけってことだな……了解だ」

『ありがたいっす……さすが、スミノエさん、若い連中の操縦うまいっすね』

「そんなつもりはない……仲間でいたいと思ってるだけだ」

『じゃ、こっちは不正だなんだってことはなしで、自由気ままにやっていいわけっすね』

「そうだ……必ず、今回は優勝してくれよ」

『わかってますって……このレースで優勝すれば、あのオータチームのカゲヤマだって、女にモテモテになれるんですから……頑張るに決まってるじゃないっすか』

「動機は不純だが、頑張ってくれれば、それでいいよ」

『スミノエさん……女にモテたくて、こういうレースに出る奴のほうが、純粋だと思うっすよ』

『そうですよ……多かれ少なかれ、好きな女に、カッコいい姿を見せたいって、普通の男なら、そう思ってるはずですよ』

 シュン・フジミダイも、クラマ・マチムラの言葉に同意する。

『じゃ、次の問題ゲットしてきます。今まで通り、サポートをよろしくお願いしますよ』

「言われるまでもない……クイズの解答検索は、任せてくれていい……超難問以外は、完璧に回答できるデータベースの用意は、しっかりできているからな」

『ハズレを1個引いちまったのは、カッコ悪かったっす……もう、絶対、引かないっすよ』

「1周で1個なら許容範囲だ」

『ちょっと、ハルナちゃんの顔見に行っていいっすか?』

「ここからのライン取りは任せる……クイズは、こっちに任せてくれ」

『ありがたいっす。行ってきまっす』


 ソーサラーチームの機体……

ダブルウイングスターファイター監視の任から解放されたフライングソーサーホウキボシは、少しスピードを緩めた。

ここまで、ウイングチームが、1周目に先頭位置をキープしてから、ずっと、オータチームの後ろあたりのトップ集団を形成していたため、ソーサラーチームも、そのトップ集団チームに、監視のため混じっていた。

イチロウの事情で、後方待機をしているZカスタム……つまり、ハルナの姿が見える場所に近づくためには、減速して近づく必要があったからだ。


『おや……ソーサラーチームが、減速しましたね』

『マウントフジ・クラマも、よくピンクルージュのブログにコメント残してますからね……顔でも見たくなったんじゃないでしょうか』

 フルダチの実況にユーコが、すかさずコメントを返す。

『そういう理由ですか?』

『他に減速する理由ないでしょ……見てればわかりますよ』


「ユーコちゃん、鋭いな」

「ユーコちゃんは、彼氏がいるから、とりあえず、恋人候補からは除外してるんだけど、俺のコメント読んでくれているのかぁ……」

「何、にやけてるんだよ」

「ユーコちゃんも悪くないなって……」

「お前を、相手にするわけないだろ」

「わかってるけどさ」

 フライングソーサ―ホウキボシの中で、そんな会話が交わされている間にも、クイズセッションは、着々と進行していった。


3周目にして4つめのハズレを引いたオータチームのコックピットでは、あからさまに、シマコが不機嫌な表情になっていた。

「信じられないよ……絶対、今回、わたしたちが、ウイングチームの標的になってるとしか思えない」

「状況証拠だけで、不正を訴えることはできないだろう」

「そうだけど、このまま、あと2周、2回ずつハズレだったりすれば、それだけでマイナス800ポイントになるんだよ」

「シマコのそういう表情は、嫌いじゃないけどな」

 シャドーマスタースペシャルF―14トムキャットの複座は、前後になっているため、

後部シートに乗っているシマコ・ハセミの表情を見るために、後ろを振り返ったモンド・カゲヤマが、口辺に笑みを浮かべたまま、さらりと言う。

「ずっと、わたしが仏頂面をしてても、その台詞が言えるなら、かまわないけどね」

「まぁ、800ポイントくらいなら、俺の腕で、挽回できるから、そのあたりは、心配しなくてもいいさ……ハズレは、シマコの実力とは関係ないわけだし、落ち込むなよ」

「エリナちゃんとミナトちゃんに振られた男に、落ち込むなって言われてもねぇ……

 それに、800ポイントの穴埋めするのに、どれだけエネルギーとモチベーションが必要か……モンドは、軽く考え過ぎ……ここでは100ポイントだって取りこぼせないって、わかってるよね」

「さすがに、俺も、昨日はへこんだけどさ…それを、レースまで引きずるほど、若いつもりはないんだけどな」

「でも、頭にくるでしょ……がきんちょ二人にいいように踊らされて……1周目の問題だって、どう考えても、ルーパスのイチロウくんの趣味……好みに合わせてあったしさ」

「がきんちょ二人って……」

「言葉が雑になってるのは、自分でもわかってるよ……あ~ほんとうに腹が立つ!!」

「ちょうど、真後ろを飛んでるようだし、ぶつけてみるか?」

「ナイス・アイディアって言いたいところだけど……それを、クイズセッションでやったら、400ポイントペナルティだって、わかって言ってるよね」

「まぁ、ゲートセッションなら、体当たりOKだから、その鬱憤は、ゲートセッションで晴らしてやろうぜ」

「それも、いいアイディアだけど、わたしたちのスピードについてこれないでしょ……あの派手なウイングパーツの機体じゃ……」

「周回遅れにして、後ろからぶつけてやるか」

「おぉ……たまには好い事言うじゃないの……そのアイディア100%採用!!わたしたちを標的にしたこと、一生後悔させてあげようね」

「レギュラー組のトップを敵に回したら、お仕置きされちゃうって、あの、お子様たちに、じっくりわからせてやらなくちゃな」

「でもね……マイナス800ポイントは、正直、洒落にならないと思う」

「きついっちゃきついかな?」

「ルーパスチームの機体を、モンドもしっかり見てるよね……」

「まぁな……」

「イコールコンディションでも、あの機体とバトルするのは、ちょっと骨が折れるだろうな」

「エリナちゃんが、徹夜で、バランスタイプに直したって事実もあるし、スコアイーブンだったら、きっと、そのアドバンテージを縮めるのは、大変な作業になると思うよ」

「やっぱり、今のうちに威嚇しておくか?」

「モンドは、どう思う?あのZカスタム……」

「エリナの機体改造の技術は、はっきり言って侮れない……しかも、自分勝手な改造ではなく、このF―14も、そうだけど、誰でも、メンテナンスできるくらい、素直な作り方をしてくれる」

「だから、惚れちゃったわけだ」

「エリナに、少しでも、その気があったら、間違いなくプロポーズしていた」

「否定しないんだね」

「シマコは、知ってるだろう?俺が、モテるのは?」

「まぁね、職場は一緒だし」

「全部、断るってのも、結構自分のダメージでかいんだぜ……心優しい男としてはさ」

「そういう嘘をついてるから、告白(こく)ってきた女の子が逃げていくって、わかってる?」

「嘘なんか言ってないぜ……」

「あのね……心優しいという要素が、モンドの特性に、全くないんだって……

 自覚ないのが最悪……」

「自分のパートナーに、そこまで言うか?」

「心優しいっていうのは、ルーパスのイチロウくんみたいに、例え敵であっても、殺さずの(ヤイバ)の精神を貫く男の子が使っていい言葉だよ……モンドのは、単なるスケベ心じゃないの」

「く……」

「ほら、言い返せないじゃない」



「ハズレが1枚来ちゃったね……どうする?」

 サットンサービスチームのキサキが、メインパイロットのチアキに、ハズレと大書された画面を指差す。

「まぁ、ケアレスミスで、1問落としたと思えば、腹も立たないんじゃないかな?」

「この、でっかいハズレが……むかつくよね」

「ふぅ……引いちゃったものはしょうがないか……でも、この3周目までで、ハズレが出ていないのは……例のウイングチームと、ルーパスチームだけってわけね」

「そういうことになるか……」

「お姉ちゃんは、どう思う?」

『例の不正疑惑のことは、どうだっていいよ……チアキとキサキ、こんなクイズセッションでの点数なんか、とりあえず、無視していい……とにかく、今は、この、大暴れするプラチナリリィの制御を、なんとかしないと、この次のゲートセッションで、体当たり食らったら、全部、はじき飛ばされてしまう……耐えられないよ』

「そうだよね……エリナちゃんは、自分のところの機体を直すのに精一杯で、あたしたちの機体をいじったことなんか、とっくの昔に忘れちゃってるみたいだし」

「あそこまで、ムキになってスピードアップセッティングにしなくても良かったよね」

『あたしは、あのスプリント、楽しかったよ』

 クルミは、いつになく穏やかな口調で、チアキとキサキの二人を諭すように、呟いた。

「……」

 少しの()が空いた後で、チアキが口を開く。

「そうだね……つまんないレースをするより、よっぽど楽しかった」

『だったら、つべこべ言わずに、ちゃんと、このままで、バトルできるように、しっかり慣れることだね……体当たりをしないで、勝てるほど、この後のゲートセッションは甘くないよ』

「はいはい……」

「体当たりの練習だったら、実際、やってみないと練習にならないよね」

「ねぇ、お姉ちゃん……どうせ、このクイズセッション捨てるつもりなら、ペナルティ覚悟で、ぶつけちゃってもいいかな?」

 チアキが、悪戯心(いたずらごころ)満載のうきうきした調子で、姉のクルミに訊ねてみる。

『いいよ……出来る限り、バレないように……それと練習台は、ジュピターアイランドか、ウイングチーム……』

「話がわかるじゃない……さすが、あたしのお姉ちゃんだけあるね」

『ジュピターの連中なら、腕は確かだ……絶対、抗議したりしないだろう……それと、ウイングチームのあの、ヒラヒラのウイングは、ハナッから気に食わなかったんだ。叩き折るくらいの勢いで、やっちまえばいいよ。あいつら相手なら、他のチームは、文句言わないだろう』

「だよね……」

「まぁ、オータ・コートがあるから、実際に接触したりすることはないはずだけど……」

「それでも、クイズセ

ッションでの体当たりは、御法度なんだから……コース監視の連中に見つかったら、400ポイントのペナルティだ……勝つためには」

「そう……上手くやるしかない」

「そうと決まれば……」

「仕掛けるのは、とりあえず、難問が揃ってる第5周……そこまでは、しっかり、じっくり、おとなしくしておこう」

「そうだね、4周目で疑惑を持たれたら、5周目で監視がきつくなるけど、5周めなら、後がないから、確認のしようがなくなるしね」

『バレずに済めば、それに越したことはない……解説のユーコ・ハットリだって言っていたじゃないか……ファウルギリギリのプレイが、好きだってさ……あの子に楽しんでもらうためにも、そのギリギリってやつを、見せつけてやろうじゃないか』

 クルミは、コントロールルームの映像モニタの中央で、そう言い放って拳を固めた。


『でも……どの問題もやっぱり難しいですね……もう、サッカーの問題も出なくなってしまったから、あたしが知ってる問題もないし……ほんとうに、これ、視聴者は、楽しめてるのかな?』

『ハットリさん……それは、請負いますよ……視聴者の方は、絶対楽しんでいます。どの問題も、結構意外性のある答えだったりしますので、【へぇ】と感じながら、観てる人もいますし、ウイングチームではないですが、問題予測のサイトなどもあって、問題募集をやっていたりします。どこも、盛り上がっていますよ』

『そうなんですね。なら、良かった』

『そういえば、ハットリさんの言ったこと、正しかったようですね……あの後、ソーサラーチームの機体は、ルーパスチームの位置まで下がって、付かず離れずのようです』

『マウントフジ・クラマは、わたしのブログにも、よくコメント残してくれますから……もっとも、コメントのほとんどが、ピンクルージュのことなので、わたしとしては、複雑な思いで、コメントを返しています……まぁ、悪気はないんでしょうが、サッカー選手のブログに、ホテル屋の娘の紹介をするのは、どうかなって思いますけどね』

『それって、遠まわしに、迷惑だって言ってるのと同じですよね』

『あ……そうですか……そうなっちゃうか……ん~、そうですね……クラマさん、迷惑なので、わたしのブログにハルナのこと、書かないでくださいね……コメント返しで、困ってしまいますので』


「もう……ユーコったら……イチロウも、そこで笑っていないで」

「いや……やばい、俺、ユーコちゃんのこと、半分、諦めていたけど……今のコメント聞いて、エイクと争ってもいいって思ったよ」

「冗談でも、そういうこと言わないでよ」

「冗談じゃないから言えるんだよ」

「ユーコは、カナエさんと、そっくりなんでしょ……イチロウが、それを本気で言ったら、セイラが傷付くよ」

「悪い……」

「とりあえず、ここまでは、難問は出てないし、当然だけど、ハズレもなし……ハズレ回数が多いのは、オータチームの4回……今、この時点でのポイントでは、オータチームが、2400ポイント、ハルナたちは、3000ポイント……ウイングも、きっと3000ポイント……」

「ウイングチームは、ゲートセッションでの成績は、あまり良くないよな」

「今までと、今回では作戦が違っているかもしれないでしょ……」

「それって……」

「ブシテレビチームが、いつも8位なのは、知ってるよね……そして、ウイングチームの指定席と呼ばれるのが、4位と5位……ブシテレビチームは、レース全体の平均点を狙ってるという噂があるし、ハルナは、きっと、その噂は事実なんだと思う……そして、同じように、ウイングチームは、狙って、上位8チームの平均点を狙っている」

「平均点を狙ってる?」

「そう……敢えて、実力を隠して平均点で終わらせることができる」

「常にプラマイゼロを狙ってるっていうこと……か」

「わかる?このことの意味?」

「いつでも、優勝なんかできるぞって、その意思表示ってことか?」

「ハルナは、そう思ってるんだけどね」


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