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「ハルナと知り合えて。よかったよ・・・別に、エイクとユーコと話ができたからってわけじゃなくってね。
隣で、エリナも、そう言ってるから」
「エリナ様、そこにいるんですか?」
ハルナが、眼を輝かせて反応する。
「ついさっきまで、一人寂しくクルミさん達の機体をいじってたんだけど・・・『ふぅう、大満足』とか言って、ついさっき。あたしの部屋に帰ってきたよ」
「一人寂しくですか・・・?
エリナ様可哀想すぎます・・・ミリー、エリナ様にマイク渡せますか?」
「エリナは・・・なんか、大満足とか言って入ってきた割には、不貞腐れてるから、たぶん、話しかけても答えてくれないと思うよ」
「エリナ様・・・?」
確かに、エリナからの返事はない。
「返事がない・・・ただの屍のようだ」
イチロウが呟く。
「屍じゃないもん!!」
ミリーのキャラの口から、聞き覚えのあるエリナの声が聞こえた。
「だいたい、なによ・・・クルミさんまで混じって・・・あたしだけ仲間はずれにして・・・」
「だって、エリナはゲームするのは嫌いなんだろう」
「ゲームは嫌いっていうか・・・だって、だって、みんな、なんで、そんなに楽しそうなのよ・・・ずるいじゃない」
「つまり、一緒にやる仲間に恵まれなかっただけなんだ・・・今度、エリナも一緒にやろうぜ」
ほんの少しだけ沈黙があった後で、かすかな声で、エリナが返事をする。
「イチロウと一緒ならやってもいい・・・」
「なんで、俺と一緒ならなんだ・・・」
「だって、他の人、レベル高すぎ・・・今から始めたって、絶対追いつけない」
「エリナにしては、素直な理由だ・・・」
「そういう言い方は、失礼だと思うよ。それじゃ、いつも、あたしが、ひねくれてるみたいじゃない」
「ひねくれてるんじゃなくて、負けず嫌いだって言いたかったんだけどな」
「だって、負けるの・・・大っきらいなんだもの・・・しょうがないじゃない」
「エリナ様・・・今度のレース、絶対勝ちましょう」
「ハルナさん・・・今、イチロウと一緒のお部屋なの?」
「そうだよ・・・もちろん、セイラたちも一緒だけど・・・」
「ほんとに?」
「あ・・・でも、セイラたちは別部屋・・・というか隣部屋・・・この部屋は、全裸のイチロウとハルナだけかな」
「ハルナ・・・何、嘘言ってるんだ」
「エリナ様・・・?嘘です嘘です・・・6人とも、一緒の、お部屋です・・・イチロウの慌てる顔を見たかったから・・・あれ?もしかして、エリナ様も、ドキっとしちゃいましたか?」
「ノーコメントです」
「イチロウが、14になったら洞窟入ろうね・・・エリナ様も、そのまま、戦闘に参加できますか?」
「あたしには無理・・・ミリーに代わります」
「ということになりましたので、ミリーが復活です・・・ミッション進めようか・・・みんな」
「そうだね」
それから、10分ほどで、イチロウはレベル14になり、洞窟の中のブルーリザードデーモンを何度狩り尽くしても、中々ドロップしなかった『ドラゴンの餌』も、小一時間程度で、無事にイチロウのアイテムリストに登録を完了させることに成功。
一同は、その勢いのまま、残り二つのEX属性のアイテムも入手することに成功し、ようやく、『神々の庭園』を目指す。
「さぁて、いよいよこれから、イチロウの庭園デビューだね」
ミユイが楽しそうにイチロウに話しかける。
「遠いのか?そこって」
「遠くはないんだけど・・・時間はかかるかも・・・敵が多いから・・・しかも、全てのモンスターがアクティブで、知覚遮断魔法もアイテムも効かなかったりするんだよね」
ミユイが説明してくれる。
知覚遮断魔法というのは、プレイヤーを発見すると無条件で襲い掛かってくるアクティブモンスターから発見されることを避けるために、プレイヤーキャラを透明化させたり、足音を消したりする魔法のことである。
「心配することないって・・・これだけ、メンバーが揃ってれば、たぶん楽勝だよ」
セイラが、明るく言ってのける。
「そっか・・・セイラさんって吟遊詩人だっけ・・・」
「そうだよ・・・魔法もアイテムも効かないけど、あの子達、歌には滅法弱くってね・・・歌を歌うと近寄って来なくなるから・・・
こんな時しか出番のない吟遊詩人ですが、頼りにしてくださいね」
なるほど、いざ、足を踏み入れてみると神々の庭園への侵入を阻むために配置されたモンスター達であるはずなのに、セイラが歌う歌の効果で、全て眠ったり、麻痺したりして、全く襲い掛かってくる気配がない。
「これって、裏技ってわけじゃないんだよな」
イチロウが、素直な疑問を口にしてみる。
「このゲーム・・・吟遊詩人は、けっこう優遇されてるから・・・それに、歌を習得するのって、結構、難易度高いミッションやクエストなので、そのご褒美的な意味もあるんだと思うよ」
「あとね・・・」
セイラの言葉を引き継ぐように、ハルナが説明を加える。
「歌の効果は、マイクを通して伝わるものなの・・・コマンド入力の後、セイラが歌ってるでしょ」
「ああ・・・まさか・・・」
「そう・・・実際に口ずさんでる歌のクオリティで、歌の効果が変化するんだから・・・それだけ、セイラの歌が凄いってことなんだよ」
ハルナの説明で、セイラが照れたように下を見つめてしまう。
「あたしには、他に取り得がないから・・・イチロウくんの役に立ててよかったよ」
戦う気満々のエイクやユーコではあったが、ここは、セイラに花を持たせることで納得したようで、戦いを避けながら、粛々と、目的地である『神々の庭園』を目指す。
そのエリアを無傷で通り抜け、庭園に着いた一行は、ミリーの案内で、スムーズに『ドラゴンライド・ライセンス発行所』に辿り着き、バトル・フィールドへ侵入するためのキー・アイテムの入手に成功した。
「バトル・フィールドで勝利すれば、自動的にここに戻って来れるからね・・・じゃ、ハルナとミユイ・・・テレポートをお願いします」
ミリーの指示に従い、ハルナとミユイが、それぞれのパーティを、テレポートの魔法で、目的のバトル・フィールド入り口となる遺跡まで移動させる。
一瞬で、街の風景が、白い色の遺跡の壁に変化する。
「中に入ったら、慎重にお願いします」
「うん・・・気を抜くと、マジでやられるから・・・」
「一応、パーティ・レベルと同等程度にデーモンの戦闘パラメタも調整されるけど、バトル・フィールド直前までのデーモンは、結構強敵ばかりだからね・・・特に、中ボスのダークパンサーデーモンが強敵だから、充分、気をつけてね」
「編成は、このままでOK?」
「編成は、問題ないけど・・・ミナトさん・・・良かったら、みんなの装備の強化と、食事の準備を、お願いしてもいいですか?」
「はい・・・喜んで・・・」
ミナトが、言うが早いか、イチロウに抱きついてくる。
「え・・・?」
あっという間に、イチロウの身につけているプレート製の鎧に黄金の刺繍のような細工が施されて、鎧の強度のパラメタが倍になる。
「『家政婦』の特殊技能の一つ・・・ゴールド・コーティングという装備強化です。1時間の効果しかないんですが、バトル・フィールドの戦闘終了までは、充分だと思います」 イチロウ以外のほかのメンバーも、みな、ミナトに抱きつかれた瞬間に、それぞれの装備に、それぞれの強化が施されていく。
セイラが持っていたクラリネットは、なぜか、ミナトの特殊技能のせいで、トランペットのように姿形を変えられてしまって、音質も変化してしまった。
「とっても、微妙です・・・」
セイラが、残念な形に変化してしまった愛用のアイテムを寂しく見詰めるのが、少し可哀想だとイチロウは思った。それほど、セイラの顔も残念に変化していたからだ。
ミナトが合成で作成した食事も、全員がしっかりと口にして、基礎パラメタの底上げについては、万全な状態となり、遺跡の中に、全員が足を踏み入れる。
遺跡の入り口で、眼を光らせている二匹の門番役のデーモンの一匹に、エイクが、とび蹴りを仕掛けた瞬間から、戦闘が開始される。
とび蹴り一発で、トドメを刺されなかった門番のデーモンは、すかさず、ホイッスルを使用して、遺跡内に響き渡る大きな音を発生させる。そのホイッスルに反応した下級デーモンが、10匹ほど、追加で襲い掛かってくる。
「とりあえず・・・」
と呟いたセイラが、そのうちの何匹かをトランペットの効果で麻痺させる。
麻痺しないで、突入してくるデーモンに、ミリーがスナイパービームライフルを発射する。
このミリーの攻撃は、足止めとダメージを与えることが目的である。
スナイパービームライフルで貫かれたデーモンは、後方に弾かれ、文字通り、足が止まる。
エイクは、最初にとび蹴りをかました門番デーモンを集中攻撃する。まずは、得意の蹴撃を、顔・胸・足に集中させる。
「こいつは、俺に任せて、イチロウは、もう一匹を頼む」
ほとんど使用されていない三節棍を右手で振り回しながら、エイクがイチロウに指示を出す。
イチロウも、両手斧を構えなおして、歌を歌い続けるセイラに襲いかかろうとするもう一匹の門番デーモンに、恫喝するような挑発アビリティを叩きつける。
イチロウの挑発に反応した、もう一匹の門番デーモンは、三叉の刃を持つトライデント型の槍を繰り出してくる。
両手斧を主武器としているため、イチロウは盾を使用することができない。
そのため、両手斧を真横に構えなおし、デーモンの一撃を受け止める。
火花が飛び散り、トライデントの直撃はかろうじて避けることができたが、ノーダメージという訳にはいかなかった。
左肩に軽傷を負ったイチロウの傷に、ミユイが、治癒のための魔法を使用する。
わずかに破壊された肩の甲冑と同時に、肩の傷も、またたく間に元に戻る。
「そいつは、お前に任せたからな!!しっかりトドメを刺してくれよ」
エイクが、三節棍を、相手デーモンの頭に叩きつけながら、イチロウを鼓舞する。
「了解!!そっちこそ、しっかり、仕留めてくれよ」
「イチロウ・・・1分30秒以内で倒してよね。この子たち、食い止めるのは、それが限界だからね・・・」
ミリーが、スナイパービームライフルの直接攻撃で、足止めしているデーモンも、パーティが戦闘しているエリアに、少しずつだが、確実に近づいてきている。
「わかったよ!!」
イチロウは、両手斧を上段から思いっきり振り下ろす。
その斧の一撃で、門番デーモンの冑に亀裂が走り、相手が怯むのが、察せられた。クリティカルヒットで、ダメージが倍加されたのだ。
「よっしゃ!!」
クリティカルヒットのメッセージが宙に舞ったことで、自然とイチロウの口から、気合の入った声が迸り出る。
「その調子!!」
ミユイが、攻撃魔法を繰り出しながら、イチロウに声をかける。
「ねぇ・・・マジック・ストライクやってみようよ」
ミユイが、提案する。
マジック・ストライクとは、前衛の必殺技のタイミングに合わせて、攻撃魔法を撃ち込むことで、ボーナスダメージを敵に対して与えることができるものである。
前衛の必殺技ゲージが一定以上のポイントに達すると、その武器の種類ごとに設定されている必殺技を繰り出すことができ、そのヒットするタイミングと魔法攻撃の着弾のタイミングを一致させることで、マジック・ストライクは効果が現れるのである。
「あたしも参加していいかな?」
ミリーと一緒に足止め役をやっていたクルミが、陽気な声でミユイに話しかける。
「いいよ・・・イチロウに合わせてね」
「OK」
敵の突きを避けられなかったイチロウだったが、その反撃攻撃で、敵にダメージを与えることに成功した瞬間、必殺技ゲージが発動可能なポイントに達した。
「行くよ!!」
ミユイが叫び、魔法詠唱を開始する。
と同時に、クルミが、弓を極限まで引き絞る。クルミが温存していた必殺技ゲージは、実はマックス状態だったのだ。
「ダブル・ストライク行けそう?」
「イチロウくん次第だね」
イチロウが、両手斧を振りかぶる。
「アックス・ボム!!」
気合一閃、狙いすませたイチロウの斧が、虹色の弧を描き、敵デーモンの肩口当たりから袈裟懸けに振り下ろされる。
その瞬間、科学者固有魔法のアトミック・バーストと、狩人の必殺技ホーク・アイが敵を貫く・・・・
激しく炸裂した光の渦の中で、デーモンが一瞬のうちに消滅する。
画面に表示された『マジック・ダブル・ストライク』の文字が、光の渦の中にくっきりと浮かび上がる。
「ナイス・クルミ!!」
「サンキュ・・・」
隣で戦っていた、エイクの必殺技『天空からの踵落とし』が、ほぼ同時に、もう一匹の門番デーモンにトドメを刺した。
「イチロウ・・・派手過ぎだろ」
「まぁな・・・でも、クルミさん、巧過ぎ」
「ミリー・・・そっち行くよ」
「うん・・・しっかり削っといたからね・・・トドメは、全部イチロウに任せるから・・・仕留め損なったりしないでよ」
「ここでも、レベル上げか?」
「もちろん!!策士ミリーの計算に間違いないんだからね。しっかり付いてきてよ」
「コゼットで、射撃してる時と、テンション違い過ぎないか?」
コゼットとは、ルーパス号に搭載された火器ユニット結合式の支援ミニ・クルーザーであり、ハルナとの戦闘の時には、イチロウが、Zカスタムに乗り、ミリーが、そのコゼットに乗りこんで応戦し、撃退することに成功している。
ミリーのライフルで削られたデーモン騎士たちは、それぞれ、いい具合に体力ゲージを削られ、どれも4分の1程度を残す状態となっていた。
「イチロウのためだからね・・・テンションマックスになるのは、しょうがないでしょ。
なんか、突然ライバル増えちゃって困ってるけど・・・イチロウの未来の花嫁は、あたしなんだから・・・約束・・・忘れちゃイヤだよ」
「約束って・・・そんな約束してないだろ・・・それに、今そこに、エリナがいるんじゃないのか?いいのか?そんなこと言っても」
「そっちだって、ハルナとくっついたままなんでしょ?」
(ミリーちゃんは強敵だね・・・あの子が、本気で恋のライバルになったりしたらさ・・・ハルナは勝てる気がしないよ・・・)
ハルナが、こっそりと、そして無邪気に笑う。
「ミリー・・・」
「なぁに?」
「次の日曜日・・・エイクとユーコをルーパスに招待するよ」
「ほんとに?」
ミリーの操るキャラクターの周りに無数のハートマークが舞い上がる。
「本人たちの了解、得てないよね」
ハルナの突っ込みの中で、ミリーのハートマークに呼応するように、ユーコとエイクの周りにも、ハートマークが乱舞する。
「ただし・・・優勝するのが条件だけどね」
ユーコが、全員に聞こえるように、はっきりと宣言する。
セイラが麻痺させたデーモンも、その麻痺効果が消えた者から、次々に、パーティに襲いかかってくる。
「後続は、あたしが、引き受けるから、まず、そっちの連中、倒しちゃってね」
ミリーが、ライフルによるピンポイントシュートをする手を停めることなく、前衛部隊に、指示を出す。
「ミリー・・・眠くないのか?」
イチロウが訊ねる。
「ゲーマー舐めないでよ。三日三晩徹夜だろうが、体力はマックスを維持できるんだからね」
「ミリーちゃん・・・そっちのパーティに移ってもいいかな・・・あたし」
おずおずと、セイラがミリーに伺いを立てる。
「セイラさん?」
「うん・・・ミリーちゃんとクルミさんに、プレリュードを聞かせたいんだ」
このゲームのルールでは、混合パーティのアライアンス状態でも、同じ敵をターゲットにすることはできるのだが、パーティメンバーへの歌の効果は、同一のパーティでないと与えることができない。
セイラが口にした『プレリュード』とは、遠隔攻撃武器の攻撃間隔を短縮することができる歌のことである。
遠くの敵に対して、第一射を与えることが基本となるGD21のパーティ戦闘においては、この歌の効果が有るのと無いのとでは、戦闘スピードが、全く違うものとなるのだ。
今回組まれた複合パーティ・・・アライアンスの中は二つのパーティで構成されているが、遠隔攻撃を得意する狩人と狙撃手が、自分のパーティ内にいないため、セイラ自身、ずっと気にしていたことを、今ようやく伝えることができたのである。
「エイクやユーコとは、いつも遊べるから、今は、ミリーちゃんと一緒に戦いたいの・・・足引っ張ることになったら悪いので、我慢してたんだけど・・・いいですか?」
「うん・・・ありがと、セイラ・・・さん」
ミリーは、既にハルナのパーティから抜けてフリーとなっているセイラを、自分のパーティに迎え入れた。
「これで、セイラさんとも一緒に戦えるね」
イチロウがとても、嬉しそうに歓迎する。
「セイラさんは、イチロウの為じゃなくて、あたしの為に来てくれたんだから・・・そうやって、鼻の下を2メートルも伸ばしてたらみっともないよ」
そのミリーの言葉を証明するように、横にいるハルナが、イチロウの鼻の先を、つんつんと突つく。
「残念、イチロウの鼻の下・・ただいま、3メートル50センチだよ」
ハルナが、ミリーに計測結果を申告する。
「もしかして、イチロウの中では、セイラさんが一番なの?」
プレリュードの効果で、今までの倍の数の射撃をこなしているミリーが、手を休めることなく、皮肉を言ってくる。
「ちなみに・・・セイラが入るまでは、イチロウの鼻の下・・・さっきまで推定3センチでした」
ハルナも悪乗りしてイチロウをからかう。
「イチロウくん、がんばろうね」
セイラの言葉に、イチロウが、さらに、にやけたようにみんなには見えた。そして、セイラの歌う『戦士への狂想曲』がイチロウに届く。
「トドメはよろしくね」
歌の効果を得たことで、確実にパワーアップした攻撃力を得た両手斧・・・イチロウは、その大きな斧を縦横無尽に振りまわす。
元々、ミリーのライフルで、大きく体力を削られていたデーモンたちの殆どは、クルミの射撃の後に振り下ろされるイチロウの斧の一撃で、体力をゼロにされていく。
そう・・・時折、織り交ぜる『アックス・ボム』と、それに合わせてミユイが放つ『アトミックバースト』の起こす光が炸裂する度に、確実に、敵の数が減らされていくのだ。
「ここを突破すると・・・中ボスエリアだからね」
ミリーが、扉の前に張り付いている敵に、ライフルの光を浴びせ、はじき飛ばしながら、全員に伝えた。
「セイラさんのプレリュード・・・攻撃間隔だけじゃなくって、攻撃力も上がっちゃうんだけど・・・裏技?」
「裏声・・・かも」
セイラが即答する。
「これって、ゲームバランス壊しちゃうね」
「やっぱり、みんなの足、引っ張っちゃってるかな?」
「ううん・・・この歌・・・最高・・・とっても気持ちいいよ」
(ミリーちゃんは、セイラのこと知らないのかな?)
ハルナが、イチロウに問いかける。
(そういえば、説明してないかも・・・)
「セイラさんは、本職が歌手なんだよ、ミリー」
イチロウが、セイラの正体をばらす。
「え?」
それまで、手を休めずにライフルを操っていたミリーが、射撃をやめ、呆けたような顔になる。
「セイラさんは、マリーメイヤ・セイラなんだ」
「嘘でしょ・・・エイクや、ユーコといい・・・マリーメイヤといい・・・なんで、そんな人が、イチロウと今、一緒にいるのよ」
「俺が、セイラさんに、CDもらった時の話・・・ミリーにしなかったっけ?」
「聞いてないよ・・・何?CDって?」
「エリナは、まだ寝てないよな?」
「うん・・・なんか、にこにこしながら、あたしのこと見てるよ」
「だったら、詳しいことは、エリナに聞いてくれ。とりあえず、先に進もう・・・そのうち、再出現するんだろう?・・・ここの敵ってさ」
そのエリアの最後の敵を倒したイチロウは、セイラとの経緯の説明をエリナに押し付けることに決めた。