表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/15

倭国乱の終焉

日向で覚醒したヒミコの噂は、燎原の火のごとく九州全土へと伝播した。当時、鉄器文化を背景に強大な軍事力を誇っていた北九州――筑紫、奴国、伊都国の王たちにとって、南から現れたこの「日の巫女」の存在は、当初は嘲笑の対象に過ぎなかった。

「日向の小娘が言霊一つで国を治めるなど、荒唐無稽な迷信に過ぎぬ」

大陸の王朝や公孫氏との交易で得た鉄の剣と盾を信奉する王たちは、鼻で笑い飛ばしていた。だが、彼らの元へヒミコの使者が到着したとき、空気は一変する。届けられたのは、一通の書状ではなく、一枚の**「曇りなき青銅鏡」**であった。

王がその鏡面を覗き込んだ瞬間、宮殿は凍りつくような沈黙に包まれた。鏡の中には、王にしか知り得ぬ「先代王の憤怒の形相」と、近未来に訪れるであろう「凄惨な敗北の光景」が、幽世の風景として生々しく映し出されたのである。

11. 奴国の門前における神蹟しんせき

北九州最大の勢力を誇った奴国の王は、疑念を払拭すべく大軍を率いて日向への侵攻を企てた。しかし、軍勢が国境の峠に差し掛かったその時、濃霧の中からヒミコがたった一人で姿を現した。

彼女は一切の言葉を発さず、ただ静かに天を指差した。

すると、白昼堂々、天空は急激に暗転し、太陽が欠け始めた。日食である。

「太陽を喰らう力……。これこそが、霊界を統べる鬼道の業か!」

漆黒の闇の中、ヒミコの肉体だけが青白い光を放ち、彼女の背後には、かつての戦乱で果てた数万の兵士たちの霊が、音もなく整列していた。

鉄の剣では決して届かぬ「神と死者の軍勢」を目の当たりにし、奴国王は落馬し、泥土に額を擦り付けて平伏した。物理的な武力が、人知を超えた神威に完敗した瞬間であった。

12. 「倭国大乱」の終焉

これを契機に、伊都国、末盧国、不弥国といった有力諸国の王たちは、競うように日向の西都原へと参内した。ヒミコは謁見の間にて、王たち一人ひとりに対し、深淵なる「霊視」を行った。

「そなたの国の土は疲弊している。霊界の龍脈が淀んでいる故だ。このことわりに従い耕せば、稲穂は再び蘇らん」

「そなたの家系に燻る争いの種は、先祖の怨念によるもの。この儀式を以て魂を清めるがよい」

王たちは、ヒミコが単なる掠奪者や支配者ではなく、国を根源から救済する「聖母」であることを悟った。彼らは自らの剣を差し出して臣従を誓い、代わりとして、彼女の霊威が宿った「神獣鏡しんじゅうきょう」を拝受した。これこそが、彼女の加護を受ける正統な支配者であることの証左となったのである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ