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苦痛世界の領主~少女育成記~  作者: 俊杰


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魔法巻物

「ふうっ」


大きな炎の塊が巻物から湧き出し、二つの死体に燃え移った。


炎は腐敗した鹿の死体をじりじりと焼いた。


だが…それだけだった。使い終わった巻物は魔法の輝きを失い、完全に尻拭き紙と化している。


格好いい特殊効果もなければ、竜種の狼が起こすような天地を覆す幽冥の炎もない。フィールドは、火吹き芸でも見せられているような気分だった。ガスボンベの爆発ですら、こちらの方がまだ迫力があると思うほどだ。


「十ゴールドを無駄にしたみたいだ」と、フィールドは遅ればせながら気づき、冷や汗が流れた。


魔法巻物のダメージは低いとはいえ、一階魔法巻物の市場価格はおよそ十五ゴールド。骨董品級の魔法巻物でも十ゴールドくらいはする。決して安いものではない。


アシュナは小さな舌先をちょっとだけ出して、嬉しそうに笑いながら言った。「どうして無駄なんですか?魔法巻物の威力が分かりましたよ。おっしゃった通り、実践こそが真の知恵です。それに、私も魔法巻物を見るのは初めてでした。面白かったです」


この小娘はよく気が利く。わざわざ僕に逃げ道を作ってくれるなんて。


「一度口にしただけなのに、よく覚えてたね」フィールドは彼女の前向きな態度に気分を明るくされ、微笑みながらアシュナの頭をぽんぽんと軽く叩いた。


箱の中には24枚の魔法巻物があった。フィールドが使った一枚を除けば、およそ230枚のゴールドに売れる見込みで、非常に豊かな収穫だった。


ゴミ拾いもなかなか面白いものだ、とフィールドは心の中で考えた。散歩に出かけたついでに大金を稼げるなんて。


北境の特殊な環境ゆえ、ここまで深く踏み込む冒険者はごく僅かだ。だから、良いものが残っていることも少なくない。


領地に戻ると、皆がフィールドの無事な姿を見て安堵の息をついた。


領主が万が一にも事故に遭えば、彼らはその日のうちに死の霧に殺されてしまうからだ。しかも、フィールド様はとても良いお方だ、と奴隷たちは思っていた。フィールド様がずっと領主でいてくれることを願う。腹八分目でも食べられれば、それはもう神様のような暮らしだ。


「わっ!ゴブリンの首だ!」見聞の広い自由民のドッグクロウが声を上げた。「大きな町でこの汚らわしい小さいのを見たことがあります。奴らはメスの豚とでも交わって、子ゴブリンをいっぱい生むらしいです」


「ああ、領地を襲ったのはこの怪物どもだ」フィールドはゴブリンの首を地面にぽいと投げ捨て、ハンカチを取り出して手を拭った。「もう亡くなった方々の仇は討った。女神の御許に戻れますように」


「領主様万歳!」


「領主様に感謝を!」


奴隷たちは感激に浸った。生命の権利を尊重される感覚はとても良かった。今夜は憎むべき怪物に殺される心配をしなくて済む。


フィールドの目的が人権にあるわけではないのは確かだ。彼は脅威を取り除き、奴隷たちがよく働けるようにするためだけに行動した。しかし、それは奴隷たちの感謝の気持ちを損なうものではなかった。普通の領主なら、奴隷の生死など気にも留めない。彼らが気にするのは、夜にリンゴが美味しいか、サクランボが美味しいか、そういうことだけだ。


「解散だ。休むがいい」フィールドも疲れていた。


ゴブリンの問題を片付けたフィールドは、手を叩いて、もう一つ重要なことに気がついた。


ゴブリン襲撃時の、衛兵たちのひどい対応のことだ。巡邏担当の衛兵はどこかで寝込み、休息中の他の衛兵たちは、まるで他人事のように構わなかった。


従僕のポットが数人の衛兵を起こしに行かなければ、領地が全滅するまで、これらの衛兵は現れなかっただろう。


「領地の軍事力を強化しなければ、安心して眠ることもできない」


アシュナ一人に頼っていては、とても領地全体を守り切れない。


フィールドは計画を練り終えると、自分だけが読める文字で記録し、その後ベッドに倒れ込んだ。大きな酒蔵の壊れた床板と窓は、すぐさま「きしきし」という耳障りな音を立て、時折煉瓦の隙間から嫌な風が吹き込んでくる。


「早く家屋も修理しなくては」フィールドは絶望的に耳を覆い、頭を布団に埋めた。布団だけが、まだ文明社会の香りを留めていた。


***


翌日、散々な目に遭わされたフィールドは、ブルーベリージャムを塗ったパンを食べ終えると、全ての兵士たちを召集した。まだ馬に乗れない亜人騎兵たちも含めてだ。


「まっすぐ立て」フィールドは厳しい声で叱咤した。


衛兵たちは昨夜の自分たちの行動がまずかったことを自覚しており、恐れおののいて首を縮めた。中には怖さのあまり失禁しそうな者さえいた。絞首刑を覚悟しているが、声を上げることもできず、時折フィールドの顔を盗み見て、何か兆候を読み取ろうとしていた。


フィールドは、職務怠慢の馬鹿者を引きずり出し、全員の前で容赦なく三十回鞭打つつもりだった。だが、多くの者が顔色が悪く痩せこけ、はっきりと肋骨が見え、鎧を着ているだけでふらふらと倒れそうになる様子を見て、非現実的な考えは捨てた。


三十回どころか、十回鞭を打つだけで、彼らを胎内に叩き戻してしまいそうだ。死ななくても、数ヶ月は寝たきりになるだろう。彼らを救うには、貴重な薬水まで使わねばならず、結局損をするのは自分だ。


最も重要なのは、彼らを死なせてしまえば、残る奴隷の中から適した兵士はさらに減ってしまうということだ。


フィールドは眉間を揉みながら、自分に言い聞かせた。衛兵たちは一日に拳二つ分の小さなライ麦ふすまパン二つ。給料も自由も女房もない。彼らの立場に立って考えれば、フィールド自身だって真面目に働きたいとは思わないだろう。


「昨夜巡邏した衛兵は領地を六周走れ。集結しなかった者は三周だ。これが罰だ。ずるをしようなどと思わないこと」


「はあ〜」衛兵たちは安堵の息をつき、中には笑い出す者さえいた。


なぜ領主様が走ることに熱心なのかはわからなかったが、肉を抉るような鞭打ちに比べれば、走るのはとても楽なことだった。


「走るのって好きだぜ」ある衛兵が笑いながら武器を放り投げ、鎧を外し始めた。


「待て。皮鎧を着たまま走れ。それに、全員武器を持っていくこと」フィールドは強調し、彼らが絶望的な表情を見せるのを待たず、悪魔のように人を惑わす口調で付け加えた。「もし正午前に終わらせられたら、一人一枚ずつ燻製肉を分ける」


栄養補給は必要だ。


「燻製肉?」


「母さん!今何て聞いた?」


「今日は祭りか?我らが敬愛する領主様よ!」


腹の中の不平不満は瞬く間に腸へと流れ込み、屁になって消えた。衛兵たちは素早く皮鎧に着替え、武器を担ぐと、狂ったように走り出した。騒々しいほどの熱気で、周囲で腐敗した農地を処理する奴隷たちが、しきりに横目で見ていた。


残された十数人は顔を見合わせ、燻製肉のことを考え、ヨダレを飲み込んだ。結局、山猫が勇気を振り絞り、小心翼々と尋ねた。「では、私たちはどうすれば?様、私たちも走れます」


フィールドは一通り見渡した。残っているのは衛兵の中の精鋭で、多くの者が十体以上の腐敗死体を倒していた。フィールドは眉を上げた。「お前たちは走らなくていい。昨夜、お前たちは数少ない集結した者だ。燻製肉はお前たちが当然受けるべきものだ。お前たちには新しい訓練項目を教える。『軍人姿勢』というものだ。うまくできたら、卵一つを特別に褒美としてやる」


「ぐっ…」


卵の言葉に、またもや一斉に唾を飲み込む音が響いた。

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