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始まり
私が守り神になって100年がたった。
突然だった。
ある夏の日、女子高生だった私は、なんとなく神社のベンチで暑いから休もうかなと鳥居をくぐった瞬間『次の守り神はお前だ』とどこからか声が聞こえて、気がついたら私は、白い和服を着ていて、神社から出れなくなっていた。
もちろん、最初は、ここから出たいと泣いて、出る方法はないのか、人間に戻る方法はないのかと試行錯誤していた。
しかし、10年、20年と時がたつにつれて、そういう心がどんどん薄れてきてしまっていた。
100年も経つと家族も友人ももう生きてはいないだろうし、戻りたいという気持ちも、戻る場所も、意味も消え失せてしまった。
そして、私は人間だった記憶も自分ではない遠い夢のようになっていた。