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7話

そんなこんなでパーティーの当日。

3週間ほど前にお父様に連れられて馬車で王都へと向かった私は、1週間ほどタウンハウスでのんびりと過ごしていた。

忙しいお父様は王都でも仕事があるらしい。

頑張ってくださいと応援すると、柔らかな笑顔で頭を優しくぽんぽんとしてくれた。


パーティーの為のドレスはレーゲン伯爵家から届いている。

柔らかな紫を基調とした豪華なドレスだ。

きっと彼の瞳に合わせられたこのドレスは、私のお気に入りであり宝物だ。


お父様にパーティー会場の入口まで馬車で送って貰うと、そこに待っていたのは婚約者ルート・レーゲンであった。


「それじゃあ、ルート君。娘を頼んだよ」

「はい、お任せ下さい」


元々2人で話をしていたのか、スムーズに会話を進めている。

2人が話しているのを遠巻きに見てると、その間にも色々なご令息、ご令嬢が入場している。


中には、過去に見た光景を再現したかのように、見覚えのあるドレスを着ているご令嬢がいらっしゃる。


過去と同じ光景に心臓がドキドキと脈を打つ。

変に汗が伝ってくるのを感じる。

棒立ちしていた私の様子がおかしいと感じたのか、話を終えたルートが私に呼びかけてきた。


「セリーヌ嬢、大丈夫かい?」

「っ!……。うん、大丈夫……。ありがとう」

「……今からは子どもだけとは言っても社交の場だからね、特に口調には気をつけて」

「分かりました……。ルート様」

「……ほら」


そう言って私の右手を取り、ぎゅっと握られる。

エスコートしてくれるようだけど、あまりにも強く握りすぎじゃない?

そんな事を考えていたら、その握った手をルートの顔近くまで持ち上げられた。そして……


ちゅっ。


「!?」

「……なに?」

「え、ええ?いま……」

「……行こうか」


握られた手にキスされた途端、顔がぶわああと熱くなる。

ふ、不意打ち……、ズルすぎる。

当の本人は何でもないような顔をしてるけど、少し赤らめた頬と耳は誤魔化しきれてないぞ!


煌びやかな会場は、豪華絢爛と表すのが丁度いい。

ご令嬢たちの色鮮やかなドレスは、私たちの目を楽しませてくれる。

2人で入場すると、数多の瞳がこちらを見つめる。

その様子は、挨拶をしたいが話しかけるべきかどうかを悩んでいるように見えた。


周りは貴族の令息、令嬢と言ってもこちらは侯爵令嬢と伯爵令息のため、他よりも爵位が高い。

特に公爵家のお子様がいない今は、この場の貴族での上は侯爵家や伯爵家になるのだ。

私に話しかけられる者は、なかなかいないだろう。


ルートに連れられて、パーティー会場の端の方に寄る。

ウェイターがグラスを渡しにこちらへとやって来たため受け取る。

お酒に見せかけたジュースではあるが、少し大人へと近づいたような気がして心が踊った。


「それだけで喜ぶなんて、ちょっと楽観的過ぎじゃない?」

「良いの!!感動して胸が熱くなってたんだから水を差すような事言わないでよ!」

「ふふ、口調に気をつけなよ」

「っ!!」


ついつい熱くなって口調が乱れてしまった。

己を叱咤し、貴族たるもの感情は動くべからずと言い聞かせる。

私の反応で楽しんでそうなルートにも一泡吹かせたいが、今は自分の事で精一杯である。


「おっ!ルートじゃないかー!」

「げっ……」

「ククッ、ほんとに髪色変わってるじゃねーか!元気そうで良かったぜ!!」


そう言ってルートに向かって肩を組んでいるオレンジ色の髪をした男の子。

ルートの方に視線を向けると、眉を寄せて嫌そうに腕を振り払っていた。


オレンジ頭は、はっと私に気がつくと勢いよく頭を下げ、片膝を地につけた。


「ごきげんよう。レオン様」

「セリーヌ・シェーン様……!お、お初にお目にかかります!私はレオン・シュピレンハイムと申します。先ほどは大変なご無礼を申し訳ございませんでした」

「問題ありません。お顔を上げてください」


私が顔を上げるように促すと、素直に顔を上げ立ち上がる。

彼の顔を見てギョッとする。見ていられないほどに、涙を流していた。


そんな彼を見て、私は呆れ顔になってしまう。

どうにかして欲しいとルートの方を見てみるが、ルートはルートでドン引きしていた。


「寛大な……ご対応……グスッ……ありがとうございます」

「あ……いいえ。少し風にあたられた方がよろしいかと……」

「すみません……そうさせていただきます。失礼します……」


そう言ってバルコニーの方へかけて行ったレオン様に向かってルートがボソリと呟く。


「あいつ……マジかよ」

「貴方と仲が良く……ご友人だったんですね」

「やめろ……断じて違う」


目を見開いて反論してくる。どれだけ嫌なんだと苦笑した。


レオン様を皮切りに私とルートの周りには人が集まってきた。


仲良くして欲しいと沢山の挨拶を受ける。

そりゃご令嬢達は婚約のライバルでもない権力者の娘とは仲良くしておきたいんだろうな。


話をある程度聞き終わると、それではごきげんようとの挨拶と共に、片足を引きドレスの裾をつまみ上げて見事なカーテシーを披露する。


「きゃー素敵ですわ!!」

「やはり品が違いますわね」

「まるで絵画のようで素敵〜!」


ルートはいつの間にか人がいない端の方に寄っていたので、それを追いかける。

去り際に後ろから、私の事を褒めている言葉が聞こえてきた。

好感度高そうかも!過去含めてしっかり練習した甲斐があった〜!!

ふふん!と得意げに鼻を高くする。


「へぇ〜、セリーヌって挨拶だけはしっかり出来るんだ?」

「だけは……って失礼ね!とりあえず全体的にはそれなりにこなせますわ」

「そうなんだ〜、普段の様子があれだから心配だったけど良かったよ」

「常に貶されてる気分……」


2人きりになると、変わらず笑いながら嫌味を言ってくるこの男。

だが他人からは外面がいい為、とてもいい男に見えているのだろうなぁ。

周りを見渡すと案の定、女性がうっとりとルートを見つめていたりする。


私は1人溜息を吐くと、いつの間にか離していた手を再び握り、その手を引いて食事が置いてあるところまで導く。

何も言葉を発しないルートは、ただひたすら握られた手を穴があくほど凝視していた。


ふと、場が静かになる。

この感じ、ユリウス殿下がいらっしゃったようだ。

入場と共に、音楽が鳴り響き始めた。

私を含めた全員が、殿下に向けて最大の礼で挨拶をする。


「皆の者、本日は私の誕生祭によく来てくれた。感謝を申し上げる。今回のこのパーティーは正式な物では無いため、どうか安心して寛いで欲しい。それでは皆、パーティーを楽しんでくれ」


ユリウス殿下は人格者であり、太陽のように輝く金色の髪を持った美少年である。

まあ、いずれは断罪をするような人間になるんだけど……


今回は正式な場では無いことから、殿下への挨拶は無しになっている。

まあ10歳も満たない子どもも多い事から、親無しで殿下に挨拶となると、特に子爵や男爵の子どもは厳しいかもしれない。


過去でも確か同じだったので、後は殿下から声がかかれば挨拶をするだけではあるのだが……

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