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26話

とうとう本日は心から楽しみにしていた復学の日。

朝の見送りにはお父様とお母様もいらっしゃる。


つい一昨日に、やっと2人に会えた。

領地が遠いのと今が忙しい時期ということもあり、なかなかこちらに来れなかったようで2人からは謝罪を受けた。

そんな謝る事なんて全くないのに。


その後は、久しぶりに家族4人で食事をした。

些細な話から、私が起きた後の話だったりと知らない話も多い。

中でも1番嬉々として話していたのはルートの話であった。


「実はな……セリーヌが倒れたと聞かされて私たちも急ぎ駆けつけたかったのだが、知っている通りこの距離だ。着いた時にはかなり日が経っていてな。しかもまだ目覚めていないと報告で聞いており気が気ではなかった」

「そうなのよ〜。いくらフレディが傍にいるとしてもやはり可愛い娘だもの。心配でしょうがなかったわ」


片手を頬に当て、うふふ〜と柔らかな微笑みを浮かべるお母様に対して、お兄様は眉を下げて苦笑していた。


「やっと王都にたどり着いたはいいが、知らせを出さずにタウンハウスに着いたものだから皆驚いていてな。フレディや使用人たちの焦りようは今でも忘れられん」

「そ、そこはもういいでしょう?」

「フレディのあの間抜けな顔をセリーヌちゃんにも見せてあげたかったわよね?」

「ああ、全くだ」


あの完璧に見えるフレディお兄様が真っ赤になって黙り込んでいる。

2人からのからかいに返す言葉が見つからないようだ。

それにしてもお兄様の間抜けな顔?……かなり見てみたい。


「ふふ、お兄様〜私も見てみたいです!!」

「セ、セリーヌ……君まで」

「ふっ」

「うふふ」


この場は和やかな空気で満たされる。

遠くで待機している使用人たちも、心做しか嬉しそうに見えた。


「話を戻すが、ちょうどその日もルート君が見舞いに来ていたようでな。セリーヌの手を握りしめて、ただ俯いていた」

「ルートが……」

「そうだ。彼はかなり憔悴しきった顔をしていてな、見るに見かねて話しかけたのだ。そうしたら開口一番に何と言ったか……『セリーヌ嬢を守れなくて申し訳ございませんでした。ですが私を婚約者から外すのだけはおやめいただけませんか』だ。……私は心を打たれたよ」

「!!」


彼がそんな事を言ってくれていたなんて。

目の前の視界が、少しずつぼやけてくる。


「元々ルート君に話しかける前にフレディからはあらかたの事を聞いていた。この事件の顛末を聞けば、彼がどのような気持ちであの部屋にいたかと思うと……察するに余りある。それにな、コーリンを始めとした使用人から聞いたのだが……見舞いにはかかさず毎日来ていたらしい。私はね、ルート君を選んで正解だったと心から思っているよ」

「……っ……ルート」


「……本来ならな、いつあちらから婚約破棄を受けてもおかしくなかったと思っている。半年過ぎても目覚めない者を婚約者として置いておくよりも、新たに婚約者を決めた方が家同士の事も上手く進む。でも彼はそうではなかった。……セリーヌ。ルート君を大切にしなさい。私たちはいつでも君たちの事を応援している」

「……っはい!!」

「あらあら、セリーヌちゃん。ほらこれで涙を拭きなさいな」

「うぅ……ぐすっ」

「俺にも何か出来る事があれば言ってくれ」


お母様から差し出されたハンカチで目元を拭う。

少し赤くなったが、マシにはなっただろう。


「お父様、お母様、お兄様!ありがとう!!」


今出来る精一杯の笑顔で感謝を伝える。

各々笑っていた幸せな時間だった。



そんな朝の出来事を終え、たった今学園に通うためルートを待っている。

見送りに両親2人も揃うとはなかなかないのでは?

ちなみにお兄様はお先に行きました。


それにしても遅い。

……今日からって事、流石に忘れていないよね?

そんな事を思っていたら、遠くの前方に馬車が見えてきた。


緩やかに目の前へと止まるとルートが降りてくる。


「お迎えに上がりました」

「おお、ルート君来たか」

「すみません、お待たせしてしまって。さあ、行こうかセリーヌ」

「はい……行ってきます」

「ああ」

「ええ!気をつけてね」


ルートから差し出された手を取り、馬車に乗り込む。


「それじゃあルート君、よろしく頼んだぞ」

「セリーヌちゃんの事お願いね〜」

「任せてください」


学園までの間、馬車に揺られる。

セリーヌはぽつりと零す。


「ルート……少し遅かったんじゃない?」

「……仕方ないだろ、色々準備があったんだよ」


責めた口調ではなく、どちらかと言えば拗ねたような言い方に、内心どぎまぎしているルート。

返事は少し素っ気なくなったが、これが彼の精一杯である。


「あ!そういえば、クラスは同じなのかしら?エレノア様と離れていたらどうしよう」

「ああ、それは安心しなよ。3年まで同じクラスだから」

「そうなのね、良かった〜。やっぱり仲が良い友人がいるのといないのとでは全然違うから」

「へぇ〜。鬱陶しいだけじゃない?」

「またそんな事言って……。貴方だってゼノ様と仲良しでしょ?離れたら悲しいんじゃない?」

「誰があいつと仲良しだよ」

「またまた照れちゃって〜」


くどくどと文句を垂れ流すルートを無視して、ちらっと外の景色を覗く。

街はいつも通りに賑やかで、活気に満ちている。

次の休息日はこの街を探索するのだ。

そう思えばワクワクが止まらなかった。

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