20話
それから毎日のように監視されているような気がしていた私は、放課後ついにルートとエレノア様に相談をした。
「あー、やっぱり気づきました?実は私がある人を雇ったのです。黙っていてすみません」
「エレノア様が?」
「はい!!」
「なんでもっと早く言わないんだ」
「いや〜、ルート様が許してくれなさそうだったので」
話を聞けば、エレノア様の幼なじみポジション?の方で、暇な時に私の周りに怪しい者がいないかを見張ってほしいとお願いしたそうだ。
えへへと可愛らしい笑みを見せている彼女とは反対に、腕を組んでいるルートの口元は引きつっていた。
「おーい!!バレてるから来てー」
「えっ……!?なんで……」
「とても困惑されていらっしゃいませんか?」
「どうやら人前に立つのが苦手みたいで……」
「ねえ、早く来なよ。待っているんだけど」
「ひえぇぇー」
顔面蒼白になってかなり怯えている幼なじみの方に、見ているこちらが可哀想になってくる。
ガタガタと震えながら1歩ずつ近づいてくるが、ルートを見るなり顔色はどんどん悪くなっているように感じる。
隣を確認すれば、にっこり笑顔のルートがいた。
こわい。
とうとうエレノア様の隣に並び立つと紹介をされる。
「彼は男爵家のライ・ドレイン様と言って、影は薄かったり、独り言も凄いですが悪い人ではないです」
「あ……ライ・ドレインです……。よろしくお願いいたします……。はは、影が薄いかぁ……本当の事だけど……」
「よろしくお願いいたしますね、ライ・ドレイン様」
「……!!わわ……。はい……お願い……いたします」
「よろしく、ライくん。……ところで君に聞きたい事があるんだけど、こっち……いいかい?」
「あっ……はい……」
離れたところに行く2人を見送ると、泣きそうな表情でエレノア様が話しかけてきた。
「本当に怖がらせてしまって申し訳ありません!!」
「えっ?いや、いいのよ。私の事を考えてくれていたのでしょう?嬉しかったわ」
「め、女神!!……いや、これある意味チョロいのか?え?危ないんじゃないの?」
「??ごめんなさい、少し声が小さくて聞き取れなくて……もう1度お願いできますか?」
「いやいや、すみません!何でもないです!!」
視線の正体が悪気のないエレノア様の知り合いの方で安堵している最中、外は雨が降り出したようで段々と暗くなっていく。
「あら、雨が降り出しましたわね」
「結構強そうですね、少し風もありそうです」
その時ちょうどルートと挙動不審なライ様が戻ってくる。
「セリーヌ嬢、雨が強まりそうだからそろそろ帰ろうか」
「はい、ルート様」
「君たちも早めに帰ったほうがいい。俺たちはお先に失礼するよ」
「そうですね!!ごきげんよう、セリーヌ様、ルート様!!」
「あっ……失礼します……」
「はい、ごきげんよう」
タウンハウスに着く頃には地面に思いきり叩きつけるようなほどに雨脚が強くなっていた。
ルートは外に出るなり、わざわざ従者の仕事を奪ってまで、私に傘を差している。
家に入るまで彼がずっと差してくれていた。
そのおかげで私はほとんど濡れてはいないが、案の定ルートは濡れている。
しかもそのまま帰ろうというのだから、困ったものだ。
使用人に彼の着替えやシャワーの準備などをお願いする。
椅子に座らせて、タオルで簡単に彼の髪を乾かす。
彼はされるがままではあるが、嫌がる素振りは見せなかった。
ボサボサの髪でも顔が良いせいかある程度は決まっているところが気に食わないが。
「ほら、シャワーの準備が出来たって。寒いでしょ?温まってきなさい!!」
「……はぁ。しょうがないな」
そうして使用人に連れられて彼は部屋から出ていく。
私はその間に、コーリンに食事の用意を頼む。
こんな機会だからこそ、一緒に食事をしないと!!
最近は家に送ったらすぐ帰るんだから少し寂しいのよ。
温まってきたルートが戻ってきたが、彼の髪はまだ濡れたままだった。
「もー、まだ結構濡れてるじゃない!!拭いてもらわなかったの?」
「自分ですると断ったけど?」
「出来てないのよ!!ほら貸して」
「ん」
私も乾かすなどした事はなく、見よう見まねで下手なことに変わりは無いが、ルートよりかはマシだと思う。
向かい合わせで彼の髪を拭いていると、私の胸に彼の頭が当たった。
こっちはものすごく恥ずかしいのに、彼は気づいていないのか全く動かない。
今回も自分だけ意識しているようで悔しくなる。
「はい!!終わりました!!」
「……うっわ、髪ボサボサじゃん。不器用すぎ〜」
「しょ、しょうがないでしょ……コーリン助けて!!」
どこかで待機していたのか、コーリンはすっと現れる。
「いかがされましたか、お嬢様」
「ルートの髪をどうにかしたいのよ」
「それでしたら、こちらとこちらを」
そうしてプロに教わりつつルートの髪を整えていく。
そうすれば、ちょっと悪そうな見た目から見違えるように輝く美男子へと変化を果たした。
「おお〜!!さすがコーリン」
「お嬢様の器用さがあってこそですよ」
「俺は何を見せられているんだ?」
2人の世界に入りかけているセリーヌとコーリンを眺めて呆れた声を出したルート。そんな彼はいつもの光景に安心していた。
その後、一緒に食事をして和やかな時間を過ごしたルートは弱まってきた雨の中帰っていった。
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