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16話

「いや、朝早いってそういう……?」

「婚約者なんだから一緒に登校は当然じゃないか〜」

「そんな事はないと思う」


朝一で、馬車で迎えに来たルートに向かって呆れた返答をする。

それとも何?もしかして私が知らないだけで実際に流行っているのかしら……。


「ほら、行くよ」

「あ、ちょっと!!」

「行ってらっしゃいませ」


手を引かれて伯爵家の馬車に乗る。


「分かっていると思うけどさ。他の人間に簡単に気を許すなよ」

「またそんな事言って……」

「裏庭にも誰からもつけられていない事を確認してから来なよ、騒がれたら面倒だ」

「そういえばキャラ作りしてたんだったね」

「味方を作れば、いざと言う時に役に立つだろうからね」

「策士??」


今日もまた何気ない会話で笑い合う。

こんな楽しい時間はすぐに過ぎてしまうのはお決まりだ。

学園に着くと、私たちはお互いのクラスへと別れる。


「ごきげんよう、エレノア様」

「あ!!セリーヌ様〜おはようございます!!」


同じクラスのたった1人の友人であるエレノア様に挨拶をすると、元気の良い挨拶が返ってくる。


「今日からいよいよって感じですね!!」

「そうですわね、お互い頑張りましょうね」


2人で仲良く会話をしていると、他のご令嬢達が挨拶をしてきた。


「ごきげんようセリーヌ様、エレノア様、本日はお日柄もよく」

「あら、ごきげんよう皆様」

「ごきげんよう!!」


よし、挨拶が出来た。1歩前進したのでは!!

軽い世間話をしていると、教師が入ってきて授業が始まる。

まずは基礎的な事から学び出すため、家庭教師に習っていた者たちは暇を持て余していた。

私も人生2回目のようなものだから、簡単すぎて寝てしまいそうだ。

だから、これから学ぶ範囲を復習しておく。

そんな退屈な時間が終わり、やっと昼休憩の時間になった。


「セリーヌ様!!お昼ご一緒してもよろしいですか?」

「あっ……ごめんなさいエレノア様。先約が入ってて」

「ははーん、さては婚約者様ですね?大丈夫ですよ!!お気にせずに行かれて下さい〜!!」

「ありがとうございます」


まずは食堂へと歩いていく。

昼食を手配したとコーリンは言っていたが、どうやら食堂で受け取る事になったようだ。

食堂にたどり着くと、たくさんの人で賑わっており楽しそうな雰囲気が伝わってくる。


係の方に伝えると、バスケットを持ってきてくれた。

スムーズに事が進んで、時間のロスはほとんど無い。

少し重いバスケットを目的地へと運ぶ。


「裏庭〜、ベンチ〜、あ、裏庭はここかしら」

「少し遅かったね」

「ルート!!」

「……貸しなよ」


そう言ってバスケットを奪い取られる。

強引だなぁ、全く。

難しい顔をしたルートは黙り込んでいる。


「……」

「どうしたの?」

「いいや?ああそうだ。こっちだよ」


校舎の裏手には手入れがしっかりと行き届いている庭園がある。

その庭園の中でも、特に奥まったところに緑に囲まれたベンチがある。

なるほど、確かにここなら誰も来ない。

そもそも裏庭自体に人がいないのだが、より一層2人の空間になってしまう。

セリーヌは少し恥ずかしくなり、頬が桜色に染まる。


「ここ座って」

「うん」


3人掛けのゆったりとしたベンチの端にセリーヌを座らせる。

汚れないように、ルートは自身のハンカチを下に敷いてくれた。

こういう所はしっかり紳士なのである。

ルートはど真ん中に座り、背もたれに重心をかけていた。


「疲れているの?」

「そりゃそうさ。ストレス溜まりまくりに決まってんだろ」


バスケットを再び受け取り膝の上に置く。

中身はなんだろうと見てみたら、本日は野菜が多めに肉を挟んだサンドイッチのようだ。


実は今日、実践してみたいことがある。

私の手でルートに食べさせるという、あーんというものだ。

平民の恋人の中で流行っているらしいとエレノア様に聞いたのだが、実際に行動に移すとなると恥ずかしい。

き、気合いを入れろ!!今までだってどうにかなってきた!!


ルートがサンドイッチを受け取ろうと手を差し出しているのを無視して、サンドイッチを口元に持っていく。

目を見開いたルートが、私とサンドイッチを交互に見つめた。


「……は?」

「あ、あーん」

「……」

「早く食べて……」


ルートはぎこちなくひと口齧る。

恥ずかしさと達成感でもうヘトヘトである。


「……いやこれなに?」

「えっと……平民の恋人で流行っているという……あーんというやつです」

「……ふ〜ん」


興味無さそうな返事をしたかと思えば、再び私の手を掴んでサンドイッチを食べ始めた。

そ、それは何か違くない?

顔が熱い。絶対に真っ赤になっている。

食べ終えたと思えば、次のサンドイッチの催促が来た。

2つ目を食べ終える頃には騒ぎ立てていた心臓が少し落ち着いてきたのだが、次の一言で再び大きく動きだす事になろうとは思わなかった。


「はい、セリーヌ。あ〜ん」

「!?」


まさか仕返しされるとは思ってもおらず、緊張がピークに達する。

口元にツンツンとサンドイッチを当てられたらもう口を開く他ない。

ゆっくりと口を開くと、食べやすい角度にしてくれるところがまたずるい。

そのまま、私がサンドイッチ1つを食べ終わるまで付き合ってくれた。

残りのサンドイッチをほぼルートが全て食べ終わると、残りの時間はゆったりと過ごす。


「セリーヌ、膝貸して」

「えっまた!?」


ルートはバスケットを近くのテーブルに避けると、遠慮なく私の膝に頭を乗せる。

自分の気に入った体勢になると、目を閉じて寝始めたではないか。

全くしょうがないと頭を撫でる。


そうして、昼休憩の時間はこれが日課になっていくのだった。

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