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2話

――と、思っていたのですが。


「……っは!!」


はぁはぁ……と小さく呼吸を繰り返す。

今のは何?あれ?私は馬車に引かれて死んだはずじゃ……


ベッドの上から身体を起こして、混乱する記憶を整理する。

自分の手のひらを見つめて、開いて閉じる。

傷1つない綺麗な手のひらは、動かしても痛みはない。

周りを見渡すと色々と配置が変わってはいるが、私の部屋で間違いはなさそうだった。

これはどういう事なの?私は死んでいなかったの?



そんな時、コンコンとドアを叩く音がする。


「お嬢様、コーリンでございます」

「……入って」


コーリン……昔の私の専属侍女の名前。

なぜコーリンがいるのか疑問に思うのと同時に、癖ですぐに返事を返した。


「おはようございますお嬢様。本日はレーゲン伯爵夫人とご令息が先日のお礼にとご挨拶にいらっしゃるようで、奥様がお会いするようにとの事です」


何だろう……この既視感。

私はこの会話を知っている。


「分かったわ。お母様の言う通りに準備しておいて」

「お嬢…様……?」

「どうしたの?」

「あっ、いいえ!かしこまりました。」


コーリンは一瞬ぽかんとした顔をした後、すぐに切り替えて部屋から出ていった。

私は頭を抱える。

なんでコーリンがいるの!?それにレーゲン伯爵夫人とご令息が先日のお礼!?なんの話!?

訳が分からなさすぎる。

ただ何だろう。会話も光景も何か覚えがあるような気がするのだ。


とりあえずベッドから降りて立ち上がると、やけに視線が低く感じる。

それに体も軽い。今なら窓から木にだって飛び移れそうだ!……違和感が凄い。

まさかと鏡に駆け寄る。


「……うそ。どうして?」


とてもじゃないが信じられないと目を見開いた。

顔をぺたぺたと触るとその感覚がしっかりと伝わってくる。

そんなまさか若返っているなんて、誰が思うだろうか。

ましてや10歳くらいの子どもの姿になんてどうして……。


だが、この状況に点と点が繋がる。

子どもの姿、コーリンがいる事、覚えのあるレーゲン伯爵夫人の訪問。

これって過去に戻ったってこと?

いやいやそんな事とは思うけど、それ以外に考えられない。


とりあえず思い出そう。

まずレーゲン伯爵夫人はなぜ来るのか。

先日のお礼って何をしたんだっけ。


確かこれくらいの頃の私は、外に出ることが好きで駆け回って遊んだりしていたな。

だから格式ばったお茶会とかが苦手だったんだ。

どうも腹の探り合いやコミュニケーションが私には圧倒的に合っていなかった。

だから怒られてばかりだったけど、殿下の婚約者に選ばれてからは必死に妃教育を学んだ。

そのおかげで、あの私が出来たんだと思うと感慨深いものがある。


あ、そうか。

さっきコーリンがぽかんとしてたのは、聞き分けが良すぎたからか。

この頃は好きなように行動していたから、あの時も駄々をこねたに違いない。


そんな私がお礼を受けるような事……うーん。



あ!もしかして……あの時の。

記憶に残っていたのは、木から降りられなくなった少年を助けた時の事。

確かあの少年は赤髪だったし、レーゲン伯爵家によく見る特徴とも一致する。

というか、それくらいしか人を助けた記憶もない。

まあなんとかなるかと思い直し、ベルを鳴らす。


コーリンに着替えを手伝って貰ったあと、朝食を食べに行く。

席にはお母様とお兄様がすでにいらっしゃった。

お兄様が先に声を掛けてくる。


「おはよう、セリーヌ。」

「おはようございます、お母様、お兄様。」

「セリーヌちゃんは今日も元気ねぇ〜」

「セリーヌ、今日は体調が良いんだ。私と街に出かけよう」

「あら、駄目よ。今日セリーヌちゃんは私とサーラのお茶会に参加するんだから」


サーラ・レーゲン伯爵夫人はお母様ニア・シェーンの昔からの親友であり、公の場で無ければ呼び捨てをするほどの仲のようで、時々お茶会をしている。

ただ今回、いつもと違うのはレーゲン伯爵家のご令息が着いてくると言うこと。


しかも記憶が正しければ、今日やって来るのは――赤髪紫目の男、ルート・レーゲン。

私を牢獄に連れていったあの2人のうちの1人。

いつも何も面白くないような顔をして、全ての人を嘲笑うような態度をしていた。

だけど……詳しくは思い出せないけど、初めて出会った時はそんな態度じゃなかったと思う。


「お話中に失礼いたします。本日も侯爵様は書類の提出期限の関係上、執務室にてお食事なさるとの事です」

「分かったわ!なら私達も食べましょう」


お母様がそう言うと、3人で食事を始める。

お父様が食事の場に現れない事は日常茶飯事で、反対に現れた時は槍でも降るのかと思う程だ。

まあ私とお母様との仲が良すぎるだけかもしれないが。


運ばれてきた食事をじっと見る。

私は、あの牢獄に入れられてから見ていない豪勢な食事にありがたみを感じていた。

見ているだけでお腹が満たされていく。

まあ、残さず食べるのだけれど。


体調を崩されて家へ戻ってきているお兄様のお話を楽しく聞きながら食事を進める。

いち早く食べ終わると、お母様とお兄様にお先に失礼いたしますと挨拶をして部屋に戻った。


「はぁー、やっと戻れた〜」


ベッドに駆け寄りダイブする。

こんな事、妃教育を受けてからは絶対にしなかった。

悪いことをしているような気持ちにはなるが、もうこの短時間で疲れてしまったのだからしょうがない。

このまま眠りたいなと思いながら、沈み込むように眠りについた。

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