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15話

「それで――」

「ふふ、それは大変だったでしょう?」


私たち2人はそれはもう息が合いすぎて、食事を頂いてからも長い間、話に花を咲かせていた。


「そういえば、そのセリーヌ様の髪飾り素敵ですね!」

「あ、これは昨年の誕生日にルート様に頂いて……」

「えー!!あのセリーヌ様の婚約者ルート・レーゲン様からのプレゼントなんて素敵〜♡その黒と紫の色合いってそういう事ですよね、尊い〜!ん!?その指輪も婚約指輪ですよね!!お似合いです!!くぅー!その照れたお顔も可愛いです!!」

「とうと……?……もう!!そんな事ばかり言って」


昨年の誕生日は、あまり大規模なパーティーではなくどちらかと言うと身内でするような形で祝ってもらった。

というのも、お兄様もルートも学園に行っている為、パーティーを開いても寂しくなるだけだからだ。

でも戻って来れなかった分、手紙とプレゼントを頂いたので文句はない。


ちなみに、昨年のルートの誕生日にはまた刺繍を贈ってみたのだが、反応は微妙であった。かなり自信はあったのだが、どうやら私の感性に問題があるのかもしれない。

まあ、受け取って貰えたので良しとする。


そんな事が頭によぎりつつ、元気がよすぎる彼女の時々よく分からない褒め言葉の連続にたじたじになる。


「そろそろお開きにしましょうか」

「あ!もうこんな時間!?ひゃ〜!!私ばかりお話してしまってセリーヌ様申し訳ございません〜!!」

「いえいえ、とても楽しませていただきましたよ。えっと、その……またこうやって一緒にお茶お願いしてもよろしいかしら?」

「ぜひ!ぜひ!お願いいたします!!」


首がとれそうなほどコクコクと頷いている彼女の必死さに思わず笑ってしまう。

口元に手を当てて笑っていると、エレノア様はこちらを見つめてボソボソ何か話している。

その姿はどこかルートを思い出す。


「え、きゃわ。流石にこの笑顔は破壊力やばいて。この推しは私が守らねば」

「エレノア様?聞こえてますか?エレノア様ー?」

「へ?あ、申し訳ございません!!考え事してました!!」

「そうでしたか。さあ、帰りますよ」


その後、エレノア様は寮という事なので途中で別れて、私は馬車でタウンハウスへと帰っていく。

今日はルートに会えなかったけど、また明日にでも会えたらいいな。

それにエレノア様とはこれからも仲良く出来たら嬉しい。

ルンルン気分でいるとタウンハウスへと着いたようで、そのまま上機嫌でドアを開けてもらい中に入る。



「へぇ、随分と遅かったね。どこで道草食ってきたの?」

「……いや、だからなんでいるの?」


待ち構えていたのは、ルート・レーゲン。

侯爵家の本邸では飽き足らず、タウンハウスにまで入り浸っている。

しかも、コーリンは慣れたもののようでルートに信頼を寄せているようだ。

彼は足を組み、カップをそっとソーサーに置く。


「入学おめでとう〜と言いに来ただけなんだけど?」

「来るなら言ってくれれば良かったのに」

「俺もこんなに待つ羽目になるとは思っていなかったからね。で?何してたの?」


今日はかなりしつこい。待たせたのが相当ご立腹なのだろう。

だが、元々会う約束はしていなかったのだから、私が責められているのはお門違いだと思う。


「……新しく出来た友人とお茶してた」

「はぁ?友人?お前が?」

「そうですけど!?私でも友人くらい作れますが??」

「……ふ〜ん。そう。良かったじゃん」

「いい子だから安心してよ」

「別に心配してないけど?自意識過剰だな。まあでも騙された時に被害被るのはこっちだからな。その面では心配しているさ」


よく口が回ること。

そんな性格で友人がいないのはルートもでしょと言いたいところだが、どうやら学園内では本性を隠しているらしく結構人気があるらしい。


「それは置いといて!!今日の私はどう?可愛い?」

「……いつもと変わらないけど?」

「ほら、よく見て!!貴方がこだわりまくって作らせたこの制服に、貴方が選んだこの髪飾りを付けているのよ?いつもと同じくらいならルートのセンスはあまり輝いてないって事になるかもしれないわね!!」

「ぐっ……」


この制服は、ルートが要望を出しまくって完成している。

スカートの丈をもっと長くしろとか、ウエストの部分をもっと緩めろとか何度も何度も調整を重ねて出来た物なのだ。


そもそも成長するんだから、そんなに細かく決めなくてもと思っていたが、どうやらルートには何かこだわりがあるらしい。

しかも着ているところを最初に見ないと機嫌が悪くなる。

だから今回の制服も入学前に見せてやったが、結局だんまりであった。

彼はかなり面倒くさい男なのだ。


「可愛い?いつもと変わらない?」

「んっ……まあ、いつもより多少は見れるようになったかもね」

「その言い回しはずるいなぁ」


彼に可愛いと言わせるのを失敗してしまったが、まあいい。

耳と頬がほんのり赤くなっているから許してやろう。


「あ、そうだ!!明日一緒に昼食を食べてあげる」

「……別に頼んでないけどなに?まさか1人で昼を過ごすのが嫌なわけ?それなら」

「いや、別に嫌ならいいです。今日出来た友人誘います」

「……」

「なにその目……ふふ。嘘嘘!!一緒に食べよう!!私がルートと食べたいの。ね?お願い〜!!」

「はあ……いいよ」


彼とは私から言わなければ、なかなか一緒に行動出来なかったりする。

でも私が誘えば必ず答えてくれる優しい人。


「ありがとう!」

「……明日の昼、裏庭にあるベンチに来なよ」

「裏庭?……うん」

「ああ!もちろんセリーヌが昼食持ってきなよ?俺は持ってこないからさ」

「分かったわ」

「……じゃあ、俺は帰るよ。明日も早いからね」


そうして帰っていくルートは、少しだけ気分が浮かれているように見えた。


「ねえ、コーリン」

「どうされましたか?」

「明日、昼食どうしたらいい?」

「それでしたら、バスケットに2人分のパンを手配しておきますね」


にこにこと自分の事のように嬉しそうなコーリンに対してお礼を伝える。

過去の今の時期には、もうコーリンはいなかった。

だからこそ、今この時も仕えてくれているコーリンには感謝してもしきれない。


「コーリン、本当にありがとうね」

「いえいえ!!お嬢様どうされたのですか?」

「ううん!いつも感謝してるから!!」

「うふふ、ありがとうございます。私もこうしてお嬢様に仕えることが出来て幸せなんですよ」


こうして2人で笑い合える喜びをずっと噛み締めていたい。

無理な話ではあるが、これからもずっと縁が切れなければいいなぁと思うのです。

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