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14話

――時は経ち学園の入学式当日


この1年で(わたくし)セリーヌ・シェーンは可憐で麗しき見事なレディへと進化を遂げていた!!

自分で言うのもなんだが、かなりの美少女ではないだろうか!?


肩にかかるほどに伸びたプラチナブロンドの髪。

ぱっちり二重の青色の瞳。

そしてすっと縦に長いスマートな体型。

……まあ、少しだけ胸が小さい事がコンプレックスではあるが、これからに期待しよう。


そんな私も誕生日が来たら13歳である。

13歳の年になる4月に入学式があるのだが、今日この日が私の輝かしい学園生活の1歩を踏み出す日なのだ。


1か月前に領地から出て、王都のタウンハウスへと移動しており、この生活にも慣れてきた頃だ。

ありがたいことにコーリンがこちらまで着いてきてくれる事になり、心細い事もなく着々と入学への準備を進めてきた。


「お嬢様!!大変お似合いです!!」

「そ、そう?」

「はい!もう間違いなく学園1の可愛さですわ」

「えへへ……照れるなぁ」


パチパチと拍手をしつつ、こうやって私の事をべた褒めしてくるものだから、調子に乗ってもしょうがない。

お母様とお兄様とコーリンの3コンボで私の自己肯定感は爆上がりなのだ。


学園の制服姿に着替えたこの姿は、淑女という言葉が良く似合うはずだ。


「さて、そろそろ出発しませんと間に合わなくなりそうですよ」

「はーい、分かったわ」

「……お嬢様くれぐれも口調などにはお気をつけ下さいませ」

「もう何回も聞きました!!コーリンってば心配性だなぁ」

「少々抜けているところがございますので、かなり心配はしていますが……何かあればルート・レーゲン様にすぐに頼られて下さいね」


そう言いながら最後の準備が終わり、馬車へと乗り込む。

私は1度は通った事がある身だが、それでも全く違う人生を歩んでいる事にワクワクが止まらなかった。


前の人生では、友人と呼んでいいか分からないような関係しか築けなかった。

笑顔を貼り付けて、必死に取り繕って。上辺だけの関係だから、自分にメリットがある事にしか参加しない。

そんな関係ではなく、心から楽しいと笑いあえる友人が出来たらいいなと密かな楽しみなのである。


さて、学園が見えてきた。

いつ見ても感嘆の声が上がるほどに、大きく美しい建物である。

他の馬車から今日入学であろう生徒が降りていく。

寮生がほとんどの為か、あまり数はない。

私も同じように降りると、先生に従って会場に向かってついて行った。


なかなかと広い会場へ辿り着くと、自分の席を探して座る。

前と同じ席の場所だった為、全く迷うことは無かった。


ただ、どこか敬遠されているような気がしてならない。

隣の席の人とは目も合わないから挨拶しにくいし……。


そうして着々と皆が座っていき、全員が揃うと入学式が始まる。

駄目だ……始まる前に周りの誰かに声を掛けてみようと思っていたのだが、誰にも話しかける事が出来なかった。悲しい。


長い入学式も終わり、大した出来事もなく、クラスメイトの自己紹介も終わる。

後は学園内を案内してもらい、数々の注意点を伝えられて今日はこれでおしまいらしい。


え、なにこれ。終わり?嘘でしょ……。

何も出来ずに終わってしまい呆然とする。

友人を作るどころか、挨拶すらまともに出来なかった。


この学園では貴族や平民での上下関係などは一切関係なしとされている。

全員が平等なのだ。

だからこそ、この学園では立場関係なく接する事を良しとされている。

それなのに何故かひとりぼっちの私。

完全に出遅れた感が漂っている。

そんな中、教室にひとりポツンと座っている私に向けて、救世主の小さな声が耳に届く。


「あ、あの」

「……!!はいっ」

「私、エレノア・サミエルと申します。その……セリーヌ様とお呼びしてもよろしいでしょうか?」

「もちろんです!お好きなように呼んでいただいて構いませんわ!!エレノア様!」


天使のような可愛らしい声が、話しかけてくる。

食い気味に返事をしてしまったが、引かれてはいないだろうか。

だが、ここでこの子を手放す訳にはいかない。

初めての女の子の友人が出来るチャンスである。


「あっ、ではセリーヌ様。もしよろしければ一緒にカフェでお茶……しませんか??」

「えっ……!!よろしいのですか!?」

「はい!!セリーヌ様さえよろしければ」

「もちろん大丈夫です!!お願いします!!」


こんな可愛い子とお茶会!!

さっそく友人らしき人が出来た事に舞い踊りたい気分である。

エレノア様が満面の笑みを浮かべると私も自然と笑顔になる。


「行きましょう、セリーヌ様!!」

「そんなに急がなくても大丈夫では!?」

「聞いた話によると、お昼に数量限定のランチメニューがあるそうなんです!!」


そう興奮気味に話すと、私の手を握って少し早く歩きだす。

今まで出会った中で、こんなタイプは初めてだ。

でも、この方が本来の私に近い事もあり接しやすいかもしれない。


エレノア様に連れられて辿りついたのは、学園に隣接するカフェである。

過去に私はここで昼休憩を取っていた。

そんな馴染みのあるカフェに今回も来ることになろうとは。

お気に入りのテラス席に行き、2人でメニューを眺める。


「んー!!この数量限定のランチは売り切れですか……残念です」

「ふふ、また次に来た時はあるかもしれませんから楽しみにしておきましょう?」

「!!……はい!それもそうですね!!セリーヌ様のおかげで立ち直れました!!」

「えっ!?あ、いえいえ?」

「それにしても何にしようかなー?」

「私はこちらのAセットにしようかしら」

「へっ!もうセリーヌ様は決められたのですか!?えっえっと……Cセットにしよう!」


エレノア様は非常に元気で素直な方のようだ。

貴族の令嬢としてはまだまだ詰めが甘く、おそらく前の私なら注意をしていたであろう。

そういう所が悪かったんだろうな……。

落ち込みそうな気持ちを引っ込めて顔を上げる。

彼女は注文を済ませてからも頬を染めて緊張した様子であった。


「どうかしましたか?」

「あっ……えっとぉ……実を言うと私、セリーヌ様のファンなんです!!」

「ふぁ、ファン?」

「私、子爵家の中でも特に田舎の育ちなんですけど……前に殿下の誕生日パーティーがあった日の事を覚えていらっしゃいますか?」

「ええ……」

「その日、初めてパーティーに参加して浮き足立っていたんです。殿下には挨拶する勇気もなくて食事をひたすらしていたんですけど、突然ざわざわとしだして……」

「あぁ……あの」

「はい!その時に見たセリーヌ様の凛とした佇まいにもう惚れてしまいまして!!こうやってお話出来たらとずっと夢見ていました!!」

「それは嬉しいわ、ありがとう」


この子が嬉しい事を言ってくれるものだから、自然と笑顔になる。

それは心からの咲き誇るような笑みであった。

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