最強伯爵家の一人娘で、学園一の人気者で、成績も優秀です。でも、好きな男の子に告白したら、嫌悪の目で『お前、この物語の悪役令嬢だろ』って言われました。
皆さん、こんにちは!
この物語は、外見は完璧に見えるけれど、心の中では本当の感情と戦っている一人の少女の物語です。
主人公のヴィクトリアは、強くて、裕福で、優秀だと見られていますが、好きな人の前ではどうしようもなくなってしまい、誤解による痛みを感じてしまいます。
もしかしたら、皆さんの中にも、彼女のように誰にも理解されないと感じたことがある人がいるかもしれません。
楽しんでいただければ幸いです!
「あれ、あそこ歩いてるのってヴィクトリアじゃない?」
「うん、毎朝まったく同じ時間に登校してるよね。あの金色に輝く髪、ほんとにカッコいい」
「男子たち、みんなうっとりして見てるじゃん。でも本人は誰にも興味ないみたい」
「最強の伯爵家の娘って、どんな気分なんだろうね?」
「私たち中級貴族には分からないよ」
「シッ!聞こえちゃうよ、今ちょうど通り過ぎたところ」
──今日もまた、そんな囁きに包まれながら、私は登校する。
「最強の伯爵家の一人娘」「学園一の優等生」「誰もが憧れる存在」──
これが、私、ヴィクトリア・グランディールに対する他の生徒たちの印象。
でも、最初はみんな私のことを、「高飛車」「近寄りがたい」「金持ちのお嬢様」と決めつける。けれど実際、私はそんな人間じゃない。
私は友達も多いし、勉強で困っている子たちに手助けもしてる。
それに、学園に通う中級貴族の生徒たちが、もっと平等な環境で学べるようにと、生徒会長に何度も嘆願書を出してるくらいよ。
「もうこれ以上手伝わないでください」
「……えっ?」
「ヴィクトリア様の助けが多すぎて、自信を失ってしまうんです」
──昨日の朝、学園の食堂で中級貴族の女の子に、少し怯えた様子でそう言われた。
上級貴族に向かってそんなことを言えば、普通なら怒りを買うかもしれない。
けれど私は、彼女たちがそれで幸せになれるなら、何も言うつもりはない。
もう嘆願書は出さないと決めた。これは私の個人的な意思。
もちろん、私のことを好意の目で見てくる男子たちの視線にも気づいてる。
告白も毎日のように受けてるけど、全部ちゃんと断ってる。
でも、断れば断るほど、なぜか告白してくる男子が増えていく気がするのよね……。
「高嶺の花」だとか、「手の届かない女神」だとか、そんな風に言われてるらしいけど──
私は神様なんかじゃない。ただ、私は初登校の日から、誰にも言えない相手にずっと恋をしてる。
毎朝同じ時間に登校してるのも、その彼に会うため。
彼は私とは違うクラスで、しかも放課後はクラブ活動で忙しいから、朝の登校時間くらいしか彼を見る機会がないのよ。
あ、来た!今日も時間ぴったり!
彼──エドワード。黒髪に黒い瞳、そのすべてが私の好みにドンピシャ。
でも、ひとつだけ問題がある。彼は、私のことをまったく相手にしてくれないの。
視線が合っても、すぐに逸らされる。最初は照れてるのかと思ったけど──どうやら違ったみたい。私を避けてる……?
まただ!また目を逸らされた!もう耐えられない……!
私は今日、たとえ振られたとしても、この気持ちを伝えようと決めた!
放課後、学園の裏庭の林に来てほしいという手紙を、彼の机の中に入れておいた。
彼が中級貴族であっても、紳士としてこの招待を無視することはないはず。
木に背を預けて、エドワードが来るのを待つ。
正直、心臓がバクバクしてる。
これが人生初めての恋なんて、誰が想像できただろう。
足音が聞こえる。振り向くと、ゆっくりと歩いてくるエドワードが見える。
両手をポケットに入れて、無表情で近づいてくる。
「なぜ呼び出した、ヴィクトリア」
不機嫌そうな表情が読み取れる。
でも……私は負けない!
「エドワード……私は……あなたが好きです。どうか、この気持ちを受け取ってください!」
震える手でスカートを握りしめながら、精一杯、勇気を振り絞って想いを告げた。
お願い……私の蒼い瞳を見て……この真っ直ぐな気持ちを感じて……!
しかし、彼は私をじっと見た後、突然私の肩を掴んできた。
……やった、これはきっと受け入れてくれるサイン!
「ヴィクトリア、お前俺のことをバカにしてるのか? お前の中の“悪意”に気づかないとでも思ったのか?」
「……え?」
「まだ分からないのか? お前は“善人のふり”をして、周囲を騙してるだけだ。本当は冷酷で、自己中心的な悪女だ」
「な、何を言って──」
「ハッキリ言おうか? お前はこの“物語”の悪役令嬢なんだよ。俺は異世界から転生してきた。知ってるんだ、お前が最終的に王子フィリップの婚約者を殺すことを──!」
「……えぇっ……?」
何を言っているのか理解できなかった。
目の前が真っ暗になりそうだったけど、木に背を預けていたおかげで倒れずに済んだ。
「フィリップは幼馴染なだけよ! 興味なんてなかったし、彼はもうすぐ別の女性と婚約するの! そんな馬鹿な話……!」
「まだ演技を続けるつもりか。あの婚約者を認めたふりをして、本当は憎んでいるんだろ?」
そう言い残して、エドワードは私の前から去っていった。
異世界転生?
悪役令嬢?
演技?
……一体何を言ってるの……エドワード……。
次の日、エドワードは登校してこなかった。
でも、昨日の言葉が頭から離れない。
もしかして、エドワードも他の人たちと同じく、私に対する先入観でそう思っているだけじゃ……?
そうだ、そうに違いない! きっと誤解してるだけ!
次の日、彼が学校に来たことを確認して、私は決意する。
彼に私の“本当の姿”を見せるんだ!
【作戦①:手作りランチでアピール作戦!】
エドワードが昼休みに教室で食事をするのを知っている。
だから、みんなの前で手作りのお弁当を差し出してみせる!
(はい、あなたのために作ったの。食べてくれる?)
教室に入ると、ちょうどエドワードが一人座っていた。
私は深くお辞儀をして、手作りのお弁当を差し出す。
「ヴィクトリア様が誰かに弁当を!?」
「なんでエドワード!? 下級貴族なのに……」
──教室中に、期待通りのざわめきが広がる。
これでエドワードも意識するはず──!
「……悪意のこもった食べ物なんていらない」
──え?
私は彼が皆の声に影響されると思っていた。
でも、彼は無言で立ち上がり、私を無視して教室を出て行った……。
【作戦①:失敗】
だが、噂はすぐに学園中に広がった。
【作戦②:地道な善行アピール作戦!】
今日はエドワードが当番の日。
彼の代わりにクラスの日誌を職員室まで届けようと思う。
教室の前で彼が出てくるのを待つ。日誌を手に持っている彼に、私は笑顔で話しかけた。
「エドワード、今日はあなたが疲れないように、私が日誌を運ぶわ」
きっとこの優しさで、彼の心も少しは揺れるはず──
──バン!
教室のドアが、私の目の前で勢いよく閉じられた。
【作戦②:失敗】
……だけど、私はまだ諦めない。
【作戦③:屋上から全校生徒に想いを叫ぶ!】
──最後の手段。
エドワードに、私が本気で彼を想っていることを伝えなきゃ。
「フィリップなんて好きじゃない! 私が好きなのはエドワード! 全校生徒、聞いて!!」
何度も何度も、声が枯れるまで叫んだ。
たとえ“女神”と呼ばれていたって、この気持ちを隠すつもりなんてない──!
そして、走ってくるエドワードの姿が見えた。
彼は屋上に駆け上がってきて、私の目の前に立つ。
「たとえ世界中を甘い言葉で騙せても、俺は騙されない。お前はこの物語の悪役令嬢だ。絶対に変われない」
「……エドワード、私は本当にあなただけが好きなの! どうして信じてくれないの!?」
その瞬間、彼の背中を支えていたフェンスが、音を立てて崩れた。
「エドワード!!」
──私は彼の手を、力いっぱい掴んだ。
「ヴィクトリア……どうして……原作通りにしないんだよ……?」
「もういい加減にして、エドワード! 手を、もっとしっかり掴んで!」
ようやく彼は、もう片手でフェンスの破片を掴み、なんとか屋上へと戻ってきた。
二人して地面に倒れ込み、青空を見上げる。
「バカ……死ぬかと思った……エドワード……」
涙が止まらなかった。
彼は……突然、笑い出した。
「……なに笑ってるのよ?」
「もしかして……“悪役”って、意外と善人だったりもするのかもな──」
──私たちは、しばらく無言で、空を見上げていた。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!
ヴィクトリアの真っ直ぐな気持ちは、果たしてエドワードの偏見を少しずつ壊していけるのでしょうか?
これは「悪役令嬢の恋の戦い」であり、同時に「誰かの心に届く努力」の物語でもあります。
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