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聖女は王の元に、俺は闇に──堕ちた英雄の復讐譚  作者: 雷覇


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第26話:ガルザイル撃破

ガルザイルの喉奥から、地鳴りのような唸り声が響く。

その身をわずかに沈め翼を広げた次の瞬間、

大地を蹴るようにして竜が飛翔した。


「来る――ッ!!」


風が裂け、魔力の濁流が空を走る。

炎の奔流が、まるで竜巻のように放たれた。


「アリス、援護を! クロウ、右へ回り込め!」


カインが怒鳴るように指示を飛ばす。


アリスは頷き、静かに一歩踏み出す。

その背から黒い羽が舞い上がりガルザイルの周囲に散るように広がっていく。


「……触れれば爆ぜる。けど、あの鱗、分厚い」


羽が一枚、翼の端にかすった。

小さな爆音――だが、ダメージは浅い。


「やっぱり、真正面は無理……!」


「なら――回り込む!」


クロウが獣のように駆ける。

大剣を引きずりながら走り込み、地を砕く一撃をガルザイルの脚に叩きつける。


金属のような打撃音。

衝撃で竜が一瞬、バランスを崩した。


「隙ありだ、カインッ!!」


「……今だ!」


闇の奔流がカインの剣に集まる。


足元から疾風のように跳躍し――

その姿は黒い閃光と化して、ガルザイルの首元へ斬りかかる。


「喰らえ――ッ!!」


しかし――その刃が、届く寸前。


ガルザイルの尾が、信じられない速さで横なぎに弾かれた。


「――ッ!!」


カインの身体が吹き飛び、石壁に叩きつけられる。

地面に転がりながら、咳き込み、立ち上がる。


「……ちっ、動きの癖が読めねぇ……竜なんかと戦うのは初めてだからな」


その時、背後に雷鳴が轟いた。

空から降りてくるのは――ザイ。


「空は任せろ、カイン。俺がこいつの翼を折る」


稲妻をまとったザイが、竜の背に突撃する。


「雷槍連撃!!」


空中で炸裂する雷の連撃。

ガルザイルの動きが、わずかに止まった。


そこへ――


そのわずかな隙に、カインが再び立ち上がり、叫ぶ。


「みんな、もう一撃入れるぞ!

 この怪物を地に堕とすまで、決して止まるな――!!」


闇と雷、羽と鋼、魔法。

すべての異端が今、ひとつの敵に向かって収束していく。


ガルザイルの身体が、雷撃と拘束魔術によってわずかに軋んでいた。


その巨体を抑えるため、アリスの羽が再び宙に舞う。

無数の黒い羽が空中で旋回し、竜の各所に落ちていく。


「……お願い。せめて、少しでも動きを止めて――」


羽が鱗の隙間に入り込んだ瞬間、内部から爆裂音が走った。

左の前脚が一瞬ひざまずくように崩れ、ガルザイルの咆哮が空を震わせる。


「今だ、もう一度叩き込むぞ!!」


カインが叫び、漆黒の剣を構える。


だが――

そのとき、ガルザイルの体から異様な光が吹き出した。


「……!?」


リアナが魔導波の変動に気づく。


「まずい、エネルギーが膨張してる……!」


ガルザイルの口元に集まる禍々しい魔力。

それは、先ほど制御塔を焼き尽くしたものとは比にならないほどの圧縮。


「このまま撃たれたら、ここ一帯が……。今しかない……あの喉元を貫けば!」


カインは力を一点に集中させ、身体ごと突撃する。


「――喰らえぇッ!!!」


渾身の一撃がガルザイルの咽喉を直撃する。

竜の顎がわずかに逸れた。

放たれた光線は軌道を外れ、山の向こうを焼き裂く。


その一撃に、全員が動きを止める。


しかし――


「まだ、倒れてない……!」


アリスの声が震える。


炎と黒煙の中、傷ついた竜の身体が、なおも姿勢を維持していた。


だが、その動きは明らかに鈍い。

鱗のあちこちに亀裂が入り、瘴気が抜け落ちている。


リアナが息を切らしながら叫ぶ。


「あと一撃! カイン、今なら――!」


カインが歩き出す。


「……ああ。みんなが切り開いてくれた道だ。

 なら、最後は――俺が終わらせる」


黒喰の剣に、全員の想いが重なるように、闇の光が宿る。

その一歩ごとに、大地がざわめく。


「これは、黒の軍勢としての意思だ。

 奪われた者たちが、世界に一矢報いる――」


跳躍。


ガルザイルの目がカインを捉える。

だが、動けない。


「――《闇喰・断罪剣》ッ!!!」


空間が一閃された。

刃が、首元を深々と切り裂く。

その瞬間、竜の咆哮が止まった。


巨大な身体が、ゆっくりと崩れ――

ついにガルザイルは地に伏した。


カインが、剣を収めた。


「……終わったな」


誰も、すぐには言葉を返せなかった。

ただ、戦いの終わりが確かに染み渡っていく。

そして、空が晴れた。

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