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小話 ー 争奪戦 ー

童心に帰りすぎたエリート達。

「皆の衆!よく集まってくれた」


 南宮の使用人用控室に、多数の若い侍従が集められていた。


 第三皇女アルティリアの誕生祝いの際、兄フェルディナンド第二皇子から贈られた昆虫、ヘラクレスオオカブト。


 その名もヘラクレスの「クーちゃん」様。

 名付け親はアレクサンドロス2世。


 クーちゃん様のお世話係補佐を決める事になったのだが、希望者が殺到した。


 ヘラクレスオオカブト。


 幼き頃、図鑑で見た最もカッコイイ昆虫であったヘラクレスオオカブト。憧れのヘラクレスオオカブト。少年の頃の憧憬が蘇った男達が集結した。


 ヘラクレスオオカブトはこの大陸には生息しておらず、高位貴族や巨大な販路を持つ商人でも入手は困難。著名な昆虫学者が繁殖に成功したという話は聞いていたが、それはあくまでも研究対象であるため、売買はされていない。


 しかし、昆虫を始めとした生物全般に広く興味を持つ第三皇女と、繁殖に成功した昆虫学者とは面識があり、アルティリア殿下ならばと、フェルディナンド第二皇子を通じて贈られる事になったのだ。


 だがヘラクレスオオカブトの信奉者(ファン)は姫君だけではなかった。


 ああ、ヘラクレス、偉大なるヘラクレスよ。

 憧れのヘラクレスオオカブト。


 お世話係補佐ともなればクーちゃん様にお目に掛かれる。なんなら、手に乗せても良いとお許しを頂けるかもしれない。


 本物を見たい!

 触りたい!


 ちなみに役職が「補佐」であるのは、皇女自身が世話をするので、その補助をするのが役目だからだ。ペットを飼う皇族は非常に生き物が好きなので、自ら世話をする者が殆どだ。しかし、全てを皇族にさせる訳にもいかない。


「では、各々主張があると思うが、ここはくじ引きで……」

「待たれよ!」


 若手侍従のまとめ役の言葉を遮って現れたのは、若い騎士や準騎士達。


「そのお役目、騎士団にて引き受ける!」

「な、なんだと!?」


 ヘラクレスオオカブトの信奉者(ファン)は侍従だけではなかった。


「騎士団の主張は明らかな越権行為だ!立ち去れい!」

「我々は馬や軍用犬の世話、魔獣種討伐や捕獲などを通し、貴殿らよりも生物の取り扱いには精通している!」

「詭弁だ!アレクサンドロス2世殿下のダンゴムシの時は、そのような世迷言は申さなかったではないか!」

「いや、ダンゴムシは危険性は低い。ヘラクレスオオカブトの腕力を甘く見るな!」

「戯言を!騎士団は魔獣種の蜘蛛と戯れておればいい。この脳筋虫め!」


 あわや騎士団と侍従達の戦争勃発となりかけたが……


 騎士団の隊長職が現れ「いや、普通に騎士団、関係ないからな」と、騎士達は叱られた。


 また、侍従達も侍従長に「いや、普通に(うえ)を通して、断ればいいだろう。熱くなり過ぎ」と、叱られた。


「まあ、そんな事があったの」


 アルティリアは、レネと一緒にクーちゃんの餌を取り替えている時に、侍従達と騎士達のいざこざの話を聞いた。


 てっきり侍従の誰かが手伝ってくれるのかと思っていたら、クーちゃんの世話係補佐はレネに決まったというではないか。女性は虫が苦手な者が多いが、レネは蜘蛛以外ならば問題ないらしい。しかし、リーフの世話を一緒にしてくれているのは侍女なので、クーちゃんは侍従にお手伝いをお願いしようと、侍従長に依頼していたのだ。


「何かあったの?」


 アルティリアに尋ねられたレネは困ってしまった。我が姫君に侍従と騎士の下らない争いなど耳に入れるつもりはなかったのだが、聡いアルティリアは、お見通しだったようだ。


 レネはカブトムシの世話が増えるくらい何てことないので、気にしないで頂ければ、それに越したことはないが、下手に隠すと心配させてしまうかもしれない。


「実はですね」


 レネは説明をしながら段々と腹がたってきた。侍従と騎士がカブトムシを取り合った結果、レネの大切なお姫様の心を煩わせたのだ。おのれ、覚えていろよ、彼奴等め。後でグリグリと締め上げてくれるわ。


「喧嘩するような輩にはクーちゃん様を任せられないという事になりました」

「まあ」

「本当に呆れてしまいますよね」

「だったら……」


 しかし、レネの企みは実現しなかった。


「皆、そんなにクーちゃんに会いたかったのね。ちゃんと反省して、今後は仲良くするって約束するならクーちゃんを見に来ても構わないわ」


 ぐぬぬ……であった。


 アルティリアにそのような事を言われてしまったら、精神的に彼らをぶん殴るなんて出来やしない。


 諍いを起こした侍従達は反省文提出、騎士達は通常訓練三倍増し。それらをこなし、ちゃんと和解したならば。


「クーちゃん様との面談をお認めになるそうです」


 レネはアルティリアの申し出を侍従と騎士達に伝えた。


「します!します!和解します!」

「我々は盟友であります!」

「おおおお!ヘラクレス!」


 侍従と騎士達は手を振り上げて大喜びだ。子供か。


 レネは「あんた達、アルティリア様を見習いなさいよ!」と言ってやりたい。


「第三皇女殿下のご慈悲に感謝して下さい」

「もちろんです!」

「ヘラクレスに会えるぞおおお!」

「うおおおお!」


 こうして、侍従と騎士の「クーちゃん様を囲む会」が開催された。

この世界のヘラクレスオオカブトは、こちらのヘラクレスオオカブトと比べものにならないくらい希少。


ちなみにリーフのお世話係補佐も女性陣の人気職です。

リーフ「キュイ」

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― 新着の感想 ―
あー、ヘラクレスオオカブトは夢ありますものねー。 ヘラクレスも良いけど、ネプチューンオオカブトはまた格別! 甲乙つけ難し! クワガタもまあ好きなんですけど、平たい体型がちょびっと苦手。 あの “丸っ…
この中では姫様が一番大人な気がします それとレンはオオカブトよりも 「俺の姫様は、動物·昆虫·従者全てに優しい」 ってなっていそう
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