オリンピックでメダルを取れる人の考え方を妄想してみた
私の名前は歌丸博。陸上の110mハードル走のオリンピック代表候補選手だ。しかし、ネットでの肯定意見や批判意見について悩んでいてなかなか思い切った走りができない。走るのはけっして遅くないのだが、転んでしまうことがありとても緊張する。前のめりになるとなかなか体勢を整えるのが難しいのだ。
そんな気持ちの中でまた選考にかかわるレースがやってきた。このレースで3位以上に入るとオリンピックに内定するのだが、やっぱり転んでしまわないか不安になるが、何はともあれ一発勝負。やるしかないだろう。
位置について、よーいどん。おなじみの掛け声のもとにハードル走が始まった。私の走り方はハードルを飛び越えずそのまま突っ切るスタイルだ。次から次へとハードルをなぎ倒していく。結構痛いがこの方が自分には合っている気がする。
とにかく痛くても私は突っ切ることに徹した。やはりオリンピック内定の実績はどうしても欲しい。そんなこんなで走っていたらゴールが見えてきた。無事一位でレースをクリアした。
ゴールしたとたん思いっきりずっこけた。気持ちの上で尖っていたものが一気に吐き出せた気分になり気持ちよかった。
ネット上での私の評価もなんとなく上がった感じのようですが、最後のずっこけは無いわとネタにされていた。(エピソードふくらます)速く走るために編み出した韋駄天走法という走り方はどうしても走るときのバランスが悪くなり前のめりになる。
ネット上ではあれこれ言われていたが具体的にはこんな感じのコメントがあった。
① あいつ早いな 結構いけるんじゃないか?
② あんな前のめりでも転ばないのが不思議だな。
③ 俺の方が速く走れるけど痛いのは嫌だからお前が代わりに頑張ってくれ
④ 短距離以外でも行けるのかな?いろんな競技で見てみたいな
⑤ 禿てることに突っ込んだら負けかな
⓺ 髭長い
⑦ 身長めっちゃ高いな
⑧ 走った後ものすごいぐったりしてたけど早死にしそうだ
そして月日は流れついにオリンピックの日がやってきた。選手村での生活は中々落ち着かなかったがいろんな選手と交流できたのは勉強になった。100m走の選手と交流できた時は必勝法を聞いてみたが基本的にはないというのが現実のようだ。選手村で過ごしている間の日数はメンタルや心臓への負担が大きかったがそれでも何とか頑張ろうと思った。
110mハードル走の時間が回ってきた。だが始める前にどうしても不安なことがあった。そうフライングだ。最近の陸上競技はフライングをすると一発退場なので本当に厳しい。フライングと転倒と足の痛みと走る速度。この辺をどれだけ本気を出して調整できるのかがやってみないとわからない。
10秒前になって私の精神は明鏡止水の境地に達していた。とにかく余計なことを考えない。これが正解だろう。無駄なものを排除した状態はアスリートにとって最良のポジションを引き出すのだ。どんな批判的な意見が飛び交おうがこの時だけは気にならない。よーいスタート パーン レースが始まった。
とにかくレースが始まってからはひたすらつっきた。どれだけ足が痛かろうがお構いなしだ。障害のハードルをどんどんぶっ壊しながら進んでいく。後で聞いたら忍者走りをしていたらしい。正直走ってた時のことはもう思い出せないのだが、一度転倒してしまったらしい。ただ転倒しても受け身を取って起き上がったので大きなタイムロスを防げた。(情景をふくらます)受け身は実は空中で回転する形でとっている。よく転ぶのでいざという時のために練習しておいたのだ。オリンピックに出れる人は多少の物理法則は無視してしまうケースも0ではないようだ。色々な説があるが、個人的には地球の重力が一時的に機能しない空間を作り出せるような人がいるのではと感じるところがある。
記録は13秒10 世界記録には及ばなかったが3位に入るとこはできたのでメダルを取ることはできた。表彰台に上ってメダルを受け取る映像を会場に来ていた両親から後日見せてもらったがやはり感極まるものがあった。それはそうと悩むのは4年後だ。私の体力が4年後でも通用するのかがどうにもわからない。あるいは別の競技に転向することも考えられるかもしれない。4年後の自分今から想像するのも楽しいが世の中の矢面に立たされて緊張する生活からも解放されたいので悩むところだ。
やはりネットは見てしまった。コメントはこんな感じだった。
① 転んだところからよく持ち直した。偉い。
② 本番でずっこけるような奴は代表に向いてないのでは?
③ 転んだら負けかなと思ったけどそういうもんでもないんだな
④ あんな無茶苦茶な転び方できるやつ初めて見た
⑤ ハードルなぎ倒し毎回痛々しいですが面白いです
⓺ 歩幅滅茶苦茶大きい
⑦ 金は惜しくも逃したが銅でもいい実績になったよね
⑧ メダルかじるな
4年後も続けるか迷ったが結局私は引退した。プレッシャーの強さに振り回されるより自分の意見を次の世代に託す方が私には向いていたのかもしれない。ただ、やるからには育成した選手で金メダルを狙いたい。頑張ればなんとかなるだろう。