第11話 塩にこだわる者
「うむ。やはり塩が一番だ」
彼はサラダに塩を振りかけて口に運び頷く。
「最近の若者はサラダにまよねーずやら、〇〇のどれっしんぐやらをかけるが塩こそが一番うまい」
塩をかけたサラダをむしゃむしゃと食べる。彼は塩にとことんこだわる者だ。そんな彼を塩の虜にしてしまった人物こそ
「塩こそが調味料の中で一番なのだ」
それは彼の亡くなったお父さんの死ぬ間際の言葉だった。それ以来、彼はとんかつといえばソースではなく、塩。刺身といえば醤油ではなくわさびと塩。鍋といえば醤油や味噌などではなく塩だ。
「ふむ…。串揚げが食べたくなったな…」
彼は玄関で靴を履くと外へ出る。そして、串揚げ専門店に辿り着くとカウンターに座る。目の前に映るのは"ソースは2度漬け禁止"だ。
(ふん。そーすではなく塩で頂くものだ)
彼の前に串揚げが並ぶと、隣の青年たちが酒を飲みながら串揚げにソースをたっぷりつけて口の中へ運ぶ。
「ん~~!うめ~!やっぱり串揚げっつたらソースだよな!」
「んだな!俺のじいさんったら何でも調味料は塩だ!って言い張るけどな」
青年たちの会話を頷きながら串揚げを塩で食す。
「じいさん曰くむか~しテレビで、"塩こそが調味料の中で一番なのだ"ってセリフが流行ったらしいな。それで塩ブームが起きたんだって」
「なんだそれ!好きな調味料で食べたほうが人生得だろ」
青年たちが大笑いする声が響く。彼は迷う事も無く、串揚げにソースをたっぷりつける。




