93話
もうすぐリュドと婚約パーティをした日。私達の結婚式の日にもなる。
リュドは数日前から子爵家のタウンハウスに帰っているわ。この数日は結婚式に招待していない、親戚や関わりのある家や友人を招いてお茶会やパーティをしているの。
教育が始まったばかりの子供達も居て、とても可愛らしいご挨拶をしてくれたの。私も初めてのお茶会は、どなたかの結婚だったと思い出して懐かしかったわ。
「お嬢様、先代様がご到着されました」
「すぐに行くわ」
サロンへ入ると両親もすでに来ていた。
「お爺様、お祖母様、お会いできて嬉しいですわ」
「リリ、大きくなったね」
「まぁ、綺麗になったわね」
「お2人共、お元気そうで何よりです」
ここ数年お祖母様の体調が良くなくて、お手紙だけだったから久しぶり会えてとても嬉しいわ。皆でゆっくりお喋りを楽しめるなんていつぶりかしら?
お爺様は投資等がお好きというか「気になる」「気に入った」という、かなり雑な感じで当たるという恐ろしい才能を持っていらっしゃるわ。
お父様に爵位を譲ってから私の教育が始まるまでは、カントリーハウスで共に過ごしたわ。今はお祖母様と別荘でのんびり過ごしながら資産を増やし続けているの。魔道具の開発支援等、人材の育成を楽しそうにされているわ。
若い人と関わると若返るんですって。
「リリのお婿さんに会えるのが楽しみだわ」
「私もお祖母様達に紹介できるのが嬉しいです」
「ふふ、リリの結婚式を見られるなんて長生きはするものね」
この世界の平均寿命は今は60歳前後。2人はもうそういう考えになるのね・・・。
「私が子供を産んだら私の幼い頃のように、お2人に遊んで貰いたいわ」
「そうね。リリの教育が始まるまではカントリーハウスに居たからよく遊んだわね」
「しかし、私達は息子だったからなぁ・・・リリの婿か・・・何となく腹が立つ」
「父上・・・嫁に出すわけでは無いんですから」
「わかっておるが・・・」
「ふふ、あなた。リリが選んだ人だもの大丈夫よ」
お祖母様が宥めているけれど・・・大丈夫かしら?
*****
お祖母様達には社交デビューの前までは時々会いに行っていたのよ。私は社交と勉強で忙しくなり、その頃からお祖母様の体調が悪くなり寝込むことが増えてからは、会えなくなってしまって寂しかったわ。
怪我は光魔法で治せるけれど病気には効かないの。
それを知った時は「異世界あるある」なのねって落胆したわ。物語でもそうだったけれど、聖女様とか特別な力がないとやはり病は直せないのかと・・・。
スキルで前世の薬を出す事も考えたけれど、私自身に医療の知識が無いから諦めたわ。正しい処方や治療が出来なければ、助ける前に命を縮めることになるかもしれないもの・・・。
お祖母様とお母様と庭でのんびりとお茶をする。
「リリも結婚する歳になったのね。しかも好きな人と」
「ふふ、私もビックリしているわ。でも、お祖母様達もお母様達も政略なのにとても仲が良いから、政略でも良い関係は作れると思っていたわ」
お祖母様達は政略が当たり前だったし、お母様達の世代も政略の方が多かったと聞いたわ。
「リリ。私達が上手くいったのはお祖母様のお陰よ」
「そうなの?」
「ええ。婚約中は普通の仲だったの。嫁いでお祖母様から、まずは夫と友人か伯爵家を共に守るパートナーになりなさいと言われたの。もし好きになれなくても、そういう付き合い方なら出来るでしょうって」
「あら、だって結婚したからと互いに好意を持てるかはわからないわ。私はエレーヌがお嫁に来てくれてとても嬉しかったから、無理はして欲しくなかったの」
「お祖母様がそうやって見守っていて下さったから、リリの事も見守れたわ。すごーく聞きたかったし、あれこれ口を出したいのを我慢してね」
「ふふ、お母様はティナと似ているのに、何も言わなかったのはそのせいなのね」
お母様もティナと同じで夢みる乙女思考だから、不思議だったけれど1つ謎が解けたわ。
「そういえば、ティナも結婚するのよね」
「ええ。お相手のアンドリュー様は優しい方よ」
「サムも結婚してしまったものねぇ。孫達が結婚するのだから、私も歳をとるわけね」
お祖母様達はサミュエル様を、いまだに「サム」と愛称で呼ぶわ。サミュエル様を愛称で呼ぶ人ってほぼ居ないのよね・・・お爺様なんていまだに「サム坊」と呼んで、子供扱いしているらしいわ。
「お祖母様、サミュエル様はお父様になるのよ」
「あらあら!おめでたい事は重なるものねぇ」
久しぶりのお祖母様とお母様とのお茶会は、終始笑顔の絶えない楽しいものとなったわ。
*****
明日はとうとう結婚式なのね・・・。
眠れないといけないから、先生に睡眠薬を出してもらったわ。
早く結婚したいと思っていたのに、いざその時が来ると緊張するわね。卒業してからリュドと生活を共にしてきたけれど・・・夫婦になるのは、また少し違うのかしら?
サラから婚姻後から「奥様」と呼び方が変わると言われて、何だかむず痒いような照れくさいような感じよ・・・。
リュドが婚約した後に使用人の皆から「リュドヴィック様」と呼ばれるのが慣れないと言っていたけれど、こんな気持ちだったのかしら?
「夜更かししたら、明日サラに怒られてしまうわね」
睡眠薬を飲みベッドへと潜り込む。
緊張して眠れないなんて始めてね。薬が効いてきたのか、ゆっくりと眠りに落ちていく。




