85話
王宮の夜会では卒業パーティでのプロポーズが噂になっていた。最初は恥ずかしかったけれど、何度も言われると慣れるものね・・・。
サミュエル様とカトリーヌ様に声をかけられ、皆でデザートの所に移動する。
「リリ様のプロポーズされる所、見たかったわぁ」
「あんな大勢の前で・・・嬉しいけれど恥ずかしかったです・・・」
カティ様に言われると照れるわね。
「リュドがちゃんとプロポーズしてないって言ってたのをティナに話したら、アンドリューが怒られて卒業パーティでしろって言い出したんだ」
「ふふ、ティナは物凄く張り切っていたのよ。当日会場を仕切る2年生にもお願いしたのに、リュド様が間に合わないかもって凄くヤキモキしていたわ」
「でも、間に合って良かったな!ティナが帰って来て語ってたからな」
恥ずかしいわ・・・ティナったら誇張していないかしら?照れているとカティ様が内緒話の様に。
「そういえば、リリ様は「おねだり」は出来まして?」
初めて口付けした事が思い出されて顔が熱いわ・・・。
「あら?上手く行きましたのね」
リュドヴィックはリリアンヌから口付けるという、なかなかにハードルの高い事をしてきたのを思い出し。
「もしかして今度はカティ様の入れ知恵でしたか?」
「ふふ、可愛らしい悩みに少しだけ助言をしたのよ」
「慣らす楽しみを取らないで下さい」
「あら、リュド様はそういうタイプでしたのね」
「まぁ、そうですね」
2人は笑顔で何の話をしているの?私がカティ様の様になれる日は、やはり一生来ないわね・・・。
熱くなった顔を扇で隠していると、サミュエル様が呆れたように止めてくれた。私が恥ずかしさに震えているとティナとアンドリュー様も合流したわ。
2人はイエローにグリーンの差し色の揃いの衣装がよく似合っていた。
「皆、やっぱりここに居たね」
「あら?リリどうしたの?」
「リュドとカティのせいで瀕死だ」
リュドは頬を染めるリリアンヌを隠す様に抱き締め。
「アンドリューも楽しみにしていると良いよ。カトリーヌ様がリリとクリスティナ様に可愛らしい事を教えてくれたからね」
「そうなの?ティナが可愛い事をしてくれるのは嬉しいな」
クリスティナは何の事かわからず、小首を傾げるとカトリーヌが扇で隠しながら口パクで「おねだりよ!」と言うと真っ赤になった。
「リリ・・・やったのね・・・」
「結果的にそうなったのよ・・・」
「え?私もやるの・・・?」
「頑張ってね・・・」
顔を出してティナと話しているとリュドの腕の中に戻される。この状態も恥ずかしいわ・・・。
「普段、アンドリューが色々頑張ってるからな。たまにはティナも頑張れよ!何かは知らんが」
「知らないならお兄様は黙ってて!」
「せっかくお揃いの衣装なんだもの帰り送って貰う時なんて良いと思うわよ?」
「帰りを楽しみにしているよ、ティナ」
アンドリューの嬉しそうな笑顔に、クリスティナは真っ赤な顔で覚悟を決めた・・・かもしれない。
*****
明日には領地に帰るわ。
荷造りはサラが進めてくれて、ほぼ終わっている。先に送れるものは送ってあるから部屋が少し寂しいわね。
こちらの改装が終われば、この部屋を使うことは無くなるのね。
サラ達と4人でお茶を飲みながら。
「3年は長いようでやはり短いわね」
3年で本当に色々な事があったわね。ワンピースとドレスは山のように仕立てたわ・・・。
「メルとルゥはカントリーハウスは初めてかしら?」
「私は初めてです。広いと聞いているので迷わないか心配です・・・」
「広いわね。私も行った事がない所もあるからメルが迷っても仕方ないわ」
「え!?そうなんですか?」
「用のある所にしか行かないもの」
「私は仕事でありますね。門から邸が遠くて驚きました」
「タウンハウスと比べたら門から邸まで遠いわね・・・邸のその奥がルゥの旦那様の気になっている庭ね」
「旦那は領地に行ける事を凄く喜んでいましたよ」
私があの広大な庭を喜んだのは、グリーズとお散歩が出来る様になってからね。
「良かったわ。メルとサラは独身の使用人棟ね。ルゥは既婚者用の家族棟よ。使用人もこちらより多いから色々大変だと思うけれど、何かあれば言ってね」
そういえば、メルの恋はどうなったのかしら?
「メルはその後どうなのかしら?リュドの補佐の方とは」
「えっと、何度かデートをして・・・お付き合いする事になりました」
「まぁ!おめでとう!」
「ありがとうございます」
サラも恋人くらいは居ないのかしら?怖くてメルのように気軽に聞けないのだけれど・・・。
これからは邸の差配もするのよね。お母様に教わってきたけれど、上手く出来るかしら・・・。
*****
領地に帰る前夜、両親とリュドと4人で晩餐の席に着く。
「お前達なら安心して任せられるから、少し楽ができるな。私は事業の方にもう少し力を入れよう」
「あら?じゃあ一緒にティータイムを過ごす時間を増やしましょうね。そういう時に良いアイデアも浮かびますし」
「そうだな」
両親はいつも仲良くて何よりだわ。でも、お父様が事業の方に重きを置くほど、領地の事を最初から任せられるの?
「お父様、私は勉強の合間に出来る仕事しかしていないわ」
「確かにそうだが、リリアンヌには少し難しい案件ばかり回していたから大丈夫だよ」
お父様が言うのなら大丈夫かしら・・・。
「問題無くやれていたよ。自信を持ちなさい」
「ありがとうございます。お父様」
「仕事も大事だけれど、結婚式まで2人の時間も楽しみなさいね。この2年リリもリュドもよく頑張ったもの」
お母様の言葉にチラリとリュドに視線を向けると、リュドと目が合い微笑まれる。少し照れるわ・・・。
毎日顔を合わせて居たのは従僕の時だから・・・2年ぶりね。何となく照れくさいわ・・・リュドと一緒に暮らすのはどんな感じかしら?




