82話
グリーズには乗れないけれど、毎週厩舎には通っているわ。
妊娠がわかってから心配で毎日の様に来ていたらグリーズに溜息をつかれたの・・・。本当に溜息かはわからないけれど「まったく・・・病気じゃないのよ・・・」という感じで・・・。
だって心配なんだもの・・・。
それからは週に1回で我慢しているわ。馬って1年近く妊婦さんなのよ。そんなに長いと思わなくてビックリしたわ。
「グリーズ、私の乗馬の腕が落ちない様に見ててね」
今は色んな子に乗せてもらい馬場の中で乗馬を楽しんでいるわ。出かける時はリュドのソワールに乗せてもらうの。他の馬に乗るって言ったのに、いつもソワールしか準備されていないわ・・・。
「今日は貴方ね。綺麗な鹿毛ね」
ゆっくり歩きながら徐々に速度を上げ馬場を駆ける。1時間程で降りてご褒美の角砂糖をあげる
「貴方は頭の良い子ね」
「その馬は来年2歳ですが落ち着いているんですよ」
「じゃあ、そのうちお仕事があるのね」
帰る前にグリーズの所に戻る。
「グリーズはもうすぐ領地へ帰るのよね。王都より向こうは冷えるから気を付けるのよ」
出産と子育ては領地でするから、卒業までグリーズとお別れよ。またグリーズに乗れるのは来年の秋頃かしら?
*****
厩舎から戻り、サラに汗を拭いてもらい着替えると、丁度ルイーズが資料を持って入って来る。
「ルゥ、ありがとう」
「その場で指示できる事はリュドヴィック様が視察の時にしてくれるので仕事が減りましたね」
「そうね。あっ!メルも呼んでくれる?お茶をしながら皆と話したい事があるの」
「畏まりました」
皆で紅茶とケーキを食べながら。
「私は卒業したら領地に戻るわ。数年・・・もしかしら10年はハイシーズンしか王都には来ないと思うの。皆はどうしたいかしら?」
「私は産まれた時からお仕えしていますから、もちろんお嬢様に着いて行きますよ」
「ふふ、サラならそうね」
サラにも良い人を見つけて欲しかったわ・・・完全に仕事人間なのよね。
「メルはどうかしら?ご家族の事やこちらで良い方が居るのならタウンハウス勤務に出来るけれど?」
「私もお嬢様に着いて行きます。家族とはハイシーズンに会えますし・・・その・・・」
「どうしたの?」
「良いなと思う方も領地に行くので・・・」
「まぁ!そうなのね。どなたなのかしら?」
「リュドさんの・・・補佐をされているんです」
「知らなかったわ」
「メルちゃんの恋はお嬢様以外は知ってますよ」
何故かしら?私にも教えてくれても良いじゃない?
「上手く行くと良いわね」
「ありがとうございます、お嬢様」
頬を染めるメルはとっても可愛いわ。
「ルゥは旦那様と相談してからにする?」
「旦那も一緒で良ければ行きます。というか旦那の方が領地の庭に興味があって連れて行ってくれる様に頼んでくれと・・・」
「とても広いから庭師が増えるのは喜ばれそうだけれど、正直・・・庭ってどこまでを庭と言うのか疑問よ・・・」
「お嬢様のその話をしたら、整えられた庭もですが自然の庭に興味が出た様ですよ」
「森や池に?わかったわ。クリスに話をして卒業後は皆で戻れる様にするわね」
「ありがとうございます」
ふと気になった事を聞いてみる。
「ねぇ・・・ルゥは子供の事はどう考えているの?」
「出来たらラッキーくらいで考えていますね。結婚して1年は一応頑張りましたけど、今は自然に任せていますよ」
この世界は相変わらず子供が出来にくい。妊娠すれば元気に産まれてくるのに、自然な妊娠が以外と難しいのよね。
だから貴族でも早く跡取りを・・・何て言われないわ。妊娠しやすい様に妊活は頑張るのだけれどね。
「そうなのね。でも授かった時のためにも、貴女と一緒に仕事をする人達と色々と話し合って決めておいてね。領地へ連れて行く補佐は本人の意思もだけれど、ルゥが仕事をやりやすい人を選んで頂戴」
「ありがとうございます」
*****
晩餐の後、学園に寄付するワンピースの確認を頼まれた。
メルに「お嬢様も卒業する時に寄付してあげて下さいね」と言われてから、着なくなった物は侍女やメイド達にあげて、残りは学園に寄付する為に修繕して保管してきたわ。
「思ったより多いわね。どうかしら?」
「ウエストなど多少サイズが違っても、1人で着やすいようサイドで調整出来るようにしてあります」
背中で調整するデザインや1人で着るのが難しい物は、直せるものはメイド達に直してもらったわ。授業のある日は身支度が楽な方が良いでしょう?
「寮に侍女を連れて来られない方が居るから、どうしても直したくて。皆大変だったでしょう?ありがとう」
「いいえ。どう直すかお喋りをしながら楽しく作業が出来ましたわ。裁縫の腕も上がりましたのよ」
「ふふ、それなら良かったわ」
本当にたくさんのワンピースを仕立てさせられたわね・・・。
「でも3年はあっという間ね。皆が学園での話を聞かせてくれたから、色々と助かったわ」
「私共も懐かしくて楽しかったですわ」
メルだけじゃなくてメイド達も学園生活のちょっとした事をよく教えてくれたわ。特に逢瀬に使われやすい場所の情報は役に立ったわ。情報収集としてよ?覗きじゃないわよ?
夜会で面倒な方には「そういえば学園の・・・」と言えば大人しくなる方も居るものね。
侍女やメイド達とのティータイムは情報の宝庫なのよ。
でも・・・本当に卒業まであと少しなのね。学園に通っている間は成人していても、本当の意味で大人としては扱われないわ。準備期間みたいなものね。
私はちゃんと成長出来たのかしら?




