78話
サミュエル様とカティ様の結婚式は素敵だったわ。
この世界の結婚式は教会で女神様に誓い、夜は邸で夜会となる。ティナは感動して、泣き過ぎて目元が腫れてしまったわ。
「カティ様、素敵だわ・・・うぅ・・・」
「ティナ、また泣いたらもっと目が腫れちゃうよ」
内側を薄く凍らせたハンカチをアンドリュー様に渡し、ティナの目元を冷やしてもらう。
「ふふ、ティナは自分の時もたくさん泣きそうね」
「それにしても・・・豪快なブーケトスでしたね」
リュドに言われてカトリーヌ様のブーケトスを思い出す。
ブーケを投げたと思ったら風魔法でご令嬢に1輪ずつ下さり「次はあなた達が幸せになるのよ!」と叫んでサミュエル様がお腹を抱えて笑っていたわ。
繊細な魔力操作が必要な事も、何でもサラッとやってしまうのがカティ様の憧れるところだわ。
4人でお喋りをしていると挨拶回りを済ませたサミュエル様とカティ様が来た。
「ティナはまだ泣いてるのか?」
「お兄様じゃなくてカティ様が素敵で泣いているのよ!」
兄の結婚なのに義理の姉に感動し過ぎではないか?とサミュエルは思った。
*****
3人でソファに座りデザートを食べながら。
「リリ様達は今日もお揃いね。素敵ね」
「リュドが私の好きにさせてくれるので」
「いいなぁ・・・アンディー様とも色は合わせるけれどお揃いは少ないわ・・・」
「リュドは卒業後は社交用の衣装を作っていなかったのもあるわよ?」
「それでも羨ましいわよ」
「ふふ、私とサミュエルはあまり意識しないわねぇ。2人の話を聞いていると、とっても微笑ましいわ」
リュドの衣装が無いから揃えて作っていたけれど、揃えすぎだったのかしら?人に言われると少し恥ずかしいわね・・・。
「私・・・独占欲が強いのかしら?」
「あら?リリ様は奥手ですもの、それくらいがリュド様も安心するのではないかしら?」
「そうなのかしら?」
「愛されていると実感出来るのは嬉しいものよ」
確かにリュドに触れられたりするのは、恥ずかしいけれど気持ちを実感出来て嬉しいわ・・・。私も衣装だけでなく恥ずかしがってばかり居ないで、もう少し頑張りたいわ。
「リリ、最近より色気が増したわよね・・・」
「リリ様はお顔に幼さが残っているからかしら?頬を染められるといけない事を教えている気持ちになるわねぇ」
色気はわからないけれど、カティ様も大人の余裕を感じるのよね。羨ましいわ・・・。
私の顔は入学時からあまり変わらなくて・・・少し童顔なのよ。
「私はカティ様の余裕がある所が羨ましいですわ・・・カティ様は婚約中のスキンシップってどのくらいしていましたの?」
「そうねぇ・・・怒られない程度にかしら」
「カティ様。リリは口付けもまだなのよ・・・」
ティナ・・・何故バラしたの・・・。
「あら?そうなの?」
「したら・・・我慢出来なくなるからって・・・」
「あらあら・・・ふふ」
「やっぱり、婚約して1年以上経つのに変かしら?」
「それは人それぞれ違いますわ。リュド様はそれだけリリ様の事を大事に思っているのではないかしら」
とても大事にしてくれているのはわかるわ・・・けれど・・・。
「でも・・・子供扱いされているみたいで・・・」
「では、おねだりしてみては如何ですか?」
「おねだり・・・」
「ええ。求められて嫌な男性は居ないと思いますわ」
それは私からリュドに口付けをねだるの?そんな事・・・恥ずかしくて無理よ・・・。
「ふふ、リリ様は可愛いですわね」
「リリ。ちゃんと報告してね!」
「・・・無理よ・・・」
扇で真っ赤になった顔を隠す。2人は笑っているけれど、自分からねだるなんて普通なのかしら?
しばらくしてカティ様が夜会を退席された。
「こうして初夜の準備に下がるって恥ずかしいわね・・・」
「そうね・・・正直疲れているから普通に寝たいわよね・・・」
「え!?リリ・・・夢が無さすぎるわ・・・」
「だって私達も朝から大変だったわよ?」
「そうだけれど・・・」
クリスティナはリリなら初夜に普通に寝そうな気がすると溜息をついた。
*****
サミュエル達はリリアンヌ達から少し離れた所で3人で祝杯をあげる。
「まさか、サミュエルが1番とはね。親友の結婚って不思議な感じだなぁ」
「お前達は2人の卒業待ちだからな」
「いつ領地に戻るんだ?」
「カティが仕事をきりよく辞めたいと言うから年末だ」
「来年からはサミュエルとは領地の仕事で会う事になりますね」
「リュドは教育は終わりそうか?」
「ええ。今は覚えた事を実践で叩き込まれて視察に回っていますよ」
「それなら、リリを待たせなくて済みそうだな」
「そうですね・・・俺も早く結婚したいですよ・・・」
リュドの珍しい弱音に2人は驚く。
「鉄壁の理性と精神力はどうした?」
「リリは無自覚に削ってくるんですよ・・・。アンドリュー、今クリスティナ様は閉じ込めてドロドロに甘やかす溺愛系にハマってますよ。リリに何やら入れ知恵をされましたから」
「えぇ・・・僕はリュドみたいに平気で甘い言葉とか言えないんだけど・・・」
「頑張って下さい」
「ティナはいつまで夢見がちなんだ?」
3人は恋愛小説大好き夢みる乙女なクリスティナが結婚で変わるとは思えなかった。
「しかし・・・サミュエルはもう我慢しなくて良いとか羨ましい」
「え?リュド・・・お前そんなに大変なのか?」
「これでも色々と我慢しながら、リリを慣らしてますからね・・・恥ずかしがりながら素直に言う事を聞くので加減が難しいんですよ」
「ティナが余計な事言ってごめんね・・・」
「いえ、アンドリューは小説ばりのシチュエーションとか・・・そっちも大変ですね」
「本当にね・・・うちの侍女達にティナが好きそうなデートとか教えて貰って行くんだけど、現実でやるのは本当に恥ずかしいんだよ・・・」
「リリはつい先日、結婚したら初夜がある事を思い出したみたいですよ・・・」
「あいつ・・・そんなにこの手の事に疎いのか・・・」
「ええ。クリスティナ様の入れ知恵が無ければ、当日まで思い出さなかったと思いますよ」
「リュドは別の意味で大変だね・・・」
男は男で色々と悩みは尽きない・・・サミュエル以外は。




