76話
この前のデートはとても楽しかったわ。
胸を少しだけれど触られたのは・・・ちょっと・・・いえ・・・凄く恥ずかしかったけれど。
ハイシーズン中にデートに行けるなんて、思っていなかったから凄く嬉しかったわ。
でも、そのせいか・・・より寂しいわ。
リュドのくれたヌイグルミを抱きしめていても、最近なかなか寝付けない。普段から早寝早起きだから、いつの間にか眠ってしまい寝不足にはなっていないけれど・・・。
前に同じような事があって、顔色が悪いって心配されたものね。あの時は仕事のせいだと勘違いされたのだけれど。
リュドは教育をかなり頑張ってくれているわ。能力は元々問題なくても学ぶ事は多く、それに社交から離れていたから私には分からない大変さもあると思うの。
でも、パーティに出席してもそんなブランクは感じないし、教育も順調すぎるくらい。領地に戻る前に必ず私と一緒に過ごす時間を少しでも作ってくれるし。
「リュドってかなり私に甘いわよね・・・態度とか色々と甘いけれど・・・」
お父様達もいまだに仲睦まじくて、前世の外国の恋人同士のような感じなのよね。自分がそうなれる相手と婚約をするとは思っていなかったから、リュドの気持ちを実感できて嬉しいけれど・・・甘いのにいまだに慣れないわ・・・。
嬉しいのに恥ずかしいが勝ってしまうのよ・・・この辺りは前世のせいかしら?単純に私に経験が無いから?
「リュドはあんなに頑張ってくれているんだから私からも・・・好きとか言ってみる?」
うん・・・考えただけで凄く恥ずかしいわ・・・。
でも、年上だからとリュドに頼りきりというか、リードしてもらってばかりなのはどうなのかしら?
いきなり前世の愛を囁くのが当たり前な、外国人のような感じは無理よ。
前世の経験値の低さと奥ゆかしい国民性に今世の淑女教育で、前世より更に奥手になった気がするけれど・・・私もリュドにちゃんと気持ちを・・・時々は伝えたいわ。
それが出来たらスキルの事も話せるかしら?
*****
あの後、何度かリュドも出席するパーティや夜会があって、タウンハウスに戻っていた時に頑張ってみたけれど・・・恥ずかしくて言えなかったわ。
それはそうよね。急に人って変われないもの・・・。
でも・・・言おうと思うと挙動不審になってしまうのよ・・・。言いにくい悩みがあるのかとか、最近は会うと凄く心配され余計に言いにくいわ。
恥ずかしさから挙動不審なだけなのだけれど・・・。
「どうしたら良いのかしら・・・。何度か会っていたら恥ずかしいけれど、一度くらい「好き」と言えると思っていたのに・・・・・・諦める?」
ヌイグルミを抱えてベッドに転がり考えるけれど、せめてハイシーズン中は頑張りたいわ。
でも時間が経つほど言いにくいのよね・・・。
ただ、このくらい言えないとスキルなんて言える日は来ない気がするわ。
「仕事なら些細な事でも言えるのに・・・どうして恋愛だとこうなのかしら・・・はぁ・・・」
ティナに教材として押し付けられている、恋愛小説のヒロイン達は何故あんなにもスラスラと気持ちを言えるのかしら?
羨ましいわ・・・。
*****
今日はリュドと出席するガーデンパーティがある。今日こそはと思うけれど・・・言えるかしら?
でも、今回は晩餐を一緒に食べたら領地に戻ってしまうから、あまり時間も無いし言えなくても仕方がない・・・という言い訳は何回目かしら・・・。
沈む気分とは逆に、ピンクの少し華やかなアフタヌーンドレスを着せられる。髪はゆる巻のハーフアップ。何故こんなに気合が入っているのかしら?
ぼんやりしていてメルのされるがままだったせい?
エントランスに降りるとリュドは先に来ていた。
「リュド、遅くなってごめんなさい」
「今日もすごく可愛いね、リリ」
「ありがとう」
ガーデンパーティは問題なく終わり、帰りの馬車でリュドは隣に座り、毛先をクルクルと指に巻き付けご機嫌だったわ。
そういえば、リュドの好みって聞いた事がなかったわ。
「髪を巻いている方がリュドは好きかしら?」
「巻いてあるのも可愛いけど、いつものストレートの髪も好きだよ」
こういう感じでサラッと言えたらいいのに・・・難しいわね。
今日は晩餐の後にリュドは領地に帰ってしまうから、あまり時間が無いわ。はぁ・・・今回も言えないで終わってしまいそう。たった1度「好き」と言うくらい何故出来ないのかしら・・・。
「リリ、どうしたの?疲れた?」
「何でもないわ。大丈夫よ」
「本当に?」
「ええ。本当よ」
疲れてはいないわ。自分の恋愛に対するヘタレ具合に落ち込んではいるけれど・・・。
「最近会うと元気があまり無いね」
「そうかしら?」
「俺には言えない事?」
「そうじゃないわ・・・」
むしろリュドに言いたいのよ・・・勇気が出ないだけで・・・。
「無理に言わなくても良いけど、リリが元気ないと心配だよ」
へにょりと眉を下げて言われると何だか罪悪感が・・・。
「違うの・・・あの・・・・・・」
来る度に心配をさせるなんて・・・頑張って言うのよ!「好き」と言うだけよ!きっと言えるわ!
「あの・・・・・・リュドが・・・」
「ん?」
「あの・・・・・・」
もの凄く恥ずかしいし顔っていうか全身熱いし・・・ドキドキし過ぎて死にそう・・・。
「リリ?大丈夫?顔が真っ赤だよ」
わかっているわよ!何故こんな逃げ場の無い、馬車の中で言おうと思ってしまったの!?
でも、こうなったら言ってしまった方が楽になれるわ!
「リリ、言いたくなければ無理しなくて良いから」
「・・・リュドが・・・好き・・・」
「え?」
「リュドが・・・好きって言いたかったの・・・」
「もしかして最近様子がおかしかったのって・・・・・・ありがとう。凄く嬉しいよ」
もの凄く小さな声になってしまったけれど、ちゃんと言えたわ。ギュッと抱きしめられリュドの耳が目に入り少し赤くなっている。
「照れるけど本当に嬉しいよ」
体を離されて少し照れて笑うリュドの顔を見ていたら、顔中に口付けられたわ。喜でくれたのは嬉しいけれど手加減して・・・。
邸に着いて馬車を降りる時、恥ずかしさでフラフラになった私はリュドに抱き抱えられて降り事になったわ。
そのままサロンへ連れて行かれ、リュドが満足するまで膝に乗せられて晩餐まで過ごしたの。
言えたけれど、その後が許容範囲を超えて死ぬほど恥ずかしかったから・・・やっぱり無理は良くないわね・・・。




