74話
ハイシーズンはやはり疲れるわね。
メルがマッサージをしてくれてスッキリしたわ。
今年、リュドは夜会は絶対にエスコートしてくれるけれど、お茶会やガーデンパーティは来られる日だけだから、ハイシーズンでもあまり会えないわ・・・。
昨年は婚約したから挨拶回りの為にすべて一緒に出席していたの。リュドは王都と領地を行ったり来たりして、とても忙しくて、それはそれで心配だったわ・・・。
たくさん会えるのは嬉しかったわ・・・でも無理をして体調を崩さないか心配にもなるの。
なかなか眠れなくて、ヌイグルミを抱き締めてベッドの中で何度も寝返りを打つ。
「リュドに会いたいわ・・・」
*****
学園から帰るとサミュエル様達の結婚式のドレスの仮縫いが待っていた。
「マダム、いつもお待たせしてごめんなさいね」
「大丈夫で御座いますよ。では、お着替えの方を」
衝立の中に入りドレスを着せてもらう。
ブルーグレーというのかしら?光沢のある少しくすんだブルーのドレス。胸元から膝の辺りまで銀糸で刺繍を施されている。キラキラした石が所々に縫いつけられ動くと煌めいて美しいわ。
「まぁまぁ!リリアンヌ様には少々地味かと思いましたが、良くお似合いですわ」
「ありがとう。とても素敵ね」
この生地は別のドレスを作る時に目に入ってお願いしたの。他にも同じ生地のくすんだピンクとグリーンがあったから、そちらも作ってもらっているわ。
「リュドの衣装はどうかしら?」
「後は微調整だけですわ。リュドヴィック様はサイズがほぼ変わりませんからね」
リュドの衣装も銀糸で刺繍が施されシンプルなのに華やかだわ。
「サミュエル様達の結婚式は7月初めの週末だから涼しげで良いわね」
「そうですわね。では仕上がりましたらお持ちしますね」
「お願いね」
ドレスが終わると今度はパリュールと今日は忙しい。
「夫人、待たせてしまったわね」
「大丈夫ですわ。美味しいケーキを頂いていましたから」
銀細工にアクアマリンがメインのパリュールが並べられる。最近は夫人に任せて出来上がりを待つだけだから楽しいわ。
「基本的にはアクアマリンとダイアモンドでアクセントでサファイアが入っています。付け替え用はサファイアとアクアマリンですね。サファイアはお待ちのデザインとは異なりますから安心してくださいませ」
「爽やかね。とても素敵だわ」
「ディアデムは銀細工にアクアマリン、サファイア、ダイアモンドを混ぜて配置してあります。リュドヴィック様の物は銀細工にアクアマリンとサファイアを2石ずつ配置しました」
「とても綺麗ね」
「カットが少ない分品質にこだわりましたわ。それと追加でご注文頂いたネックレスです」
金細工に丸いブラウンダイアモンドと囲むようにサファイアが配置されたペンダントトップ。リュドの髪と瞳の色。
「ありがとう。この色のブラウンダイアモンドは見つけるのが大変だったでしょう?」
「ふふ、我儘を言わないリリアンヌ様のお願いですから。チェーンはご要望通り長い物をご用意致しました」
「ありがとう。ピンクとグリーンのパリュールも楽しみにしているわね」
くすみピンクとグリーンに合わせてパリュールもお願いしたわ。マダムに少し生地を貰いデザイン画を見せて、夫人に宝石からデザインまで丸投げしたの。出来上がってのお楽しみよ。
リュドと婚約してからはドレスや宝飾品を注文するのが楽しくなったわ。お揃いなのが影響しているのかしら?
マダムと夫人も私の好みを把握してくれているから、すぐ決まるのも楽しくなった理由かしら。
*****
あれから毎日ペンダントをつけているけれど、ついワンピースの上から触ってしまうのよ・・・。ティナに言われるまで気づかなかったから恥ずかしかったわ。
お茶会から帰宅するとリュドが出迎えてくれた。
「リュド、戻っていたのね」
「お帰り、リリ。衣装の調整もあったからね」
「残念。見たかったわ・・・」
「当日見られるよ。一緒にお茶でも如何ですか?」
「リュドに時間があるのならしたいわ」
そのまま庭のガゼボまでエスコートされる。既にクッションやお茶の準備がされていた。リュドの隣に寄り添って座る。
「最近はどうかしら?」
「また視察に回ってるよ。資料でしか知らなかった事も多くて、前に見て回った時より少し時間がかかるかな」
「ふふ、実際に見るのは大事よね」
「そうだね。ところで・・・ネックレスを2本?」
リュドの色の方はロングチェーンで、ドレスに隠れてチェーンが少ししか見えないのに、何故気づくのかしら?
「こっちは・・・お守りみたいな・・・」
「見せてもらっても?」
何となく胸元を押さえてしまう・・・だって恥ずかしいわ・・・。
「リリ?」
「わかったわ・・・」
何故かしら?最近気づいたのだけれど、リュドの言う事に逆らえないのよ・・・。
ペンダントトップをリュドに見せる。
「俺の色がお守り?」
「だって・・・いつも一緒に居るみたいでしょう?」
リュドに優しく抱き締められる。
「凄く嬉しい・・・ライトブラウンの石なんてあるんだな」
「夫人が探してくれたのよ」
「あぁ~早く結婚したい・・・」
「ふふ、一緒に居られるのは嬉しいわ・・・でも少し緊張しそうね」
「緊張?今はなかなか会えないから?」
「それもあるけれど・・・結婚したら一緒に眠るのよね?緊張するわ・・・寝相が悪くても許してね?」
確かに一緒に眠るが、子供では無いのだからそれだけでは無い・・・。リリアンヌからは房事が完全に抜けている気がする。意識させようとしているが・・・なかなか会えないせいか、しばらくすると忘れてしまい効果は芳しくない。
デビュタントの夜会では項や背中にも口付けたのに、今は触れても多少照れるだけ。
恋愛に対して奥手で慣れてないリリの為にスキンシップは、かなり大目に見てもらっている。
「今まで1人で寝ていたからね、慣れたらきっと大丈夫だよ」
もう少し意識させたいが・・・キスマークなんてつけたらサラさんに怒られそうだからなぁ・・・。地道に行くしかないと小さく溜息をつく。




