60話
年が明けてしまったわ。よく眠れなかった気がする・・・。
お父様とお母様に言われた事を考えていたけれど・・・リュドから拒否されない限り、やはり諦められないと思うわ。
候補から選ぶのなら・・・リュドに振られてからね。
こちらから婿に選んでおいて、他の人に思いを寄せ続けるなんてありえないもの・・・。すぐには無理かもしれないけれど・・・ちゃんと関係は築いていきたいわ。
でも、リュドは今まで通り専属として傍に居てくれるのかしら・・・。他の人に変わっても仕方がないけれど、やっぱり嫌なのよね・・・。
ベッドから出てカーテンを開け、バルコニーへと続く窓を開けると冬の冷たい空気が入ってくる。重たい頭が少しスッキリするわ・・・。
「私はいつからこんなにも諦めが悪くなったのかしら・・・」
*****
仕事をしているとお父様から執務室へ呼ばれた。何となく足取りが重くなってしまうわ。
執務室の扉をノックして中へと入る。昨日と同じように両親と向き合ってソファに座る。
「リリアンヌ、どうしたいか決まったかい?」
「はい。候補の方の前に・・・その・・・」
何だか恥ずかしくなってきたわ・・・。
「わかった。相手の名前を教えてくれるかい?」
「その・・・・・・リュドヴィック・ロアン子爵子息です・・・」
恥ずかしそうに頬を染め答える娘の姿に、夫妻は視線を合わせ微笑んで。
「クリス、リュドヴィックを呼んでくれ」
「畏まりました」
クリスに連れて来られたリュドは何故か執事服ではなく、休日の子息がする様な服装だった。
「アルトワ伯爵、お呼びでしょうか?」
「リリアンヌの隣に掛けなさい」
「失礼致します」
恥ずかしくてリュドの方が見れないわ・・・。
「リュドヴィック、リリアンヌは君を選んだよ」
「それは嬉しいですね」
今嬉しいと言ったの?でも何故お父様を「伯爵」と呼ぶのかしら?
「リリアンヌ、私達は夜会の日にリュドヴィックから専属を辞したいと言われてね。リリアンヌへの気持ちを聞いていたんだ。だから今回リリアンヌが選ばなければ、リュドヴィックは子爵家へ戻る事に決まっていたんだ」
「え?子爵家へ戻る・・・」
「リュドヴィックは昨日付けで我が家を退職している。リリアンヌが選ばなかった場合、間違いがあっては困るからそう決まったんだよ」
リュドが辞めたの?私は何も聞いていないわ・・・。でも、お父様の言う事もわかる・・・。
「アルトワ伯爵令嬢」
「はい」
リュドにそう呼ばれると変な感じね。顔を向けると手を優しく握られる。
「貴女に選んで頂けて嬉しかったです。選ばれなくても諦めるつもりはありませんでしたが・・・」
「リュド・・・ヴィック様・・・」
「今まで通り「リュド」と呼んで下さい。リリアンヌ様とお呼びしても?」
「ええ。もちろん・・・」
リュドに名前で呼ばれるのはくすぐったいわ・・・。今まで通りと言っても呼び捨ては駄目よね?使用人では無いのだから。
「リリアンヌ様が卒業するまでに教育が終わる様に頑張りますね」
「リュド様は・・・本当に私で良いのかしら・・・」
リュドが私を好きなんて、いまだに信じられない・・・。
「譲りたくないと言ったでしょう?リリアンヌ様が良いのです」
「とても嬉しいわ・・・」
リュドが婚約者になるなんて・・・諦めていたからか涙が滲んできてしまう。
「リュド様は子爵家へ帰ってしまうの?」
会えなくなるのは寂しいと思っているとお父様が。
「今日からリュドヴィックは客間に滞在して、私の元で教育を受けてもらうよ。本人がリリアンヌの卒業に間に合わせたいと言うから・・・少し大変だがね」
肩をすくめるお父様の隣でお母様が満足気に微笑んでいる。
「リリが辛い選択をしなくて本当に良かったわ」
「お母様達の言葉があったからです・・・でも、正直諦めていましたもの・・・」
「どうして諦めていたの?」
「だってリュド様に好かれるような事をしていないわ・・・迷惑は何度もかけたけれど。それに・・・」
「それに?」
「リュド様から見たら私なんて子供だもの・・・」
「あらあら、リュドはこれから大変ね」
何が大変なのかしらと思っていると「リリアンヌ様」と名前を呼ばれリュドの方を向く・・・何かしら笑顔に圧があるわ・・・。
「どうやら伝わっていない様ですね。これからは婚約者として一緒に過ごしながら、ゆっくり理解していきましょうね?」
「はい・・・」
有無言わせない感じがして、とにかく頷いたわ。
*****
私達の婚約は、私だけが知らない間に色々と話は詰められていた。
両親に聞いたら「絶対にリュドを選ぶと思っていたからよ」とお母様に言われて恥ずかしかったわ・・・そんなにわかりやすのかしら?
夜会の翌日、リュドがお休みだったのは子爵家へ話を通しに帰っていたからだと教えてもらったわ。お父様と子爵家当主のリュドのお兄様が正式に婚約を結んだのは、年が明けて4日目だった。
準備をしていたとはいえ早過ぎないかしら?
サロンでリュドとティータイムを一緒に過ごしているけれど、サラとメルが控えているのが何だか恥ずかしいわ・・・。
「リュド様のご家族は反対はされなかったのかしら?」
「されていませんよ。結婚はしないと思われていたので、リリアンヌ様との事はとても喜ばれましたね」
「それなら良いの。顔合わせが楽しみだわ」
リュドは翌日から領地に行ってしまったわ。2週間は会えないから寂しいわね・・・。
学園が始まる前日、ティナをお茶に招いてリュドとの婚約を報告したら。
「リリ!おめでとう!他の人の名前が出てきたら、どうしようかと思ったわ・・・」と泣かれてしまったわ。
サミュエルお兄様とアンドリュー様にも婚約の事を手紙で知らせたら、同じ様な事が書いてあって皆に心配をかけていたのだと気づいたわ。
サラとメルからは祝福と同時に「ハラハラ致しましたわ」と言われたわ。使用人達も私の最近の様子から、どうなるのかと見守っていてくれたみたいなの。
でも、私以外は私の気持ちを知っていたの?何故皆が知っていて私だけが・・・。
恋愛はやっぱり苦手よ・・・。
いつも読んで下さり、ありがとうございます(*^^*)
今日は12時に登場人物の更新が入りますので、3回更新となります。




