56話
翌日、目が覚めたらベッドの中だったわ。
メルに朝の支度をしてもらいながら昨日の事を聞いた。
「そんな事があったなんて起こしてくれた良かったのに・・・」
「雨宿りだったそうですから、お嬢様を起こすほどの事態では無かったのではないですか?」
明け方に帰宅したらしいが覚えていない。
「私って眠ると起きないのかしら・・・?」
徹夜だったリュドはお休みにしてあるわ。
朝食の後3人に手紙を書き、起きなかった事を詫びる。それほど迷惑はかけていないみたいだけれど・・・ビエールを飲んでいたとはいえ恥ずかしいわ。
「メル、これを出しておいて。明日からは試験だし今日は1日勉強するわ」
「畏まりました」
時々休憩を取りながら勉強をしていたが、ティータイムの頃には完全に集中力が切れてしまったわ。気分転換に庭に用意してもらう。
「サラ、1日休んでも良かったのよ?」
「お待ちしている間に仮眠は取っていましたから大丈夫ですよ」
サラは起きて待っていてくれたから、お休みにしたかったのに午前中しか休んでくれなかったの。働き過ぎじゃないかしら?
「私って眠ると起きないのかしら?」
「そうで御座いますね。夜中に起きる事は無かったかと・・・」
「お酒を飲んでいたとはいえ恥ずかしいわ・・・皆は起きていたのでしょう?」
「クリスティナ様は途中で目が覚められた様ですね」
「私だけが熟睡していたのね・・・」
「リュドさんが一緒でしたから大丈夫ですよ!」
それも・・・どうなのかしら?吊り橋効果とはいえ好意のある相手と一緒に居て熟睡よ?駄目じゃないかしら・・・。
湯浴みを終えた後、少し早いけれどベッドに入った。
「リュドに寝顔を見られていたのよね・・・」
以前にも見られているけれど恥ずかしいわね・・・寝る前にそんな事を考えてしまったから、なかなか寝付けなかったわ。
*****
4日間の試験が終わった。7月の試験より難しい印象だったけれど手応えはあったわ。魔法の実技では水の上位属性「氷」が認められた。
皆、入学した頃より魔法の精度や練度が上がり、私のように上位属性を取得する者もいるから、魔法の実技は試験なのに結構盛り上がったわ。
「リリ、カフェに寄らない?」
「良いわよ」
久しぶりにいつものカフェに寄ると新メニューに明らかにアフタヌーンティーセットな見た目の3段の物が・・・。飲食業界にも前世同郷が居るのかしら・・・。
「何これ美味しそう!リリ、一緒に食べない?」
「ええ。丁度2人用だしね」
ティナの様に新鮮に喜べないのが悲しいわ・・・。
「リリに相談があるの」
「何かしら?」
「年末の王宮の夜会、お兄様が誰かを誘ったのよ!」
「まぁ!どなたかしら?」
「当日紹介するからって教えてくれないの。リリ、調べられる?」
「出来るけれど・・・素直に待っても良いんじゃないかしら?紹介された後でも調査は出来るし」
「そうね。でも、どんな方かしら?」
「美女なのは間違いないわね」
「ふふ、そうね」
「ティナはアンドリュー様と婚約の挨拶に回るのよね?」
「ええ。少し大変だけれど頑張るわ。リリはどなたがエスコートなの?」
「リュドよ。リュドと夜会に行くと何故か酔うから不安だわ」
「2回共、酔っているものね・・・でも酔ったリリはとっても可愛いわ」
「私はティナみたいに強い方が良かったわ」
ティナは見た目に似合わず酒豪よ・・・羨ましいわ。
「夜会が不安だわ・・・」
湯浴みの後、ついサラにこぼしてしまう。
「何か御座いましたか?」
「だって・・・リュドがエスコートをしてくれると毎回酔っているのよ」
「ふふ、そうで御座いますね。きっと信頼しているから少し気が抜けるのでしょう」
「そうなのかしら?最後の夜会くらいちゃんと終わりまで居たいわ・・・」
リュドのエスコートも最後ね。年が明けたら決めようと思う・・・婚約者なんて想像出来ないけれど・・・。
*****
12月の4週目初日、1年生が終わったわ。
明日から2日は卒業生の為の準備よ。ここでマナーの授業で習ったテーブルのセッティングや会場の飾り付けを2年生主導で実践で披露するの。将来自分が主催したり、王宮や貴族家で働く場合の練習でもあるわ。
4日目は卒業パーティの夜会よ。在校生の出席は自由だけれど、社交でも仲の良かった方が卒業されるからティナとご挨拶の為に会場に来ているわ。
「もう社交でしか会えないなんて寂しいわね」
「そう思うと学園で毎日の様に顔を合わせるって貴重な時間なのね、リリ」
「そうね。あと2年楽しみましょうね」
ティナと帰る前にデザートを楽しんでいると何やら騒がしい。
近くに居たご令嬢に聞いてみると、卒業生が来年編入する妹を連れて居らしたのだけれど・・・パートナーの婚約者が居るのに妹が邪魔をして少々揉めているらしい。
乙女ゲーム的な要素かしら?今更必要ある?
「どんな方かしら?リリ、少し見てきましょうよ」
「巻き込まれたくないから遠くからよ?」
少し遠回りをして近づいて行くと、ブラウンの髪と瞳の普通のご令嬢が兄と思われる子息の腕に抱き着いていた。声も大きく何を揉めているかよく聞こえるわね・・・。
来年から編入で心細く、今日は少しでも知り合いを作ろうと卒業する兄に連れて来てもらったと。残念ですけれど在校生はあまり参加していないわ。愛人の娘で社交はしてきておらずマナーに疎いなど。ご本人様が婚約者様が意地悪だとペラペラ喋るもので・・・事情説明どうもありがとう。
「リリ、凄いわね・・・」
「あの方、よく編入試験に受かりましたわね。マナーが身に付いていないのなら1年生からの方が良くないかしら?」
「2年からは成績でクラスが決まる分、難しくなるし大丈夫かしら?」
典型的なのが来た感じね・・・。
帰ったらすぐ平凡ブラウンさんの素行調査ね。もしも・・・ティナや私の周りに絡んできたら・・・地獄までジェットコースターで送りますわよ。




